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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.22 学校

今日はスーナが来てから初めての平日、即ち登校日だ。

俺は学ランに着替えて朝食を食べていた。


「おはよー、レン君」


やや遅れてスーナが起きてきた。


「スーナおはよー。昨日は眠れた?」


「うん、おかげ様で! 少し寝すぎちゃった位だけどね」


スーナはテーブルの前に座るなり、俺の事をジロジロ見出した。


「? どうしたスーナ」


「レン君、なんか変わった服着てるね」


「いきなり学ランをディスるなよ…。これは学校へ行くときの服なの」


「がくらん…? 学校に行く時はこれ着ないとだめなの?」


「そういう事。学校指定の制服があって、それを着て登校する決まりになってるの」


「フーン、なんか変なのー」


「変なのって…。夏美だって制服着て学校行ってるんだぜ」


「夏美ちゃんも、レン君が着てるのと同じのを着て学校へ行くの?」


「いや、夏美はセーラー服ってのを着てだな…」


「せーらー服って?」


「うん、多分そういう返答が返ってくると思ってた。要はセーラー服も学校指定の服って事だ」


「そっかぁ、好きな服着て学校行っちゃいけないなんてなんかやだなー」


「そうか? 俺は逆に学ランの方がその日着ている服をわざわざ選ばなくて済むから楽だけどなー」


「私はレン君が色んな服着てる所、見てみたいけどなー」


「俺は着せ替え人形か…」


「はい、スーナちゃん、朝食お待ちどうさま」


「ありがとうございます♪」


うちは基本的に朝食は、ご飯とみそ汁、目玉焼きがデフォルトメニューである。

夏美は毎朝、部活があるので朝食はトースト一枚で済ませて、とっとと行ってしまう。

スーナは特にみそ汁が好きな様で、毎日美味しそうに飲んでる。


「ご馳走様。じゃあ俺、そろそろ行ってくるわ~」


「はいはい、忘れ物ない?」


「大丈夫だよ、小学生じゃあるまいし」


「んな事言って、おめぇこの間、体操服忘れて先生に叱られたって言ってたじゃねーかよ」


「アレはその…運が悪かった」


「なんだそのよくわからねぇ言い訳は。忘れ物が多い所まで亮介に似やがって…」


「うるさい、青汁じじい」


「なんだおい、青汁飲んでただけで、青汁じじい呼ばわりたぁ叶わねぇな。青汁舐めんな」


「まぁいいや、じゃあ行ってくるわ」


俺は部屋からカバンを取ってきて、玄関へ向かった。

すると後ろからスリッパの音をパタパタさせながら、スーナが駆け寄ってきた。


「ん? どうしたスーナ?」


「えっと…レン君行ってらっしゃい! 無事に帰って来てね!」


「いや、別に戦場に行く訳じゃないんだから…まぁ行ってくるよ。スーナも頑張れよ」


「うん!」


スーナに見送られながら家を出た俺は、女の子に見送られながら登校するという今までにないシチュエーションに戸惑いながらも、なんだか嬉しいような不思議な感覚に囚われていた。


