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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
8章 BUDDY
245/300

No.245 Side 源河翼 〜宿泊〜

「さぁ入るぞ」


そう言ってアビさんは何事も無かったかの様に部屋の扉を開き、荷物を床に置いた。

ベッドは流石に分かれていたが、それでも状況的に普通有り得ない事になっているのには変わらなかった。


「どうしたんだ? ツバサ殿もずっと立ってないで、ベッドに腰掛けたらどうだ?」


アビさんは特に気にとめる事も無く、平然とした顔で荷ほどきをしていた。

アビさんのカバンからはよく分からないごみの様な物が沢山出てきた。


「あの…アビさん…僕とアビさんが同室っていうのは流石に不味いんじゃ…」


「ん…? 何がだ? 別に同じPOSTの人間同士、特におかしな事も無かろう。それに研修時には3人で同室だったと聞いたぞ。何をそんなに気に留める事がある?」


「いや、人と同室なのは別に百歩譲って良いんですけど…流石に他人同士の男女が同じ部屋っていうのは不味いんじゃ…」


「あぁ、なんだそんな事を気にしていたのか。私は剣術を持ってPOSTで生きていくと決めた瞬間に、女など捨てた身。今更そんな事は気にしないから大丈夫だ。今更裸を見られ様とも何とも思わん」


「いや、アビさんが大丈夫でも僕が気にするので。それに裸を見せるのはマジで目のやり場に困るので止めてください」


「ふむ……ではツバサ殿は私の事を女として見ているという事か?」


「いや、正直それはあんま無いです」


「無いのかい! それはそれで気付くぞ、君!」


「無いですけど…やっぱりどうしても気は使います」


「ふぅむ…そういうものか。女を捨ててこの道に打ち込んでから久しいからなぁ。そういう感覚はとうに忘れてしまったよ」


アビさんはそういった感情を捨ててしまう程に剣の道に打ち込んできたという事なんだろう。

でも確かにそれ程の覚悟で打ち込んできた人に対して男女だからなんだという理由で変に気を使うのはあまり良くないのかもしれないな。


「だがまぁ…風呂上りに上裸にタオルを掛けた状態で本部内を歩いていると、よくメグ殿に注意されるから、私も気を付けなければならない部分もあるやもしれんな」


「いや、それは男とか女とか関係なく、マジで止めた方が良いです。一歩間違えれば変態です」


「変……態……そうか…では極力気を付けるとしよう……」


なんで今更この人こんなにショック受けてるんだ?


「そういえばアビさん…鞄の中、えらいゴミ…荷物が入ってますけど、それは……?」


「あ、こ、これはダメ!! 見ないでくれ、恥ずかしい!!」


いや、それは全力で恥ずかしがるんかい。

なんというか、若干…というかだいぶ変わった人なのかもしれない。


「大体、荷物ってPOST本部のスタッフの人が全部用意してくれるから、そんなに荷物が大量になる事って無いんじゃ…」


「それは分かってるんだが…なんというか本当に用意してくれた荷物だけで十分なのかが不安でな…。別に今までそれで困った事はないんだが、どうしても心配でな…」


「いや、めっちゃお菓子とか入ってるんですけど。あとなんか猫のぬいぐるみみたいなのも入ってませんか?」


「違う、この子はミミちゃんだ!! 断じてぬいぐるみでは無い!! 断じてだぞ!! さぁミミちゃーん、ツバサ殿に初めてのご挨拶をしましょうねぇー♪」


あ、この人変わった人っていうか、だいぶヤバい人かもしれない。

その後、お互いにシャワーを済ませると、明日の段取りについての打合せを行った。


「まずはラグに着いたら、町長殿に話を伺って、事の経緯と現状の把握を行う。その後は手分けして町の様子や犯行現場になりゆる場所を調査するのがメインといった所だ」


「分かりました。ちなみに犯人と対峙した場合はどうしますか? 戦いますか?」


「いや、仮に対峙した場合はこれを使って互いの位置を知らせて、駆け付けよう」


そう言ってアビさんは僕に何やら笛の様な物を渡してきた。


「これは…?」


「自分のいる場所を他の者に知らせる道具だ。笛の要領で息を吹き込むと、非常に大きな音と共に上空目掛けて狼煙を上げる仕組みだ」


「へぇ…そりゃまた原始的な…」


「とにかく犯人と対峙したからと言って、決して一人で深追いはしない事。いいな?」


「…分かりました」


「よし、では明日に備えて今日は早めに寝るとするか」


「いやだから、何ナチュラルに上裸になりながら寝巻に着替えてんですか」


「あぁ、すまない先程注意されたばかりだったな。つい癖でやってしまった。でも思ったほど冷静なのだな」


「あ、いやすみません、アビさんの上裸見ても思った程動揺しませんでした」


「おい貴様、それは一体どういう意味だ。犯人の前にまずは貴様を叩き斬ってやろうか」


「本当にすみませんでした」


「それは一体何に謝っているんだ! 興奮しなかった事に対してか!? 興奮しなかった事に対してなのか!!?」


幸いアビさんに斬られる事は無く、なんとかその日は無事に眠りにつく事が出来た。

翌日、ホテルで朝食を済ませると、僕達は町中で各々最低限の買い物をしたのち、ジテンに乗り込み、ラグを目指して出発した。


「もぐもぐ…いよいよ今日は…もぐもぐ…メイン任務である連続殺人事件の…もぐもぐ…解決に入るな。ツバサ殿も…もぐもぐ……心して…もぐもぐ…あ、これ美味っ……かかる様に」


「すみません、全力でむしゃむしゃ食べながら喋るの止めて貰って良いですか?」


「ごくん…すまぬ、どうしても小腹が空いてしまってな。ついつい食べ物を買ってしまった」


そう言いながらアビさんは袋に入った次の食べ物に手を伸ばそうとしていた。

この人まだ食べるんかい。


「ついさっきホテルで朝食食べたばかりでしょ」


「いやはや…正直、ホテルの朝食の量では足りなくてな。いや、味は非常に美味だったぞ! ただ量が…」


「別に僕はホテルの従業員とかじゃないんで、よく分からんフォローされても困ります」


「そ、そうか、なら良かった。そういえばツバサ殿は朝食を少し残していた様だが、食欲が無いのか?」


「僕は朝いつも、あんまりお腹空かないから、あれが通常です」


「そうなのか…? 朝こそしっかり食べないと、良い一日のスタートが切れないぞ」


「そこは個人差です。あんまり朝食べ過ぎて動けなくても困るので」


「うむ…それもそうか」


15メンバーには、奇人変人しかいないのだろうか…。

一見、メグさんルリリさんは比較的まともそうだが、何か裏の顔とかあったりするのだろうか。

いや、それは流石に失礼か。


そうこうしているうちに、遠くの方に町らしきものが見えてきた。


「アビさん、あれがそうですか?」


「あぁ、あれが私の今回の任務地となる町、『ラグ』だ!」

天気のジェットコースタープレイっぷりがすごいですね

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