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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
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No.194 現状

「レント君達も…よく誰も欠ける事なく帰って来てくれた! いや、欠ける所か一人増えているね。まぁそこら辺の込み入った話は後で聞こう。こんな所で立ち話もなんだし、とりあえず家の中に入りなさい」


そう言うと、村長さんとスーナは先に家の中に入って行った。


「……流石に人一人増えた事については、後回しにしないで先に確認するべきなのでは…」


ゲンガは至極真っ当な意見を述べた。


「村長さんも私達が無事に村に帰って来た事が嬉しくて、ついつい舞い上がっちゃってるんじゃないかな。…まぁ一人若干無事じゃないけど」


「村長さん、それの事には目もくれなかったぞ…」


「どうせ後で嫌って程聞かれるんだし、良いじゃん。とりあえず中に入ろう」


俺達もようやく家の中に入り、案内されたソファーに腰掛けた。


「さて……先程は私も舞い上がってしまって申し訳ないね。ではいきなりなんだけど、君達がこの旅で見た事、知った事、そして得たものを私に話してくれないか?」


俺達は今回の旅での出来事をなるべく完結に、且つ漏らす事無く伝えた。

こういう場合、理路整然と説明出来るのが茜だったので、この場では任せてしまった。

俺達はというと、たまに補足説明を加える程度だった。


「成程……いや……これは中々に情報量が多いね……まさかグランルゴの現状がそんな事になっていたとは……」


「そんだけの事が起こっているってのに、ここ全く情報が流れて来ねぇなんて……。情報統制がスゲェな…」


村長とユウは、俺達が話した出来事を消化しきれずにいた。


「だが……グランルゴの地下深くに巨大な神社が存在していたというのは、思わぬ収穫だったね。しかも、ちょっとやそっとの攻撃じゃ傷一つ付けられないという……これは朗報かもしれない」


「朗報?」


「傷一つ付かないという事は、つまりは現状すぐに破壊されたりする事は無いとも言える。つまり轟狐達による2つの世界の崩壊までに若干の猶予が生まれたという事だ。まぁ悠長にはしていられないと思うけど」


成程、そういう意味では今回の神社の発見は、俺達が思っていた以上に明るいニュースだという訳だ。

しかも今は、POST支部の管理下にあり、簡単に落とされる様な事は無さそうだ。


「しかも今回発見した神社以外にも、もしかしたら一般的には認知されていない神社が存在する可能性がる」


「他に……ですか?」


「今、私の手元には無いが、この世界に存在する神社を記した書物があってね。一般的には全ての神社が記されているという事になっているが、今回の発見でそれが崩れたという事になる」


「あの神社が、その書物に載ってなかったって事ですが?」


「あぁ、著者が神社の存在を知らなかったのか、敢えて意図的に記さなかったのかは分かりかねるけどね」


村長さんの言う通り、他にも書物に記されていない神社がどこかに存在するとしたら、俺達は轟狐の連中よりも先に見つける必要性が出てくる。

今回の様に異常な耐久性をもつ神社であれば問題無いが、他の神社がそうとも限らない。

実際、今回発見した神社に関しても、ゲンガ一派の連中たちは神社の存在を把握しており、その破壊活動をさせていた事を考えると、神社が破壊されていた可能性もあった訳だ。


「こりゃあ一気にやる事が増えて来たな。轟狐の連中を説得しつつ、どこにあるかも分からねえ神社の捜索もしなきゃなんねぇなんて……」


駿はうんざりした顔で天井を見上げた。


「でも隠し神社を探そうとしても、どこにあるのか見当もついてないんだし、結局今まで通り轟狐の説得に専念した方が良くない?」


確かに茜の言う通り、先に見つかっていない神社を見つけるよりも、先に轟狐をどうにかしなくては、根本的な解決にはならない。


「それもそうだな…仮に探すにしても闇雲に探すんじゃなくて、情報を入手してある程度範囲を絞っていかないと、キリないしな…」


とりあえず未確認神社については後にして、まずは轟狐の説得を最優先にする事にした。


「最後に、今回の旅を経た君達に聞きたい事があるんだけど良いかな?」


「あ、はい…」


「これは正直に言ってくれて構わないよ」


「……?」


「君達……今後も轟狐の説得の旅……やっていけそうだと思うかい?」


村長さんからの質問に俺達は黙りこくってしまった。

みんな一様に険しい顔をしている。みんな恐らく思っている事は一緒だろう。

俺が代表して答えた。


「正直……厳しいと思います。別に轟狐の説得を諦めた訳じゃ無いです。それ自体は続けたいと思っています。でも…今のままではそれが難しいという現実を痛感しました」


「ほほう……例えばどういった点で?」


「今更ですが単純に個々の力不足です。今回は奇跡的に運が見方をして、ゲンガ一派の解散まで繋げる事が出来ましたが、結局、相手の幹部クラスには殆ど太刀打ち出来ませんでしたし、駿は片腕を失っています。…いや、もしかしたらあの状況で片腕で済んだ事自体が奇跡だったのかもしれないですが…。戦闘のプロでも無い俺達が今後も前に進んでいくためには、個々のレベルアップが不可欠だと思っています」


「やっぱり君達が一番よく現状を分かっているようだね。私もこのまま君達を再び旅に行かせる訳にはいかないと思っていた所だったから」


「村長さん……」


「成程…要するに個々のレベルアップと情報収集が出来る環境が必要になってくるという事だね。それも強力な轟狐に太刀打ちできるレベルで……」


「はい……でもそんな事すぐには……」


「いや……一つ私に心当たりがある」


「え…本当ですが!? 一体どんな裏技が…!!」


「はははは、別に裏技なんかじゃないよ! 私が君達を『POST』への所属を推薦する!」


「P…POST!?」


俺達は村長の口から出た、意外な単語に驚きを隠せなかった。

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