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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
8章 BUDDY
247/300

No.247 Side 源河翼 〜調査〜

「調査……調査か……」


僕はアビさんと別れた後、一人で町中をとぼとぼと歩いていた。

元いた世界では働きもせずに部屋に引きこもってゲームをして過ごし、こっちの世界でも轟狐一味のアジトの奥底で事実上の幽閉を強いられていた僕にとって、知らない人達に話しかけるという事は、遥か上空までそびえ立つ壁に等しかった。


「やばい、詰んだ…」


一旦聞き込みは後回しにして、町の中を注意深く見て回った。

町中は今の所特に変わった様子は無く、普通に人々の往来が絶え間なくある状態だった。

まぁ犯行自体は深夜帯という話だし、昼間はみんな出歩いていてもおかしくは無いか。


町の中をざっと見て回ったが、やはり特におかしい所は無かった。

強いて言えば、どことなく質素な家が多い印象がある位か。

さて、これからどうしようと考えながら歩いている時、突然背中に何かがぶつかって来た。


「いって…なんだ?」


後ろを振り返ると、薄汚れた服を着た小さな女の子が立っていた。


「ご、ごめんなさいぶつかっちゃって!」


「あ、うん…別に大丈夫。君は怪我無い?」


「は、はい、大丈夫です! それじゃあ!」


そう言って女の子は走り去ってしまった。

不思議に思っていた次の瞬間、僕ははっとして右ポケットに手を入れてみると、アビさんから貰った自分の位置を知らせる道具が無くなっていた。


「ひったくりか!」


そう気づいた時には女の子は見当たらなかった。

僕は落ち着いて風の魔石を取り出し、集中した。

こんな事で魔石を使うのもどうかと思うけど、致し方がない。


両足に魔石の力を乗せると、一気に30メートル程上空に飛び上がった。

そこから眼下にある町を見渡していると、ノロノロと走っている女の子を見つけた。

そして、そこから爆風を放ちながら一気に女の子の所目掛けて急接近した。


僕が伴っている爆風に気付いた女の子は、唖然とした表情でこちらを見ていた。

まぁ人間が空から全速力で降ってくるのだから、驚くのは当然か。

地面にぶつかる直前に地面に向かって風を放ち衝撃を封殺した。


「また会ったね」


「お…お兄ちゃん何者なの…なんで空から降って来たの?」


「そんな事はどうでもいいよ。さぁ僕から盗んだ物を返して。あれ無くなると困るんだ」


「…? な、何の事?」


「とぼけても駄目だよ。僕のポケットに入っていた道具無くなったんだ。早くそれを……」


ここまで言いかけた時、僕ははっとしながら、もう片方のポケットに手を突っ込んだ。

すると、盗まれたと思っていた道具が普通に入っていた。

僕は無表情で女の子の顔を見ると、その場で全力の土下座ポーズを繰り出した。


「あのー…普通にポケットに入ってました。盗人呼ばわりして大変申し訳ございませんでした」


26歳の男は、10歳にも届かぬであろう少女に渾身の土下座姿を見せていた。

なんと情けない光景だろうか…。


「あ、あの、よく分からないけど、間違いは誰にでもあるし、そんなに謝らなくても良いよ。私もぶつかっておいて、走って逃げちゃったのも悪かったし…」


冤罪を掛けてしまった挙句、女の子にフォローまでされてしまう始末。

絶対に彼ら…特に駿君には見せられない光景だ。


「とにかく…私、お兄ちゃんからは何も盗ってないから安心してね」


「そ…そっか…本当にごめん…」


するとこちらに向かって誰かが走ってくるのが見えた。

女の子は慌てて僕の後ろに隠れた。

こちらに走ってくるのは、旅人の様な風体をしたスキンヘッドの大男だった。


「待てこらそこの餓鬼ぃぃぃぃ!!!」


「もしかして…さっき走ってたのって、あいつに追われていたから?」


女の子は必死に頭を縦に振っていた。

恐らく人攫いの類か、身代金目当ての犯行か…こんな白昼堂々よくやるよ。


