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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
7章 POST
202/300

No.202 作戦会議

俺は真っ青な顔で目の下に隈を携え、首に噛み跡を付けるという、まるでゾンビの様な様相で学校に向かった。

体の方はあちらの世界に行く前と後で殆ど変わっていないのは既に知っていたが、記憶力はそうではなく、1ヶ月の間に、あちらの世界に行く前に勉強していた事を綺麗さっぱり忘れてしまっていた。

これは完全に盲点だった。

今から勉強すれば、赤点を取る様な事は無いだろうが、中間テストより大幅に点数が下がってしまうのは避けられそうに無い。そうなれば流石にばあちゃんから何かしらの説教を食らうだろう。

かと言って「異世界に1ヶ月行ってたから、記憶飛んじゃった」などというのをどうやって説明すればいいのだろうか……。

あちらの世界に勉強道具など持っていけないし、そもそも勉強する時間が無い。


学校に着くと、教室には駿と茜が先に到着していた。


「お、蓮人来たな!」


「いや普通に来るわ」


「いやーしかし学校って久々だなー! でもこっちの時間的には昨日も来てる事になるんだよなぁ」


「なんだか変な感覚だね。私もまだ調子戻ってなくてさ」


「そういや、もうすぐ期末テストがあるけど二人はどんな感じ?」


「……あー……いやぁ……」


俺が質問すると駿と茜は速攻で目を反らし、遠い目をしてしまった。どうやら状況としては俺と全く同じらしい。


「勉強した事が全部抜けちまってんのは結構痛いよなぁ……」


「いや、駿は元から勉強なんかしてねぇーだろ。ある意味今回一番ダメージが少ないな」


「し、してるし! たまに教科書をペラペラーっとさぁ」


「それ勉強してるって言わないから」


「なんかさー…あっちの世界に頭が良くなる魔石ってないかなー。一瞬で良いからバシって頭ン中に試験内容が入って来るようなさー」


「んなもんある訳ねぇーだろ! どんだけ現実逃避してんだお前は!」


どうやら茜は現実逃避したくなる程追い詰められているらしかった。

駿は普段勉強をしていないだけで、その気になれば実はある程度テストで点数取れるタイプである。一方、ああ見えて茜は勉強が苦手で普段のテストも、赤点こそ免れているものの、今回は厳しいかもしれない。


「こりゃ茜の赤点回避も含めて、勉強会を開くかー……っつっても、俺達だけで開いてもあんまり効果なさそうだなー。もうちょい勉強出来そうなメンバーが参加してくれると心強いんだけど…」


「おう、じゃあ俺、他に勉強会のメンバー探してみるわ」


「私も何人か心当たりあるから、相談してみる」


「分かった。そう言えば話変わるんだけどさ。魔石で思い出したんだけど……」


駿と茜に、昨日帰宅した際に魔石の力がこちらの世界でも発現した事を話した。当然と言えば当然だが、二人は魔石の力がこちらの世界でも使えてしまう事は全く考えもしなかったらしかった。


「へぇー、じゃあ俺も使えんのかな?」


駿は徐に手を教室の窓側にかざした。すると、突然急に強烈な突風が発生し、教室の窓という窓を全て吹きとしてしまった。

突然の出来事に教室中は大パニックに陥った。


「あれ、出来た!! 俺にも出来ちゃった!! やべ、すげぇテンション上がる!!」


「テンション上がるじゃねぇだろ!! 試すにしても場所を考えろって!! 教室の中で使うって何考えてんだ!! この教室だけ吹き抜けになっちまったぞ!!」


「ごめん、本当に出るとは思わなかったから!! おい茜、間違ってもお前もここで使ったりすんなよ!!」


「いや、一緒にしないで」


それから朝のホームルームが終わり、気が付けてば下校の時間になってた。

結局教室の窓については、割った瞬間を見た者は誰も居らず、とりあえず謎の突風で吹き飛ばされたんじゃないかという事になった。

帰りのホームルームが終わると、駿はクラスの男子1人を連れてきた。


「蓮人ー! 翔太誘ったら勉強会参加するってさ!!」


「おー、なんかみんなで勉強するんだってな。俺、毎回赤点取ってっから助かるよ!」


俺は駿の首を掴み、少し離れた場所で声を潜めて会話をした。


「なんでよりによって翔太連れてきた? 馬鹿が増えただけだろうが」


「だって人が多ければ多い方が良いって蓮人が…」


「『勉強出来そうな』ね! 逆にアイツに勉強教えてたら、俺達が勉強する時間無くなるぞ!」


「マジかーそこまではちょっと考えてなかったわ……」


「なんでだよ! そこは普通気付くだろ!」


「…じゃあ断るか?」


「いや、流石に誘っていて断るはかわいそうだろ……まぁ仕方ない…その代わりあいつの勉強はお前が教えろよ?」


「えーー!!? なんで俺があいつに勉強教えなきゃなんねーんだよ!! あいつ物覚え悪ぃし、すっげぇ馬鹿だぜ!!?」


「お前、マジでなんで誘ったんだよ」


「おーい二人共ぉー、さっきから何話してんだぁ?」


「あーいやいや、何でもねぇよ! 勉強会の打ち合わせしてただけだ、気にすんな!!」


「おーそっか!」


少しして茜も一人連れてやって来た。茜が連れてきたのはクラスの委員長も務める、橘咲良(たちばなさくら)という女子だった。クラス一…いや、学年一の成績を誇る才女だ。

若干気難しい所もあり、俺もあまり話した事は無い。茜の奴、またすごい奴を誘ったもんだ。


「はい、私は咲良連れてきたから。急に誘ってごめんね」


「いえ…私は大丈夫よ。それに人に教えるというのも私の勉強に繋がるし」


「茜と橘って仲良かったんだ。知らなかったわ」


「私達、小学校からずっと一緒なの。たまに買い物とかも一緒に行くしね」


「へぇーなんか意外だなぁ」


「意外って、駿それどういう意味?」


「いーえ、なんでもありません」


「よーし、じゃあ次の土曜日に私の家に集合ね。詳細は後でメールするから」


こうして背水の陣で迎える俺達は、第一回勉強会を開催する事になった。

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