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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.24 見学

俺とスーナが体育館に入るや否や、クラスの連中がものすごい勢いで押しかけてきて、大騒ぎになってしまった。


「き、君、スーナちゃんっていうの? めっちゃ可愛いね! 宜しくね!」


「いやいや、俺の方こそよろしく! 趣味はバスケです! 李家君にはお世話になってます!」


どうやらスーナは男子共から大人気の様だ。

だが、当の本人は急に大勢の男がやってきたもんだから、ビックリして、俺の後ろに隠れてしまった。


「ホラホラ、ビックリしちゃってるから、お前ら離れろ」


「いいよなー、李家はー。こんな可愛い子と一つ屋根の下で暮らしてるんだろぉ? しかも妹は可愛くてよぉ~。世の中不公平だわぁ~」


「いいから離れろっての。顔面にボールぶつけんぞ」


男子連中を追い払ったと思ったら、今度は女子連中に囲まれてしまった。


「スーナちゃんっていうんだっけ?」


「え、あ、はい!」


「スーナちゃんは李家君の事、なんて呼んでるの?」


「えーっと、いつもレン君って呼んでます」


「蓮君! なんか良くない? 今度私も李家君の事、蓮君って呼ぼうかな~」


「よ、呼ばなくていいよ!」


「ねぇねぇ、スーナちゃんのしてるペンダントってもしかして、李家君がプレゼントしてあげたの?」


「だから、なんで分かんだよ! もしかして、茜から聞いたのか?」


「だってこのペンダント、商店街のアクセショップで買ったやつでしょ? 私も見た事あるもん」


「なんかすげー恥ずかしいんだけど。っていうかどんだけみんなあのアクセショップに行ってんだよ!」


「いやー、良いと思うよペンダント! 私もペンダントプレゼントされてみたいわ~」


はぁ…ものすごい疲れる…。


今日の授業はバスケだ。先週まで基礎練習をしており、今週からチーム対抗戦での実践授業というわけだ。

体育会があまり大きくないため、まずは男子だけで試合をし、女子はそれを見て気付いた事を、感想として書くといった具合だ。


俺が準備運動しているとスーナが駆け寄ってきた。


「ん? どうした?」


「ばすけっていうのがどういう物か分からないけど、頑張ってね! 私、レン君の事、応援してるから♪」


みんなの前でスーナからの応援宣言は、死ぬほど恥ずかしかったが、やっぱり女の子から応援されるというのは結構嬉しい。

不思議とやる気がみなぎってきた。


「ありがと。まぁ頑張るよ」


案の定、周りから冷やかしの声が聞こえたが、全無視した。

俺は茜に、スーナに簡単なバスケのルールを教えるよう頼んだ。

コーラ1本と引き換えだったが…。


試合が始めると、両チームは互角の戦いを繰り広げた。


「蓮斗、頼む!」


同じチームの駿からパスを受けとり、シュートを試みようとしたが、予想以上にディフェンスが硬い。

丁度、相手チームのマークから外れていた山っちこと、大和千尋が目に入った。


「山っち、パス!」


渾身のスルーパスは見事に山っちに渡り、そこから山っちの放ったボールは見事にゴールのリングに吸い込まれていった。


「ナイス、山っち!」


そう言ったのも束の間、相手の速攻に対応できず、ものの数秒で逆転されてしまった。

26対25。後、一発入ればこちらも逆転だが、残り5秒。さすがにキツいか…?


「レン君、頑張ってー!!」


突然、スーナからの声援が飛んだ。

振り向くと誰よりも真剣な顔で応援しているスーナと、その隣に誰よりもニヤニヤした顔をした茜が並んでいた。

成る程、茜のやろうが唆したのか…。

…でもなんかやる気でた。


試合再開の笛が鳴ると同時に、俺は全力でダッシュし、駿が俺目掛けてボールを思いっきりぶん投げた。


「蓮斗、行けぇ!!」


俺はパスと呼ぶにはあまりにも乱暴な豪速球をキャッチし、全力でドリブル突破を決行した。

さすがに相手も動揺したのか、ディフェンスもガタガタだった。

一気にゴールしたまで到達し、最後はダンクで決めた。


「試合終了! 26対27でBチームの勝ち!」


最後の全力が堪えたのか、俺はその場に倒れ込んだ。


「蓮斗、ナイっシュー! でも最後、わざわざダンクで決める必要あったのか?」


「いや、なんとなくテンション上がって…」


「あー、成る程ねー。スーナちゃんの応援で火が付いたわけね」


「よーし、顔面にバスケットボールめり込ませてやろうか? アンパンマンの頭みたくしてやる」


「いや、アンパンマンの頭バスケットボールじゃないから!」


「おーい、お前ら! そろそろ時間だから片付け始めろ~!」


先生の合図と共に俺達は、各々用具の片付けを始めた。すると、茜がやって来た。


「いやー、流石は元バスケ部だねー。女子達、みんな見いっちゃってたよ。あ、勿論、スーナちゃんもね」


「別に俺だけじゃなくて、駿とか山っちも活躍してたろ?」


「そりゃそうだけど、結局はあんたが全部カッコいい所持ってったじゃん」


「嫌な言い方すんな。つーか、お前だろ? スーナにデカイ声で応援させたの」


「あら、やっぱりバレてた? でも嬉しかったでしょ?」


俺はその質問に対して何も答えられなかった。

何故なら、茜の言う通り嬉しかったからだ。


「でも私が言わなくても、きっとスーナちゃんは蓮斗の事、応援したと思うなぁ~」


「? なんでそんなことわかんだよ?」


「勘」


「勘って…」


「案外、女の子の勘って結構当たるんだよね~。それはそうとスーナちゃんの事、早く迎えに行ってあげないと可哀想よ~?」


「分かったよ…。あぁ、後今日はスーナの面倒見てくれてありがとな」


「どーいたしまして。コーラ忘れないでよ~」


「はいはい、後でな~」


俺は急いでスーナの元へ駆け寄っていった。


「おう、スーナ。見学は楽しかったか?」


「うん、楽しかったよ! レン君、とってもかっこよかったよ♪」


「スーナが応援してくれたから頑張れたよ。ありがとな」


「うん!」


「さぁて、やっとお昼だ。スーナは家帰るんだろ?」


「ええと…うん、そうかな…」


スーナはなんだか、少し迷ったような、そして少し寂しそうな顔をした。


「…一緒に昼ごはん食べてくか?」


すると、スーナはとても嬉しそうな顔で頷いた。


昼休みに入ると学校の屋上に行き、俺とスーナは弁当を二人で分け合って食べた。

弁当の量は少なかったけど、二人で食べる弁当はいつもよりずっと暖かくて美味しかった。


「レン君、またここに来ても良いかな?」


「えーと…うん、事前に学校とかに許可取ったらな」


断れない自分を情けなく思うと同時に、次にスーナが来る日をちょっぴり楽しみにしてたりするのは内緒だ。

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