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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
8章 BUDDY
244/300

No.244 Side 源河翼 〜1つ目の任務〜

僕達は途中、2度の襲撃に遭いながらもなんとか外交官達を守り切り、どうにかこうにか目的地のドレシ王国に無事、到着する事が出来た。

アビさんと僕がまず最初にジテンから出ると、後からランジ王国の外交官を含めた3人が降りてくるのを見守った。


「いやはや…あなた達には大変お世話になった。それにしてもアビさんの強さは相当な物だな。ツバサさんも私達に危害が及ばない様に守って下さったので、敵が襲ってきても安心していられたよ」


「いえいえ、勿体なきお言葉…」


「では帰りの護送も頼むよ」


そう言ってランジ王国の外交官達は、入口で出迎えてくれていたドレシ王国の護衛隊に連れられて、中に入っていった。

それを見届けると僕達はジテンに乗り込み、2つ目の任務に向けて出発した。


「まずは一つ目の任務が完了しましたね」


僕は慣れない空間から解放されて、ホッと一息つきながら言った。


「護送任務は彼らをドレシ王国からランジ王国に連れ帰るのが残っているからな。まだ任務の達成度としては半分かな」


「あ…そうか」


僕は彼らを連れ帰る事をすっかり失念していた。


「ははは、ツバサ殿はどうやら知らない人間と一緒に行動したりという事が苦手な様だな」


「まぁ…あんまり得意じゃないですね」


「そうか…じゃあこうして私と一緒にいる事も実は苦手だったりするのかな?」


「あ…いえ、アビさんはPOSTの人間ですし別です。最初こそ少し緊張しましたけど…」


「はははは、まぁそういう事にしておこう!」


アビさんは刀の手入れをしながら、豪快に笑った。


「あの…ドレシ王国に着いたあと、こうして僕達彼らから離れちゃいましたけど、大丈夫でしょうか?」


「暗殺の可能性が無いのかどうかという事か? 確かにゼロという事は無いだろうが、まぁ限りなくゼロに近いだろう」


「というと?」


「ドレシ王国はランジ王国と唯一交流を行っている国で、その歴史は非常に長い。加えてドレシ王国は資源や食料に乏しい国でな。ランジ王国からの輸入でなんとか国民の生活が成り立っている国だ。輸入金額も法外なものを要求されている訳でもなく、ドレシ王国がランジ王国との信頼関係を崩す様な事をするとは考えにくい。何のメリットも無いからな」


「第三者の国の攻撃という可能性は?」


「ふむ…ドレシ王国で第三者の国の者による暗殺か…。確かに可能性としてはあるだろうな。候補に挙がるとすれば、ドレシ王国と敵対する国辺りか。仮にドレシ王国で暗殺されたとあれば、ドレシ王国の者が殺したと考えるのが普通だからな。いくら違うと主張した所で、それを証明するのは容易な事では無い。証明できたとしても、国間の信頼関係が大きく揺らぐのは避けられないだろう」


「であれば外交官達がランジ王国で何日も滞在する事は少し危険なのでは」


「大丈夫だ。外交官達についてはドレシ王国の護衛隊が手厚く守ってくれている。ランジ王国の兵士とは違い、いずれも実力者揃いだ。そう簡単に殺されたりはしないだろう」


「そうですか…」


「ツバサ殿は随分と心配性であるな」


「いえ…心配性というか…どうしても疑い深くなってしまうというか…任務対象の要人に何かあったらと思うと少し怖くて……必要以上に心配し過ぎですかね?」


「いやいや、あらゆる可能性を考慮し、それを指摘するのは決して悪い事では無い。むしろ任務を完璧に遂行する上では必要な事だとも言える。ツバサ殿はそのままで良い。それに対して私やそれ以外の人間がツバサ殿の指摘に対して是非を考えれば良いだけの話だ。それでツバサ殿が安心して任務にあたれればそれで良い」


「分かりました」


なんというか、アビさんは本当に頼りになる先輩だな。

こちらの心配性を決して笑う事無く、肯定しつつも僕を安心させる言葉を選んでかけてくれる。

強さについても申し分ない。

それでもアビさんは、自分より遥か上の存在が何人も居るという。

その人達は一体どれ程の超絶超人なのだろうか。

自分の中でアビさんの評価が高くなればなる程、その人達のハードルがガンガン上がっていった。


そんな話をしながらジテンを走らせていると、時刻は夕方になりつつあった。

すると町の様なものが見えてきた。


「…あそこに見えるのがラグって町ですか?」


「いや、ここはその手前の『ウラエ』という町だ。今日はここに宿泊して、明日ラグに向かう日程になっている」


「あ、そうなんですね。てっきり今日中にラグって町に行くのかと…」


「確かに行こうと思えば行けるが、到着は深夜になる。連続殺人事件が起きている町で、何も分からない状態で深夜の町中を出歩くのは危険だ。であればウラエでしっかりと体の疲れを取って、明日に備えた方が良かろう」


「随分ホワイト組織なんですね、POSTって」


「なんだそのほわいと組織というのは?」


「いえ…なんでも無いです」


こうして僕達はウラエの町の入り口にジテンを停めると、町中に入っていった。

町は至って普通の様子で、夕方という時間帯というのもあり、仕事終わりの人達が家路に向かうべく、道を行き交っていた。

僕達はPOST協力店であるホテルに入ると、早めの夕食を取った。


「うむ…ここのホテルの食事はいつ来ても美味であるな!」


「あ…ここのホテルって以前も来た事あるんですね」


「ここはPOST本部に近いからな。立ち寄る機会が多いんだ。中にはここで食事がしたいが為にわざわざ泊まる者もいる位だ」


「…はぁ」


公私混同なのでは、とも思わなくも無かったが、これが任務を続けていく上でのモチベーションに繋がっているのかもしれない。

僕は何も言わずに食事を続けた。あと、確かにここの食事は美味い。

やがて夕食を済ませると、アビさんは部屋の鍵をカウンターで受け取って戻って来た。


「よし、では部屋に入ろうか」


「…あれ、部屋の鍵が一つしか……」


「あぁ、私の君の部屋で一つしか取っていないからな」


「………?」


え、同室?

雨すごいですね。

皆さんお気を付けてください。

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