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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
7章 POST
218/300

No.218 出発

「いやーなんかいきなり現れて、いきなり去って行ったなぁ」


駿は惚けた顔で呟いた。


「いやー、前回シュン君が腕を失ったと聞いてから私の方から彼女にコンタクトを取ってね。実は君達が前回ここを出発した時には、彼女がこちらに来る事は決まっていたのだが、つい伝えそびれてしまってね。少々驚かせてしまった」


「あーいや、俺は別に良いですけど…。っつーかロジさんって一体何者なんですが? 本部の人間と触接やり取りできるって…」


「ははは、何てことは無い。今はこの村の村長をしている老いぼれだよ。それ以上でもそれ以外でも無いよ」


「…なーんかはぐらかされてる様な気がすんだよなー。まぁ良いか」


「まぁーとりあえず駿の腕の方はなんとかなりそうで良かったじゃん」


「まぁな。ちなみにこっちの世界の義手ってどんなもんなんだろうなー。カッコいいのだと良いなぁ」


それから俺達はロジさんからPOST本部までの行き方や準備・注意事項等を説明された。

ロジさんによるとイクタ村から約5日程掛かるとの事で、途中いくつかの街を経由するという。

POST本部はここからはるか北の方にあるらしく、厚着の服を持っていけとの事だったので、ロジさんやビナさんから何着か服を拝借した。

ちなみに移動に関しては、POST本部から移動手段として遣いをよこしてくれるので、心配しなくて大丈夫との事だった。全く至れり尽くせりである。


一通りの話が終わると、俺達はロジさんの家で夕ご飯をご馳走になり、そのまま夜を迎えた。

いよいよ明日からPOST本部に向けた長旅が始まるとあって、中々寝付けなかった。

すると部屋のドアをノックする音が聞こえた。またスーナかなと思い、ドアを開けるとそこに立っていたのは、ユウさんだった。


「あれ…ユウさん…?」


「…よう。夜分遅くに悪ぃな」


「あ、いえ……急にどうしたんですか?」


「えっと…その…明日の朝早くに村を出発するって聞いたからさ。あたし明日の朝はやぼ用で居ねぇから、せめて挨拶だけでもって思ってよ…。他の連中には済んでて、残りはお前だけ…とうか…」


「…そうですが、なんかわざわざありがとうございます」


「べ、別に気にすんな! ただの俺の自己満足だよ!」


「仮にそうだったとしても、こうやって声を掛けてくれるのはとても嬉しいですよ」


「またお前はそういう……」


ユウさんは照れ臭そうに髪の毛をぐしゃぐしゃと掻いて、下を向いた。


「お前ら…POST本部に行くんだってな」


「あ、はい、ロジさんの推薦で」


「あたしも詳しく知ってる訳じゃないけど、あそこは世界中の実力者だったり猛者共が集まる場所だ。言い換えると、生半可な実力や覚悟じゃ必ず振り落とされる…そういう場所だ」


「そうですか…話には聞いていたけど、ユウさんがそういうって事はよっぽどかぁ…」


「あーいや、別にお前らを怯えさせに行った訳じゃないんだけど…その…要は振り落とされない様に負けるなっつーか……応援…みたいな」


「そっか…ありがとうございます!」


「ほ……本当だったら、一緒について行ってやりてぇ所なんだけどよ。あたしがイクタ村から離れる訳にはいかねぇしさ…。レンとの約束だし……」


ユウさんは自分で言った言葉に照れてしまったのか、再び照れ臭そうに髪の毛を掻いていた。


「まぁその…つまりあたしが言いてぇのは…無事にまたイクタ村に帰って来いって事だよ」


「はい…必ず!」


「よし…言いてぇ事は全部言った。じゃああたしも明日は朝早いからよ。じゃあな!」


「はい、ユウさんも気を付けて!」


ユウさんは笑って手を振りながら、帰って行った。

ユウさんは終始ぎこちなかったが、あれはユウさんなりの俺達へのエールだったんだと思った。

今度会った時は、久しぶりにプリンでも作ってあげよう。

そんな事を思いながらベッドで横になると、先程までの眠れなさが嘘の様に深い眠りに入って行った。


そして次の日の朝。


俺達は朝の朝食を素早く済ませ、諸々の準備を済ませて村の入り口で待っていると、突然場所の様な物が目の前に出現した。


「うわぁ、ビックリしたぁ……なんか馬車見てぇのが現れたぞ!」


朝から元気いっぱいの駿が馬車の出現に興奮した様子だった。

すると馬車の様な荷台から一人の少年が降りてきた。


「皆さん、おはようございます。既に出発の準備が整っているご様子ですね。早速ではありますがこれからPOST本部に向けて、レントさん、スーナさん、シュンさん、アカネさん、ツバサさんの5名をご案内致します。あ、申し遅れました。今回皆さんの護送を担当致します、POST本部所属のテトラ・イブと申します。どうか宜しくお願い致します。では、早速ですが、皆さん荷台の方に御乗りください」


「レント君達、気を付けていくんだよ」


「はい! では行ってきます、ロジさん!」


こうして、恐らく俺達よりも年下と思しい少年に言われるがまま荷台に乗せられ、俺達はイクタ村を出発した。

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