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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
184/300

No.184 再臨

「この調子で上昇していけば、後2~3分後には地上に到着する」


ゲンガは上を見上げながら、自分が設計した天然エレベーターに誇らしげであった。

しかし、茜がある事に気付いた。


「ん? なんか足元が濡れてない?」


「足元…? あぁホントだ、水飛沫が木の板の上にかかっちまったのかな」


「そう? 言う程水飛沫は上がってない様に……あれ、これ…」


茜がそっと木の板のある1か所を指差した。なんとその箇所から微量ではあるが、浸水が発生していた。


「え、ちょっ、待って、これ浸水してねぇか!!? 足元が濡れてたのはこれかよ!!」


駿は慌てて浸水箇所を手で塞いだが、すぐに別の個所からも水が漏れだした。


「おい、お前!! これめっちゃ水漏れしてんだけど、大丈夫なのか!!? 上まで持つのかよ!!」


「成程、それはマズイな。元々定員3人を想定して作っていたからね。まぁなんとか大丈夫だろうと思っていたんだけど…」


「なんでそこから『大丈夫だろう』って結論に至るんだよ!! 大丈夫な要素何もねぇだろうが!! 蓮人、このままだと木の板ごと沈むのも時間の問題だぞ!!」


「地上までまだあるし、確かにこのままだとマズイな…」


俺は現状を打破すべく、色々な方法を絞り出そうと頭をフル回転させた。

木の板の穴を塞ぐ…というのは今の状況では難しそうだ。

というかそもそも木の板の質が良くないのか、水を吸い始めており、沈むのは時間の問題だ。

となるとやっぱりここは力業でどうにかするしかない。


「ここは魔石の力を使って、どうにか乗り切る!」


「魔石って…こいつの水の力でどうにかするのか?」


「確かにゲンガが魔石でさっきみたいな力を使えば上には行けるかもしれないけど、その代わりゲンガがガス欠になって足手まといになる。先の事を考えるとここで使わない方が良い」


「いや…あの、うん、まぁ確かに君の言う通りではあるんだけど、なんだろう…なんかムカつくな」


どうやら俺の物言いに若干傷付いたらしく、拗ねてしまった。

だが、ここでゲンガをへばらせる訳には絶対に行かなかった。

となると、やはり残された方法はこれしかない。


「俺と駿で、魔石を使って爆風を発生させて、一気に上までいくぞ」


「あー結局それかよー…でも仕方ないか」


駿も心の何処かで薄々予想はしていたらしく、早々に諦めた様だった。


「って事で良いよな?」


「爆風って…まさかまたあんな無茶をして上に行く気なのか!? いやいやいや、無理だあんな目に合うのは!!」


どうやら以前地下から同じ様に爆風で上がっていったのが、相当トラウマになっているらしく、全力で拒否した。


「そんな事言ったって、仕方ないだろ? それしか方法は無いんだから」


「本当にそれしか無いのか!? 考えるのが面倒くさくてそう言っているだけじゃないだろうね!?」


「そんな事無いって。それに今回は前ほど高さも無いんだし、大丈夫!」


「…君の大丈夫も大概信用ならないよ」


「じゃあお互い様だな。茜とスーナも大丈夫か?」


「それ、このタイミングで聞く? まぁ私は蓮人と駿におまかせします!」


「わ、私も2人を信用してるから!」


「だとさ。これで1対4だけどどうする?」


「…はぁ…分かったよ」


「よし、決まりだな!」


方向性が決まった所で、俺はみんなに上に上がるまでの手順を完結に説明した。


「じゃあ行くぞ!」


俺は水の中に入って木の板の下に潜り込むと、全力で爆風を発生させ、木の板ごとみんなを一気に上まで運んでいった。

しかし、4人ともなると流石に重く、思っていた程上昇はしなかった。


「やっぱり4人いっぺんにはキツイか。駿!! 後は頼んだ!!」


「任せろぉぉ!! 片腕でも舐めんなぁ!!」


誰に言ってるのか分からない台詞を吐きながら駿が下に向かって手をかざすと、俺が放ったものよりも更に凄まじい規模の爆風を巻き起こした。


「うお、すげぇ爆風!!」


俺は爆風で振り落とされない様、必死に木の板にしがみついた。

上を見ると出口らしき木の扉の様な物が見えた。


「よし、このまま突っ切れる!! みんな衝撃に気を付けろ!!」


ここからが俺達の作戦本番だ!

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