しばらく歩いていると後ろから茜がやって来て、俺の肩をポンっと叩いた。


「はよー、蓮人」


「おはよう。…なんだよ、なんか言いたそうな顔してるな」


「例の留学生の子とはうまくやってるわけ?」


留学生…あぁスーナの事か。そういや一昨日会った時、留学生って説明したんだっけ…。


「まぁ…うちの家族とは仲良くなってるよ」


「そうじゃなくて、蓮人との仲はどうなの?」


「俺と…? 別に普通に仲は良いけど」


「ふーん」


「なんだよ、フーンって」


「あの子…スーナちゃんって言ったっけ? すごく可愛い顔してたよねー」


「なんだこれ、いよいようざくなってきましたな。さっきから何が言いたいんだよ?」


「あの子のしてたペンダント…蓮人がプレゼントしてあげたんでしょ?」


「な、なんで分かったんだよ!?」


「あはははは、相変わらず蓮人、嘘つくの下手だよねー」


「うわ、すげー今の恥ずかしいんだけど…。で、なんで分かったんだよ?」


「あのペンダント、あそこの商店街のアクセショップで売ってたやつでしょ? 前あそこ入った時、見た事あったからさ」


「なんか…全部筒抜けだなー」


「蓮人は案外分かりやすいからねー。まぁ付き合い長いからってのもあんだけどさ」


「はぁ…ゲームじゃ絶対相手に悟られたりしないんだけどなぁ…」


「まぁそれが蓮人の良い所でもあんじゃないの?」


「俺の良い所?」


「嘘がつけない所。言い換えれば正直な所かな」


いや、俺現在進行形で、スーナが留学生って嘘ついてるけどね。


いつも俺と茜はこうやってグダグダ喋りながら登校している。

ただ、不思議なもんで俺達が二人で登校してても付き合ってるとか揶揄われる事は殆どない。

まぁ俺達が互いに異性として全く見ていない事が周りにも伝わっているからかもしれないが…。


教室に入ると、既に駿が席に座っていた。するとこっちを見るやいなや、今にも泣きそうな顔で俺の元へやってきた。


「蓮人~、俺を助けてくれ~!」


「朝っぱらからうるさいなぁ。どうせ日本史の宿題忘れたとかそんなんだろ?」


「早っ、俺の考えてる事看破すんの早っ!」


「お前の考えてる事なんざ筒抜けなんだ…あれ、なんかこのデジャブ感なんだ…?」


「良かったねー蓮人、同じ考え筒抜け仲間がいれくれてー♪」


「考え筒抜け仲間ってやめろ!すげーアホコンビみてぇじゃん」


「何々、なんの話?」


「うるさい、宿題もやってこない馬鹿にはなんの関係も無い話だよ。ほら、ノート貸してやっからとっとと写して来い筒抜け太郎」


「筒抜け太郎って何!? え、ノート写さしてもらうのにここまで罵詈雑言浴びなきゃいけないの!? でもいつもありがとね!」


そう言うと、駿は俺からノートをひったくって、慌ててノートの写し作業を開始し出した。

全く、毎度の事ながらしょうがない野郎だ…。


「駿も相変わらず勉強嫌いだよねー。あいつが真面目に勉強してるとこ見た事ないかも」


「あいつが勉強しようもんなら、晴れのちゴ〇ブリの空模様になりそうだから、是非ともやめてほしいもんだ」


「あーそれは困る。そうなる前に全力で駿の息の根を止めるしかないね」


「いや、なんで息の根止めちゃうんだよ。どんだけゴ〇ブリ嫌いなんだよ」


「いやいや、ゴ〇ブリとかあり得ないから。ゴ〇ブリから身を守る為なら駿には犠牲になってもらうわ」


「ごめんごめん、ゴ〇ブリを例えに出した俺が悪かった。ってかなんで朝からゴ〇ブリ連呼してんだ俺…」


いつも通り、何の中身も無いバカ話をした後、授業が始まった。

駿のバカは、授業はじまっても俺にノートを返す事をすっかり忘れており、手元にノートが無い俺は先生にその事を指摘され、仕方なく駿にノートを貸している事を白状すると、案の定、駿は先生にしばかれた。


3限目の授業が終わるや否や、駿は俺の元にやって来て、抗議を始めた。


「もうっ、バカ蓮人! なんでノートの事先生に言っちゃうんだよ! めっちゃ怒られたじゃんか!」


「いやぁ…俺に言わせれば、なんでノート写し終わったのに返さないのかっていう疑問でいっぱいな訳だよ。おかげで授業の最初の方、板書できなかっただろ」


「それはノート貸してる事を忘れてた蓮人が悪い!!」


「おーい、茜ぇ~、前言撤回。やっぱりこいつの息の根、止めとく事にするわ~。茜も手伝って」


「いやいや、急に息の根止めるにまで発展するっておかしくない!?」


「いえいえ、間接的なゴ〇ブリ退治も兼ねていますので。茜様たってのご要望です」


「間接的なゴ〇ブリ退治って何!? え、俺ついにゴ〇ブリ呼ばわり!? いよいよ泣くよ俺!」


「さて…冗談はこれくらいにしといて、4限目は…体育か、とっとと着替えなきゃな。おら、駿行くぞ!」


「ちょっと、ゴ〇ブリの件がまだ済んでないんですけど! 後でどういう意味か聞かせてもらうからな!」


「はいはい。ほら、更衣室行こうぜ」


「ちょっと蓮人!」


「ん?なんだよ茜…」


「今、校門から校舎に向かって歩いてるのって…あんたん所の留学生ちゃんじゃない?」


「スーナ? んなわけあるかよ。スーナは家に居るはず…」


俺が教室の窓から下を見下ろすと、若干挙動不審の女の子が校舎に向かって歩いていた。

俺は無言のまま、全力で校舎の入り口に向かった。

校舎の入り口に着くとキョロキョロと辺りを見回してる女の子がぽつんと立っていた。

すると、俺の顔を見るなりぱぁっと笑顔になり、パタパタと俺の元に駆け寄ってきた。


「おーい、レン君ー!」


……。


「なんでぇぇぇぇーーーーー!!?」

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