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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
7章 POST
232/300

No.232 魂の叫び

俺達はグリームさん達を向かいに夕食を食べていた。食べていたのだが、暫く無言で食べていた。

するとメグさんが何かを察したのか、口火を切ってくれた。


「そういえば、1人居ないけどどうしたの?」


「あー…げん…川原なら後で食べるって言って、部屋に残ってます」


「へぇー…仲悪いの?」


「いや…別に悪いとかじゃ無いんですけど、あいつ人とご飯を食べるのが苦手みたいで」


「ふーん…まぁなんかあの子物静かそうだったしなぁ」


「まぁ僕達と歳が10個近く離れてるっていうのもあるかもしれないですけどね」


「…10個!? え、あの子いくつ…っていうかそもそも君達の年齢が分からないわね…」


「えっと…俺達4人が17歳で、川原が26歳です」


「2…26!? え、マジであの子…あの人26歳なの!? え、私より5個年上!? 全然見えなかった…」


「あのもやし野郎…俺の2個上ってマジかよ…」


「私の3個上という事か…確かに見えんな」


あれ、なんだか源河の年齢トークが思いのほか盛り上がったな。というか今の反応で3人の年齢が漏れなく分かってしまった。グリームさんが23歳、シンラさんが24歳、でメグさんが21歳という訳か。


「あなた達が17って事は、あいつと同い年ね」


「あの…あいつって?」


「あ、ごめんごめん、ロクって奴の事。ルリリちゃんにはもう会ったんでしょ? あの子のお義兄さん」


「ルリリさんの…」


そういえばルリリさんに義理の兄妹が居たって、テトラから聞いたな。その人が噂のロクって人という訳か。


「そーいやぁあの野郎、またルリリに任務報告を押し付けてこっちに戻らなかったらしいじゃねぇか!! ったくいつまで顔出さねぇ気なんだよ!! ふざけやがって!!」


シンラさんは憤った感じで吐き捨てた。


「ほんっと可愛く無いんだからあいつぅ~!! 前回久々に帰って来ても仏頂面で『居たのか…』って!! 私より年下の癖に私の事絶対馬鹿にしてんだからぁも~!!」


「シンラ、フレイム、少し落ち着け。後輩の前だぞ」


「あ…すみません、私ったらつい怒りに任せて……」


シンラさんとメグさんはグリームさんに諭され、冷静さを取り戻したのか恥ずかしそうにしていた。


「とは言え…奴の行動が問題なのは間違いない。組織で有る以上、その規律を守って然るべきだ。奴は仮にもNo.14だ。15メンバーに属しているなら猶更、下の者達の模範とならなければならないはずだ。にも拘わらず…」


成程、グリームさん達からもあまり良くは思われていないらしい。規律に囚われない一匹狼的な感じの人物なのだろうか。しかし、No.14という事はグリームさん達よりも位は下。実力的には劣るという事か? いや、強さだけで位は決まらないってレグマさんが言っていたし、そうとは限らない?

なんにせよ、この人達の前ではロクって人の話題はあまりしない方が良さそうだ。


「なんかごめんね、いない奴の悪口言っちゃって。そういえばあなた達研修初日はどうだった? 結構大変だったでしょ?」


「いやー正直きつかったです! 体力的なものもそうですけど、俺全然魔石の力、制御出来てないなぁって」


「いやぁーおめぇノーコンにも程があったもんな!! 何度も何度も壁壊してよぉ!! その度グリームが壁を修復の魔石で治してよぉ!!」


「ぬぐぐ…面目ないです」


駿は何も言い返せないといった表情で俯いてしまった。


「まぁまぁそんな気ぃ落とすなって!! 魔石の力のコントロールはからっきしだったがよぉ、あの威力はすげぇと思うぜ!! 元々の素質もあんだろうが、鍛え方次第じゃあまだまだ威力は上がる!! そしたら将来的にはでっけぇ戦力にもなり得るぜお前!!」


「え、マジっすかシンラ先輩!! ありがとうございます!!」


「先輩…シンラ先輩か…良いねぇ、悪くねぇ響きだわ!!」


なんだか駿はシンラさんに気に入られた様だった。まぁお互いあまり裏表の無さそうな性格だし、気があるのかもしれない。


「アカネ…ちゃんだっけ? あなたもすっごいわね。魔石の力の放出は全然だったけど、身体への乗せ方は言う事無しだもん! 多分、入ったばかりの私よりもずっと上手だもん!」


「ありがとうございまーす!」


「ゼンバヤシアカネは魔力の制御自体は問題無く出来ている。研修を重ねれば魔石の力の放出についてもじき出来る様になるだろう。そこら辺は同じ様に魔石の力の放出が苦手だったフレイムが参考になるだろう」