「おいそこの坊主!! 後ろに隠れてるクソガキをこっちに差し出しやがれ!!」


「…こんな小さな女の子相手にみっともない…自分も言えた口じゃないけど…」


「ごちゃごちゃ言ってねぇで差し出せ!! 大体その餓鬼は……!!」


「うざい」


僕は水の魔石を取り出し、イメージを集中させると男の頭上に水の球を発生させた。


「な…なんじゃこりゃあ!!?」


「落下」


そのまま水の玉を落とし、そのまま男に叩きつけた。


「ぶへぇっ!!」


水浸しになった男はそのまま地面に突っ伏して倒れた。

手加減はしているはずだから、大した怪我にはなっていないはずだけど…。


「とりあえずここから離れようか」


「あ、うん!」


女の子の手を取ると、そのままその場を離れて、建物と建物の間にある狭い通路に駆け込んだ。


「ここまで来れば大丈夫か…」


「あの…お兄ちゃんありがとう」


「あ…うん。そういえばあの男からは何で追われていたの?」


「えっとね…その……あの人からお金盗んだの」


「……」


僕は自分の聞いた言葉が信じられず、もう一度聞き返した。


「あの…だからね…私…あの人からお金盗んだの…」


「……えっ本当?」


「…うん」


子供とはいえ、僕は犯罪者の逃走を援助し、あろう事かお金を盗まれた被害者の男を思い切り叩きのめしてしまったのだ。


「いやー……これやっちゃったかもしれない。POSTって組織に身を置きながら犯罪の援助って……」


「お兄ちゃん……私の事…捕まえるの?」


いや、そんな風に言うのものすごく卑怯じゃない?

かと言って、このまま特にお咎めも無く見逃すのは流石に不味すぎるし…。


「分かった…君の事は一旦捕まえない。その代わり、盗んだお金はあの人にちゃんと返すんだ。僕がPOSTという立場である以上、これが譲歩出来る精一杯だ」


「…はい」


「…ところで君はなんでお金を盗んだりなんかしたんだ? 君のお父さんやお母さんが知ったら悲しむよ?」


「…いない…パパもママも……もういない…」


「…そっか…ごめん」


不用意に親の事を聞いたのは、僕の配慮不足だった。

大方親のいないこの子は、生き延びる為にこうやってお金を盗んで飢えをしのいで来たのだろう。


「じゃあとりあえずさっきの人が倒れてる所に言って、お金を返して謝ろう。僕も一緒に行くから」


「うん…」


僕も怒られるのは滅茶苦茶嫌いだし、正直すごい怖いけど、流石にこんな小さな女の子一人で行かせる訳にもいかず、ついていく事にした。

しかし、いざ現場に着くと、先程まで倒れていたはずの男がいなくなっていた。


「あれ…居ない。気が付いてどこかに行っちゃったのかな?」


手加減したとはいえ、そんなにすぐに動ける様なやわな攻撃も無かったのだが、相手の鍛え方がすごかったのだろうか。

仕方ないので、この場を離れた。


「うーん…もしかしたら諦めてどっかに行っちゃったのかもしれないな」


「どうしようこのお金…」


「まぁ…お金盗られたままこの町を出ていくとも思えないから、その内出くわすだろう。その時はちゃんとお金を返した上で謝るんだよ?」


「うん、わかった! 必ず返す!」


「それと…」


僕は小さな女の子の手にそっとお金を渡した。


「これ…お金?」


「内緒だからね。それだけあれば少しの間は盗みなんてしなくてもいいだろ?」


「ありがとうお兄ちゃん、大事に使うね!」


そう言って女の子は走って去って行こうとしたが、女の子は辺りをキョロキョロと警戒しながらこちらに戻って来た。


『お兄ちゃん…この町は危ないから……出来るだけ早く出て行ってね』


「え、あ、うん」


そう言って、女の子は今度こそ走り去っていった。

この町は危ないから……それは例の連続殺人事件の事を言っているのだろうか。

僕はそんな事を考えながら走りゆく少女の後ろ姿を見届けた。

ONE PIECE、毎週本誌の盛り上がりがすごいですね。

最後までルフィ達について行きます。

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