No.246 Side 源河翼 〜ラグ〜
僕達を乗せたジテンはラグの町の入り口に停車した。
一見すると、何の変哲も無さそうな町…の様だ。
強いて言えば、町の面積的にはやや小さい目で、イクタ村の倍程度と言った所か。
なんにせよ、連続殺人事件が起きる様な町には思えなかった。
「ふむ…ようやく着いたな。まずはこの町の協力店のホテルにチェックインして、荷物を預けた後、町長殿に会いに行くか」
「すみません、よく考えたら、いきなり町長に会いに行くって大丈夫なんですか? 事前にアポとかっていうのは…」
「その点は心配ない。既にセラ殿がこの町の町長殿に話をつけてあるとの事だ」
「あ、流石セラさんですね」
僕達はまずは町の入り口の近くにあったホテルにチェックインすると、部屋に荷物を預けた。
前の町のホテルに比べると外観と内装共に古く、内部もやや古びていた。
ちなみに例によって、部屋は2人で一部屋だったが、これに関してはもはやツッコむ事をやめた。
ホテルを出ると、ホテルのカウンターで確認した町長宅までの道程をひたすら歩いて行った。
と言っても、町自体がそこまでの広さでは無かったので、ホテルから歩いて20分程でそれらしき家の玄関に到着した。
「うむ…着いたな! ここが町長殿の家か!」
正直、本当に町長の住んでいる家なのかと思う程、質素な家だった。
なんだったら隣に建つ家の方が大きい位だった。
思い返せはここまで来る途中に見た家々も、殆どが小さく質素な建物だった気がする。
金銭的にこの町は貧しいのだろうか。
「たのもー!!! 町長殿はいらっしゃるか!! 私達はPOST本部から参った者である!!! ご在宅であれば、是非ともご対応願いたい!!!」
まさかフィクション以外で「たのもー」なんて台詞を聞く事になるとは思わなかった。
すると、ゆっくりと扉が開き、中から中年の女性が出てきた。
「あのぉ…何か御用で…?」
「おっと貴殿が町長殿でありますか!! 私達はPOST本部から参った者で、私の名はアビ・カミジキ!! そして横に居るのは…ツバサであります!!」
とうとうアビさんは僕の苗字を言う事を諦めた。
「現在この町の平和を脅かしている連続殺人事件について、詳しく話を伺いたく参った次第であります。つきましては…」
「あのぉ…正直何を言っているのかはイマイチ要領を得ないですが…町長さんのお宅はこの隣です」
そう言って、女性はぱたりと扉を閉めてしまった。
言われた方の家に向かうと、立て札に「町長宅」と思い切り書いてあった。
いや、立て札に「町長宅」ってなんだよって感じではあるが…。
僕とアビさんが顔を見合わせると、しばらく沈黙するとアビさんは清々しい表情でこう言った。
「さて…ようやく町長殿の家に到着したな! ではいざ!」
この人無かった事にしようとしてる!
つい今しがた町長の家を間違えたくだりを丸々無かった事にしようとしてる!
「たのもー!!! 町長殿はいらっしゃるか!! 私達は以下略~」
すると先程の様にゆっくりと扉が開くと、今度は壮年の男性が中から出来てた。
「…家…間違えましたね」
男性はぽつりと鋭い一言を呟くと、アビさんは暫く無言だった。
「あの…どうしました?」
ずっと無言のアビさんに困惑した男性が尋ねると、アビさんはようやく返事をした。
「この度は、町長殿にお尋ねしたい事があって参上致しました。セラ殿から話はいっているとは思いますが、何卒お話をお聞かせください!」
「あ…はい」
やっぱりこの人無かった事にしようとしてる!
町長さんの質問ガン無視して、頑なに無かった事にしようとしてるよ!
なんだかんだあったけど、僕達は町長さんに今回の事件の詳しい話を聞くべく、家の中へ案内して貰った。
中はそこまで広くは無いものの、部屋は綺麗で几帳面に整理整頓がなされていた。
「ではそこにおかけください」
そう言われて、僕とアビさんはソファーの上に腰掛けた。
「話は既に伺っております。この度はわざわざこの様な辺境の町にお越しくださいましてありがとうございます」
「いえいえ、任務とあれば赴いて解決していくのが我々の仕事でありますので、お気になさらぬよう」
「ありがとうございます。あと申し遅れました。私はこの町の町長を務めております、『ベイク・フォールド』と申します。どうぞ宜しくお願い致します」
「ありがとうございます。私はアビ・カミジキ、横に居るのはツバサと申します。早速ではありますが、此度この町で発生しているという連続殺人事件の発端、そして現状についてお聞かせ願えますか?」
「はい…始まりは1ヶ月程前でしょうか…。この町の商人が何者かに殺されました。それはそれは無残にも斬りつけられて、辺りは血の海とかしておりました。その光景は今でも鮮明に覚えております。そして彼が所持していた売上金は全て何者かに持ち去られていたそうです」
「その商人殿は何か性格が悪かったり、誰かに恨まれていたりしていた様子はありましたか?」
「いえいえ…彼は仕事一筋で、且つ非常にフランクで接しやすい人物でした。よく他の土地から商品を仕入れてきては、この町で売ってくれていました。感謝こそすれども、とてもじゃないが恨まれる様な男ではありませんでした」
「ふむ…怨恨の線は薄そうか……金銭を持ち逃げされている所を見ると、金銭目的の強盗殺人の線が強そうか。それ以降の被害者についてはどうですか?」
「えぇ…それから老若男女問わず、大体4~5日毎に1人のペースで被害者が出ております。斬殺、銃殺、撲殺……殺され方には一貫性がありません。殺害現場にもこれといった共通点はありませんが、唯一時間帯だけは全て深夜帯という共通点があります。町の人間も、次は自分の番ではないかと怯える日々を送っております。かくゆう私も例外ではありません…」
そう言った町長は青ざめた表情で震えている様にも見えた。
まるで何かに怯えている様な様子だったが、まぁ連続殺人事件が現在進行形で
「成程…それ以外で何か気になった事はありますか?」
「いえ…我々に分かっているのはそれ位で…」
「委細承知致した。恐怖を掘り起こす様な事を聞いて申し訳ない。兎に角、我々はこれから調査の方に入ります。何か新たに分かった事がありましたら、連絡を頼み申します」
「はぁ…」
こうして僕達は町長の家を出てきた。
結局町長からは特に真新しい情報は得られなかった。
「うむ…犯人に繋がりそうな手がかりは聞けなかったな。やはり地道に調査を重ねていくしか無いか…しかし…」
「…?」
「いや、まさかな……」
アビさんは何やら一人でブツブツと呟いていた。
「アビさん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない! では手筈通り、二手に別れて調査を開始するか」
僕はアビさんの様子に若干引っ掛かりながらも、アビさんの指示通り、町内の調査を開始した。
すみません、投稿するの忘れてました




