No.200 理性
「びっくりした……スーナかぁ。……俺の腕を掴んで何してんだい?」
「驚かしちゃった?。ごめんねーレン君」
「あ、いや、それはいいんだけど……なんで俺のベッドに忍び込んでるんだ?」
「えっとねー……久々にレン君と二人っきりになれると思ったから♪」
確かに前回あちらの世界にいた時は、旅や戦いでそれどころじゃ無かったし、イクタ村に戻った後は駿や茜も居たから、あまりスーナと二人きりになれるタイミングは無かったかもしれない。
「もしかして…寂しい思いさせちゃった?」
「ううん、そうじゃないけどぉ……甘えられる時は甘えたいなぁって……」
「あ、あぁ…そうか。キロとテンはスーナの部屋で寝てるのか?」
「二人はレン君のおばあちゃんと一緒に寝てるよー。絵本を読んでもらうってー。私まだ文字を読むのに慣れてないから……」
「あぁ、じゃあばあちゃん達と和室で寝てるのか」
そう言えば、最近テンが何か本みたいのを持っていたな。多分、ばあちゃんが買ってあげたんだろうけど、それがその絵本か。
「なので今日はレン君を独り占めしまーす♪」
そう言ってスーナは思いっきり左腕をギュッと抱きしめてた。若干痛い。そしてスーナの温かな吐息が耳元にかかって、こそばゆい感じがして落ち着かなかった。
今まで何度か俺のベッドにスーナが入って来る事はあったが、今日はなんだかいつにまして積極的な気がした…というか若干様子が変だ。いや、思い返してみると神社から言えに着いてた辺りから、なんとなくスーナがフワフワした雰囲気を醸し出していた様な気もする。
「あの、スーナ…なんか今日は随分とご機嫌だね……」
「んー? 私はいつもレン君と一緒に居れてご機嫌だよぉー?」
「あ、うん、それはありがとう…じゃなくて、なんかすごい酔っ払ったみたいな感じに…」
「ちがうよぉー私酔っ払ってなんかないよー」
確かにスーナから酒の匂いはせず、石鹸の良い匂いしかしなかった。
そもそもいくらじいちゃんでもスーナにお酒を進める様な馬鹿な事はするはずも無かった。
じゃあ一体何が原因でこんな状態になってしまったのか。
「レン君……とぉっても良い匂いがするぅー♪」
「良い匂いって…風呂入ってるし、スーナだっておんなじシャンプー使ってるから一緒だろ」
「ううん、それだけじゃくて……レン君の匂いがする」
「やめろやめろ、要は体臭じゃんか!」
「とっても…落ち着くし…優しい匂い……」
「匂いに優しいも何も……」
「それに……レン君…美味しそう…」
そう言うと、なんとスーナは俺に覆い被さり、首筋にカプリと軽く噛みついた。
そして力を入れたり、歯を離したりして俺の首を嚙み続けた。
「ちょ…スーナ、お前何してんだ!? 何…首……噛んで……あたたたた」
「レン君の首……美味しい♡」
俺の首にスーナの歯やら、やや乱れた吐息、唾液がダイレクトに伝わって来た。それ以外にもスーナの色々なあれやこれが俺の体に当たっており、頭がパニック状態だった。
というか、流石に俺の理性が吹き飛んでしまう。
「ちょっと……待って……俺まだ高校生だし……こういう事はもっと………って、ん?」
ふと目をやるとスーナは、俺の首に噛みついたまま寝息を立てていた。
「……え、朝までずっとこのまま…?」
俺の困惑は露知らず、スーナは気持ち良さそうに朝まで眠っており、俺はついに朝まで眠る事は出来なかった。




