No.204 スーナ参戦
「…ごめんスーナ、俺ビックリし過ぎて、今何を言われたか分からなかった。もう一度言ってもらっていい?」
「私も一緒に勉強会に行くって言ったの♪」
「…なんで!?」
「うーん…なんでも♪」
「いや、スーナ…別に俺、あいつの家に遊びに行く訳じゃないから。それに俺達ずっと勉強に集中してるから、多分スーナが行っても面白くとも何ともないぞ」
「ううん、大丈夫だよ、私が行きたいだけだから♪」
「えーっと…あれか? 茜の家に行きたいって事か? それだったら別の日に予定設けてその日に…」
「私は今日、一緒に行きたい♪」
「さっきも言ったけど、スーナが知らない奴もいるし…」
「私は今日、一緒に行きたい♪」
「いや…だからその…スーナ……」
「私は今日、一緒に行きたい♪」
俺がスーナに何を言っても無駄だった。顔は笑っているが底知れない圧を感じる。
こんなに我が儘を突き通そうとするスーナは初めてだった。
というかこちらの世界に帰って来てから、どうにもスーナの様子がおかしい。
先日のベッド侵入といい今日といい、なんというか精神面が若干不安定というか…。
とりあえずスーナが折れそうに無いし、勉強会に遅れる訳にもいかなかったので、今回はスーナを連れていく事にした。
「…分かった。じゃあ茜にスーナも行く事伝えておくよ。…でも何度も言うけど、行って面白い事なんてひとつも無いぞ?」
「うん、大丈夫だよ♪ ありがとう!」
俺は急いで茜に連絡して、急遽ではあるがスーナも一緒に行く旨を伝えた。
案の定、茜からは「え、なんで??」みたいな反応はされたものの、茜の家に行く事自体は特に問題無いという事でOKを貰った。
「よし、茜も良いってさ。じゃあ家出るか」
「はーい♪」
茜の家に行ける事が許可されたからか、先程感じられた圧みたいなものは無くなっていた。
俺達は戸締りをしっかりと確認して、家を出た。
「にしても…スーナが茜の家にそんなに行きたかったんて知らなかったよ」
「えへへ♪」
「あいつんちにはでっかいゴールデンが居るから、退屈だったらその子と遊んでてくれよ」
「ごーるでん……?」
「ゴールデンレトリバーっていう…犬の種類だよ。ほら、お隣の柿原さんがよく犬と散歩してるだろ? それがそうだよ」
「へぇー、あんなに大きな子がアカネちゃんのおうちに居るんだね♪」
「一応、賢い奴だから噛んだりはしないと思うから、そこは心配しなくても大丈夫だよ」
「りょーかい♪」
そうこうしている内に茜の家が見えてきた。いつみてもでっかい1軒家だ。
「あ、このでっかいおうちがアカネちゃんの家だったんだね」
「そっか、散歩とかお使いしてりゃあ何度もここの道通ってるか。あいつああ見えて金持ちの娘だからさ。じゃあ茜に電話すっか」
茜に、家の前に着いた旨を伝えると、中から茜が出てきた。
「いらっしゃーい。じゃ中入ってー。スーナちゃんもいらっしゃい」
「はい、お邪魔します♪」
そう言って俺とスーナは靴を脱いで家の中に入った。玄関には何やら高そうな絵画やら美術品みたいなものがいくつも飾ってあった。ここら辺は茜の父親の趣味である事を以前聞いた事がある。
俺は2階にある茜の部屋に向かおうとすると、茜からちょいちょいと呼び止れらた。
「さっき電話でも聞いたけど……なんでスーナちゃんも来たの??」
「いやぁー…それが俺にもよく分からないんだよな。急に勉強会についてきたいって…」
「だって勉強会なんか来たってスーナちゃんつまんないでしょ」
「俺もそう言ったんだけど、行くって聞かなくてさ」
「あのスーナちゃんが? なんかちょっと想像出来ないんだけど……」
「そうなんだよなぁ。なんかこっちに戻って来た位から若干様子がおかしいというか……いや、基本的には今まで通りなんだけど、前より自分の欲を前に出すようになったというか……」
「我が儘になったって事?」
「んー…我が儘もちょっと違うんだよな。別に自己中心的な振る舞いが増えたとかいう訳でも無いし。今までより押しが強くなったっつーか…」
「何がきっかけなんだろう…。まぁある意味蓮人に遠慮しなくなってきてるとも言えるかもね」
「遠慮ねぇ…だと良いけど」
「兎も角、スーナちゃんが来る事自体は私は全然問題無いからさ」
そう言って、茜は何やら準備の為にリビングの方に歩いて行った。
俺は気を取り直して、2階にある茜の部屋に入って行った。
「相変わらずこいつの部屋はゲームのカセットやらCDやらDVDが大量に詰まれてるな…」
汚部屋とまでは言わないが、中々に散らかっていた。お客が来るからといって掃除・片付けをする様な奴ではなかった。
部屋には既に駿が居て、スマホゲームをやっていた。
「なんだもう来てたんだ」
「お、蓮人。ってスーナちゃん!? な、なんでスーナちゃんがいんだ?? 蓮人が呼んだのか?」
「いや…これはスーナがどうしても来たいって……」
「え…あ…そうなんだ……?」
「はい、シュン君も宜しくお願いします♪」
「あ、うん、宜しく!」
恐らく駿の中では「何を宜しくお願いするの?」と困惑しているだろうが、一旦流してくれた。
その後、翔平と橘も到着し、無事に勉強会メンバーが全員揃った。
「よし、全員揃ったね。じゃあボチボチ第一回勉強会始めて行こうか!」
こうして俺達の不思議な勉強会が幕を開けた。