「ホントですか? 頼りにしてますメグ姉さん!」


「メグ…姉さん。良いわ良いわ、私に何度も聞きなさいアカネ♪」


茜の相手の懐に潜り込むのが上手いっていうのもあるが、メグさんも案外ちょろいな。


「あらぁ、あなた達何楽しそうにお喋りしているのぉ? 私も混ぜてもらっても良いかしらぁ?」


リリィさんがスーナの肩に手を置きながら言って来た。スーナの肩に触れながら登場するのがお決まりなのだろうか。


「あ、リリィさんお仕事おわったんですね。隣座ります?」


そう言ってメグさんは隣の席の椅子を引いた。


「ありがとうメグちゃん♪ 仕事はまだ全然よぉ。ご飯済ましたらまた戻らなきゃぁ」


「相変わらず忙しいですね…全然休めてないんじゃないですか?」


「そうなのよぉ。治療できる人材が少ないのもあるんだけどねぇ。そもそも私医療は専門外だったのに」


「え、リリィ先生って元々お医者さんじゃなかったんですか?」


スーナは驚いた様子で質問した。


「そうよスーちゃん。私は元々義手義足装具士だもの。それが癒しの魔石の適正があるって事で、急に兼務させられちゃってぇ。医学の勉強だって大変だったのよぉ」


「た、大変ですね。でも癒しの魔石で治療するのに医学の勉強もするんですね」


「そこは大事な事ね。簡単な治療だったら確かに医学の知識が無くても、治療は成立するわ。でも基本的には医学の知識があって、初めて癒しの魔石の力が真価を発揮できるのよぉ。患者さんの身体のどこがどんな理由で悪いのかが分からないと、治療のイメージが出来ないもの。癒しの力と言っても、何百種類もあるんだからぁ」


成程、勝手に癒しの魔石の力を相手に浴びさせれば怪我人だろうが病人だろうが、関係なく治せるものだと思っていたが、適切な診断が必要という事か。そういう意味では俺達の世界の医療とそこまで違いは無いのかもしれない。


「でもこれからは毎日スーちゃんが傍に居てくれるから、多少疲れも吹っ飛ぶってものよぉ」


「え、私が…?」


「えぇ、スーちゃんは癒しの魔石の適性が高いって事で、明日からは4人とは別に私の元で研修を受ける事になっているわぁ」


「あ…えっと…そうなんですね」


スーナは一瞬表情が暗くなった。恐らく一人だけ離れて研修を受ける事が心細いのだろうか。


「あぁーそっかそっかぁ、スーちゃんはみんなと離れ離れになるのが寂しいのねぇ♪」


「え…いや、別にそんな事は…」


「そんな隠さなくても良いのよぉ。あ、もしかしてレント君と離れ離れになるのが嫌って事かしらぁ?」


「あ…えっと…うぅ…」


「んふふふ、そこは否定しないのねぇ♡」


なんだか俺まで恥ずかしくなって来た。そんな俺を駿と茜はニヤニヤしながら見ていた。こいつら後で覚えてろよ。


「えっとリリィさん…今の話詳しく…」


突然シンラさんが真面目な顔でリリィさんに質問してきた。


「んー? 詳しくって何がぁ?」


「スーナって子がリノイエが離れ離れになるのが嫌って所っス」


「…? あぁ、スーちゃんとレント君が恋人同士って事よぉ」


「い、いや、リリィさん別にそんな事言わんでも…」


「おぉいリノイエぇ……」


シンラさんは俯いたままこちらに体を向けて呟いた。気のせいか凄まじい殺気を感じる。


「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇ、こちとら毎日彼女作る暇もなく、身を粉にして任務にあたってるっつーのに、何てめぇ彼女同伴でPOST本部に入団して来てやがんだ!!! 浮ついた気分で来る所じゃねぇーんだよここはよぉ!! 仕事なめんなよぉ畜生がよぉ!! 俺、お前もう嫌い!! 超嫌い!! 彼女良いなぁー畜生!!!」


シンラさんは周りに人が居る事も忘れて、思いの丈を大爆発させた。


「うっわぁ、シンラさん大人げないわぁー…正直無いわー…」


メグさんはシンラさんにドン引きしつつも、俺とスーナの方を向いてニヤニヤしていた。


「で、あんた達どこまでいったの? ねぇねぇメグ姉さんに教えなさいよ! 誰にも言わないから♪」


この人もこの人で中々面倒くさいな。というかリリィさんなんちゅうー事してくれてんだ。

リリィさんの方を向いたら、「ごめんねぇー」みたいな感じで手を合わせてウインクしていた。

ごめんねぇーじゃないわ。


「シンラ、フレイム。そこら辺にしておけ」


「いやグリームよぉ!! ここは先輩としてビシッと言ってやるべきじゃねぇのかぁ!! 浮ついた気持ちで仕事すんじゃねぇぞってさぁ」


「おいリノイエレント…」


「あ、はい」


「愛する者がいるという事は、それだけで力の糧になる。俺は応援する」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ちょっとグリームさんよぉ、そういう事じゃねぇんだよなぁ!!! お前、何こいつの肩を持つような事言っちゃってんだよぉ!!!」


「ふっ……かくいう俺も守るべき妻子が居る立場。家族の為に必ず家に帰るという信念が何よりも代えがたい支えとなっている。リノイエレントもスーナインジを悲しませない為にも、研修にて力をつける様に精進する事だ。そして顔をみせてやれ…」


「…はい、ありがとうございます、グリームさん!」


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! リア充共ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! おめぇらそこに並べぇ!!! 俺の魔石でまとめて葬り去ってやるからよぉぉぉ!!!」


「ちょっとシンラちゃん、みっともないわぁ」


「みっとも…み、みっともない…みっともなくても良いじゃん!! それが人間だろうがぁぁ!!!」


こうして食堂中にシンラさんの魂の叫びが響き渡った。リリィさんとメグさんが宥めてようやく収まったが、正直研修よりこの食事会の方が数倍疲れた気がした。

ようやく執筆再開しました。

せめて5月中は毎日更新頑張りたい…

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