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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.18 李家一族

スーナが家に来て2日が経った。

当初は緊張していたスーナもすっかり家族と打ち解けてきた。

俺はというとじいちゃんの部屋に居た。


「二日酔いは大丈夫なのかよ」


「いやーようやく復活してきたとこだ」


「まだ本調子じゃないのかよ。一昨日、どんだけ飲んだんだよ」


「まぁそこについては、昨日ばあさんに散々絞られたとこだ。あんま蒸し返すんじゃねーよ」


「まぁいいや。じゃあ本題に入るぞ。色々と聞きたい事があんだ」


「はは、だろーな」


「まず、一番最初に聞きたいのが、スーナがあっちの世界…イクタ村に帰れるのかって事だ」


「…おめぇ、最初に聞くのがそれなのか?」


「なんだよ、一番大事な所だろ?おかしいかよ」


「いや…おかしかぁねぇ。で、おめぇの質問だが…それはあの嬢ちゃん次第だ」


「どういう事だよ…?」


「…?どういう事もなにも、言ったままの意味だよ」


「だからそこを教えろって言ってんだよ」


「要は嬢ちゃんに帰る意志が無けりゃ、ずっとイクタ村には帰れないっつー事だ」


「スーナが自分の意志でこっちに来た…」


「心当たりが無い訳じゃあるめぇよ」


「……」


俺がこっちに戻ってくるときに、スーナは俺にしがみついていた。

自分で言うのもなんだけど、おそらく俺と別れたくなかったのだろう。

そしてそれがスーナの意志だった…。


「蓮斗、お前は裏の神社については、大体察しが付いてるな…?」


「こっちの世界とあっちの世界を繋ぐ入口…的な?」


「そういうこった。基本的にあの神社を介してじゃないと行来は出来ない」


「それって…誰でも行来出来るもんなのか?」


「いや、そういう訳じゃねー。限られた人間しかダメだ」


限られた人間…? じゃあイクタ村に行った俺は限られた人間の内の一人ってことか…?


「正確に言うなら、俺らだ。お前の父親もそうだな」


「父さんも…?」


「俺のオヤジや俺のじいさんもそうだ」


「…?」


「そう…俺達、李家家はあっちの世界に行くことが出来る唯一の一族なんだよ」


「唯一の一族が、なんで俺達なんだよ!なんで他の人達はダメなんだ?」


「んな事ぁ知らねーよ。そういう風に伝わってんだ」


「なんでだよ、なんでそこフワッとしてんだ!結構大事な所じゃねーの?」


「るせーな、知らねーもんはしょーがねーだろーよ。そういうのはロジの野郎が詳しいだろうから、今度イクタ村行ったときに聞きゃいいんじゃねーの?」


「丸投げしやがった…」


「まぁこの話は置いといてだ。俺達李家家には代々受け継いでる役割がある」


「役割…? なんだよそれ、俺もその内引き継ぐって事か?」


「将来的にはそうなるな」


「将来的にって…。もっと早く教えてくれよ」


「しかたねぇだろ、色々とあんだからよ」


「で、役割ってなんなんだよ?」


「簡単に言うと、神社の守神を担う事だ」


「なんだ、神主様にでもなれってか?」


「まぁ近からず遠からずって所だな。まぁ正確に言うなら、こっちの世界とあっちの世界を繋ぐ入口の番人ってとこだ」


「番人…?」


「そうだ、如何なる人間も入口に入れてはならねぇっつー使命がある」


「どういう事だよ。じゃあなんの為の入口なんだよ。んなもん塞いじゃえばいいんじゃないのか?」


「うるせーな、1000年も前に決まった事だ。詳細なんざ俺が知るかよ」


「1000年も…!? うちってそんなに由緒正しき家系だったのかよ…」


「っつっても、あんまり表立った役割でもねぇんだけどよ」


「なんだよ、入り口を守る番人なんだろ? 門番みたく、入り口で立ってるとかそういうのじゃないの?」


「バカヤロー、んなわけねぇだろうが。365日ずっと神社に居ろってか? 呪いじゃねーか」


「まぁそっか…。じゃあ具体的に何すんだよ?」


「なぁに、簡単なこった。ただ生きてりゃいい」


「生きてりゃっ…?」


「そう、一族の人間の命そのものが入り口の鍵になってやがんだ」


「じゃあ俺が何度もあっちの世界に行けた事や、他の人間が行けない事とか、スーナがこっちに来れたのは…」


「理解できたみてぇだな。つまり、おめぇ自身が入り口の鍵だから、あっちの世界に行けたし、スーナちゃんがこっちに来れたのも、お前という鍵が一緒に居たからだ」


「俺自身が入り口の鍵…って事は、俺がスーナを巻き込んじまったのか…」


「それはおめぇ、自分で言ってたろ?スーナちゃんが自分の意志でこっちに来たって」


「それは…」


「心配すんのも結構だけどよ、スーナちゃんの意志も少しは汲み取ってやんな」


「スーナの意志…」


「さぁ今日はもう終ぇだ。俺が長話すんの好きじゃねぇって知ってんだろう?」


「おい、ちょっとまだ話が終わって…」


「あんまり焦って全てを知ろうとすんな。目の前にある大事なもんを見落とす事になんぞ」


そう言うとじいちゃんは、部屋から出て行ってしまった。

話疲れると、途中だろうがなんだろうがぶった切ってしまうという悪名高い癖だ。


じいちゃんの話で分かった事は、

①スーナが帰れるかどうかは、スーナの意志次第

②2つの世界への行来は、俺達一族のみ許される。

③但し、今回のように俺達一族を介することで、他の人間も行来が可能になる

って所か。


①は…あくまでスーナの意志の話だ。帰れるのか帰れないの話とは直接関係ない。俺の質問の意図とは若干ズレてる気がするけど、まぁそれは一旦置いとこう。

②と③に関しては、俺が2つの世界の行来をしてることやスーナやミー、ミミ達が俺と一緒にこっちの世界に来ちまった事を考えるとまぁ納得は出来る。

前に、村長さんが「過去にイクタ村に来た日本人は過去に二人だけ」って言ってたのも、俺達一族しか行来出来ないのが関係してんだろう。


だけど、ひとつだけ納得がいかない事がある。

仮に俺自身があっちの世界を行来出来る鍵だったとしたら、なんで今まで行けなかったんだ?

初めてイクタ村に行った以前も俺は頻繁に神社に行ってた。

なんであのタイミングだったんだ?

他に条件が…絶対あるな。

そしてその部分に関しては、じいちゃんは何も言っていない。

何がトリガーだったんだろうか?


…うーん、ダメだ分からん!

とりあえず、今日は情報整理だけして考えるのはやめよう。

もっと頭がスッキリした状態でまた考えよう。


「蓮斗~!庭の草むしりしてくれないかしら!すっかり伸びきっちゃってて」


ふぅ…頭空っぽにするにはうってつけの作業だな。


「今行くよー」


多分、今までで一番晴れやかな気分で俺は草むしりをすべく、庭へ向かった。


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