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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
8章 BUDDY
251/300

No.251 Side 源河翼 〜白昼堂々〜

「昨日の襲撃犯の一味でしょうか。複数人の気配が感じられます」


「『一味』…敵が複数人いるという所まで分かっていたとは、流石だ」


ここ数日アビさんと一緒に行動を共にしていく内に感化されたせいか、僕自身の察知能力も上がっていた。


「ここは人の往来が激しい。場所を移そう」


そう言って、アビさんは段々人気のない方へ歩いて行った。

昨日の襲撃犯と思われる気配は変わらず感じられる。

すると当然アビさんの空気が変わった。


「来るぞ!」


そう言ってアビさんは僕の体ごと地面に伏せた。

するとその直後に発砲音が鳴り響いた。


「こんな白昼堂々……!」


「いや、私が敢えて攻撃を仕向けさせるように誘った」


「それなら事前に言ってくださいよ」


「すまんな」


そう言っている間にも銃撃は続く。

アビさんは刀と鞘を使って、銃弾を尽く叩き落していた。

僕も水の魔石を使い、障壁を張って銃弾から身を守っていた。


「相変わらず身を隠してこそこそ攻撃するのが好きな様だ」


「あぶり出します」


僕は風の魔石を取り出し、辺り一帯に風を巻き起こした。

それに合わせる様にアビさんは目を閉じて耳を澄ませ、集中力を高めていた。


「そこか」


アビさんは風の僅かな音の変化を聞き分けると、即座に敵の位置を把握した。

物凄いスピードで走って行くと、建物の影に隠れながらこちらを狙っている連中を発見した。


「サヤザクラ一刀流……慈悲櫻(じひざくら)!!!」


バキャアァ!!!


鞘から抜かないまま振り抜いた一閃は、連中の骨をいともたやすく砕いた。

アビさんの一撃を食らい、連中は次々とその場に蹲ってしまった。


「ちぇああああああ!!!」


アビさんの真上から別の男が、剣を振り下ろしながら飛び降りてきた。

それを瞬間的に察知したアビさんはひらりと体の重心を軽く後ろにずらして避けた。

渾身の一撃を避けられた男が動揺している一瞬を付いて、アビさんは思い切り、右足をかちあげて男の顎にクリーンヒットさせた。

重い一撃を食らった男は脳震盪を起こしたのか、その場で倒れてしまった。


「ツバサ殿!!」


アビさんの声で後ろを振り向くと、剣を振りかぶった大男がおそってくるのが見えた。

しかし、約1か月近くの研修の中で組手をした時のグリームさんの方が何十倍も動きが早かった。

僕は容易く大男の剣を避けると、相手の腹部に手を当ててイメージを集中させた。


パアァァン!!!


超至近距離から放った水弾をもろに食らった大男は、吐血をしながらその場に倒れ込んだ。

それなりのダメージは負っただろうが、命に別状はないだろう。


「これで全員でしょうか?」


「いや…一人逃げた様だ」


今回、僕達が捕らえたのは計4人。

昨日みたく逃げられない様に持参した縄できつく縛った。


「よし…っと、これで逃げられないだろう」


アビさんはそう言うと、その場でしゃがんで捕まった4人に問いかけた。


「単刀直入に言う、貴様ら何者だ? 例の連続殺人犯と何か関係があるのか? 答えろ」


「ふん…ここで馬鹿正直にベラベラと話すと思うか?」


一人が吐き捨てる様に笑いながら言った。

するとアビさんは男の腹部に強烈な右ストレートを放った。


「がはっ……!!!」


男は血を吐きながら蹲ってしまった。


「私は『答えろ』と言ったんだ。貴様らの意見主張などどうでも良い」


そう言った時のアビさんの表情はとてつもなく冷徹だった。


「…っが……何度聞かれても……同じだ……てめぇら…なんざに……うぐぅ…!!?」


尚も口を割らない男の腹部を刀の鞘で思い切り突いた。

再び男は大量の吐血をすると、今度は白目をむいたまま、その場で気絶してしまった。

アビさんはそれに構わず、その右隣にいる男の前に立ち、その場でしゃがんだ。


「単刀直入に言う、貴様ら何者だ? 例の連続殺人犯と何か関係があるのか? 答えろ」


アビさんは先程と全く同じ質問を男に投げかけた。


「な…何度聞かれても同じだ…俺達は何も答えっ!!!」


拒絶の言葉を言い終わる前にアビさんは全力で、男の急所を蹴り上げた。

思わず自分も想像してしまって顔を歪めてしまった。


「かっ……!!! っは……!!! あぁぁぁ……!!!」


「何度も同じ事を言わせるな。私は答えろと言ったんだ。もう一度食らいたくなかったら言え……」


「い……言い……言います………言うから………」


「だったら早く言え。何を呻き散らかしている」


「すみませんアビさん、股間にあんなのぶち込んどいて『呻き散らかしている』は流石に。普通だったら気絶してますよ。喋れる様になるまで待ちましょう」


「ふむ、そうか…そこまで全力で蹴り上げたつもりは無いんだがな…」


アビさんは痛みで悶える男を不思議そうに眺めていた。

まぁ女性であるアビさんにこの痛みを分かれというのは少し無理な話だったかもしれないが…。

やがて痛みが引いて来たのか、少しずつ落ち着きを取り戻した。


「どうだ? 喋れる様になったか?」


「あ……あぁ…」


「よし…では貴様らの目的を言え……」


「……お…俺達はただ、指示に従った……だけだ…」


「指示…?」


「あぁ……だから……何の理由で……お前らを狙うのかは知らねぇ……」


理由も分からないままターゲットを殺そうとしたのか。

まぁ首謀者が教える義理は無いし、教えた結果余計な事を詮索されるよりかはマシとも言えるか。


「成程…事情は分かった。どうりで貴様らの攻撃が軽い訳だ。で、その首謀者は誰だ?」


「い……言えねぇ」


「よし、じゃあもう百発股間に蹴りを入れてやろうか?」


「すみません、言います。だからもう勘弁してください」


秒の速さで男は観念した。

よっぽど先程のアビさんの蹴りが効いたのだろう。


「俺達に指示したのは…………です」


「…なに?」


「…この町の町長です」


全くの想定外の名前が出来てきて、僕は一瞬、言葉を理解するのに時間を要した。


「……だと?」


アビさんにとっても衝撃だったのか、驚きの表情をしていた。

するとアビさんは突然男の胸ぐらを掴んでこう言った。


「蝶々だと!? 貴様ら虫にでも命令されたというのか!!? 私を愚弄するのにも大概にしろ!!!」


「いやアビさん、それ全然違います。町長って言ったんだと思います」


ただただ馬鹿な聞き間違いをしていただけだった。

今日は一日中眠かったです。

くたばれ睡魔

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