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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
26/300

No.26 集い

スーナがうちに来てから、早2週間が経った。

スーナはすっかりウチの家族の一員として、日々楽しそうに過ごしている。

最近は進んで家事の手伝いをするようになり、ばあちゃんはすごく助かってるみたいだ。

ただ、やっぱり片付けと掃除だけは苦手な様で、俺と夏美が分担してこなしている。


そんなある日、父さんの部屋で寛いでいると、何やら1階の方から、大きな話し声が聞こえてきた。

まぁ大方じいちゃんの知り合いだろうけど、ちょっと気になったので、俺は1階に降りて、居間の方に向かった。

すると、じいちゃん、健じい、ウチの高校の校長と、会ったことのない白髪の男性が楽しそうに酒を囲んでいた。


「なんだ蓮斗、居たのか!」


「そりゃいるだろうよ、俺んちなんだから」


例の如く、じいちゃんは見事に出来上がっていた。


「おー、蓮ちゃん、久しぶりだなぁ! 元気にしてたか?」


声をかけてくれたのは、じいちゃんの中学時代の後輩だった「朝倉健三」さんだ。通称、健じい。ちなみに通称とは言ったが、俺以外にそう呼ぶ人間はいない。

昔からよくうちに来てはよく遊んでもらったりした。


「健じい久しぶり。まぁまぁかな」


「ははは、まぁまぁか! まぁ悪いよかええわな!」


「健じいこそ元気かよ?」


「元気も元気だ! おかげで、酒が進んでしょうがねぇんだ!」


「いや、そういうのをアル中っていうんじゃねーか?」


「蓮ちゃん、そんな怖い事言うなよー、ビビるだろー」


言いながら、旨そうに酒を飲んでいる。

健じいとウチのじいさんが、俺の中の二大アル中だ。


「蓮斗くん、学校の調子はどうだい? 楽しくやれてるかい?」


次に話しかけてきたのはウチの高校の校長「小林武人」だ。

じいちゃんの中学時代の同級生だった人だ。

正直、自分の学校の生徒に「学校の調子はどうだい」という質問はどうなのよ、と思わなくもないが、普段あまり接する機会がないので、仕方ないのかもしれない。

むしろ校長先生とは、学校外である方が圧倒的に多い気がする。


「それをこうちょーが聞くのかよ…。まぁ楽しくやってるよ」


「そうかそうか。まぁ蓮人君は成績も良いみたいだし、心配は要らないね。勉強ができるのは父親である亮介君譲りなのかもね」


俺が今の高校に入学する前から知り合いだった事もあり、俺の中では「こうちょー」というあだ名のおじさんという印象が強い。ちなみに俺の父親の高校時代の恩師でもあり、何気にうちの家族とは縁が深い。


「そういえば、この間この家にホームステイで来ている子が、学校に見学しに来たらしいね」


「あー、まぁ見学しに来たっていうか、俺が忘れた弁当を届けに学校まで来てくれて、その流れでついでに見学してっただけッスけどね」


「長井先生も言ってたけど、随分と可愛らしい子らしいじゃないか」


「そんな事まで伝わってるんだ…」


「後、蓮斗くんと非常に仲睦まじくしてたとも言ってたよ」


「いや、あの人どんだけペラペラ喋ってんだよ!」


「良いじゃないか、仲が良い事に越した事はない」


「はぁ…そりゃあどうも」


二人に挨拶がてら雑談を交わした後、じいちゃんがおもむろにもう一人の男性の紹介を始めた。


「で、一人静かに微笑みやがりながら飲んでんのが、ミックだ! 確か、蓮斗は初めて会うんだったな」


「あ、うん、初めて会うかな…」


「ちょっと李家さん、せめて自己紹介位ちゃんとさせてくださいよ。いきなり李家さんしか呼ばないあだ名で紹介されても…」


「いいじゃねぇかよ、ミックで! お前の名字難しいし言いにくいんだよ!」


「えっと…じいちゃんと、その…ミックさんはどういう繋がりなの?」


「20年以上前かな? 私が住んでいる町に李家さんが大工としてやって来てね。ウチの息子を大工として鍛えてもらったりしてから、私とも面識が出来て、その内に一緒に飲むことになったんだ。で、李家さんが川崎の方に帰った後も、年に何回かこうやって会って飲んでるんだ」


「へー、じいちゃんがねぇ…」


「李家さんには、ウチの息子が大変世話になったからね」


「でよ、ミックの奴はこう見えて歴史学者なんだよ」


「歴史学者?」


「詳しい事は分からねぇけど、なんか色々調べてんだとよ!」


「分からねぇって…そこはちゃんと理解しとけよ」


「ははは、蓮斗君は中々しっかりしてるんだね。そういう所は亮介君に似たのかな?」


「おいミック、おめぇそりゃどういう意味だ? 俺がまるでしっかりしてねぇみたいに聞こえるじゃねぇか」


「いやいや、別にそういう意味で言った訳じゃ…」


「飲みが足んねぇな。よーし、次の日本酒も空けんぞ!」


「空けるって、まだ前の酒が残ってるじゃないですか…」


「細けぇ事ぁどうでもいいんだよ! おら、おめぇらも飲むぞ!」


これ以上、ここにいると迷惑事に巻き込まれそうなので、適当に挨拶を済ませ、部屋を後にしようとした。

すると、後ろからじいちゃんが声をかけてきた。


「おぉい、蓮斗ぉ! 明日はスーナちゃんと出掛けんだろ? ちゃんとリードしてやれよぉ!」


「なんでじいちゃんがそれを知ってんだよ?」


「なんでって、三和子の奴が言ってたからだよ」


…はぁ、なんでこうばあちゃんは口が軽いんだろうか…。

いや、そもそもなんでばあちゃんも知って…まぁスーナが喋ったんだろうな。


「まぁそれなりに頑張るよ」


「それなりじゃダメだろーが! しっかり頑張ってこい!」


「なんだなんだ、蓮ちゃん、例のほーむすていの子とデートかよ! やるなぁ!」


酔っ払い共に絡まれる前に俺はさっさと2階に上がった。

そして、スーナがいる部屋のドアをノックした。


「スーナ、いる?」


「うん、居るよ~。どうぞ~」


スーナはいそいそと明日の準備をしている。


「明日の準備してんのか?」


「うん、『備えあれば憂いなし』だもんね!」


「なんだ、よくそんな諺知ってんな」


「うん、レン君のおばあちゃんから教えてもらった言葉だよ♪」


…ばあちゃん、スーナに色々吹き込んでんな…。余計な事言ってなきゃいいけど。


「まぁ明日も早いし、程々にね」


「うん、分かった。明日楽しみだね!」


「そうだな。じゃあまた明日な。おやすみ」


「うん、おやすみ♪」


そう言って、俺は部屋を出て、父さんの部屋に戻った。


そう、明日はスーナと初めての遠出。

行き先は江ノ島・鎌倉。


…それなりに頑張ろう。

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