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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
175/300

No.175 脱出

「あいつ…血まみれの黒焦げになっても平然としてる…化物か!?」


その風体はまさしく化物と呼ぶに相応しかった。


「言っただろう? 僕は打たれ強いのさ♪」


「いや、もう打たれ強いとかいう次元を超えてるでしょ…!」


一方、銀髪の男も腕を失いながらもすぐに立ち上がった。


「成程…てめぇとやり合う以上、五体満足じゃあ済まねぇって事かぁ…」


「そういう事だね。とは言え僕もかなりのダメージを負っている。この後のデザートも控えている事だし、そろそろ締めに入らせてもらうよ?」


「てめぇにとっちゃあ…これが最期の晩餐だろぉ!?」


「…つまらない冗談はやめてくれよ」


次の瞬間、再び二人の激しい攻防が始まった。

戦いの激しさは先程より数段強くなっており、周りの壁やら床やらがどんどん崩れ始めていた。

時折天井から石の破片らしきものも降ってきている。


「蓮人、ずっとここに居るのやばくない? あいつらの戦いでどんどん闘技場が損傷していってる。ここが崩れ落ちるのも時間の問題かも…!」


「分かってる…闘技場が崩れるにせよあいつらの戦いが先に終わるにせよ…ここに留まっていれば全員が死ぬ事も…ただ、今闇雲に脱出しようとすればあいつらに狙い撃ちにされて終わりだ」


「だよね…でも…」


「ただ…あいつら…特に銀髪の男は戦いの中で恐らくかなり体力を消耗している。どうにか時間を稼いで、闘技場が崩落するギリギリを見極めれば、俺達にも勝機はあるハズだ」


「賭け…だね」


「まぁな」


俺は精いっぱいの痩せ我慢の笑顔をしてみせたが、余程ひどい笑顔だったのか茜とスーナに笑われてしまった。


「ふふふ、レン君無理してるのバレバレだよ」


「あ…いや…まぁ」


「大丈夫だよ、私達はレン君の事信じてるから!」


「いやー…逆にプレッシャーだなそれ…」


事実、俺の判断にみんなの命運がかかっている状況だった。

やがて闘技場の崩落が加速していき、土埃で一気に視界が悪くなってきた。


「もうちょっと…あともう少し……」


そしてこれまでの戦闘の中で一番デカい攻撃が放たれたらしく、衝撃音と共に闘技場全体が一気に崩壊し始めた。


「闘技場ごと潰れやがれぇ!!!」


どうやら銀髪の男の攻撃だった様だ。

俺は直感で今、このタイミングが脱出の時だと感じ、全身の魔力を放出し、瓦礫で徐々に塞がりつつある出口目掛けて吹っ飛んで行った。


「よし、行ける……!!!」


そう直感したのも束の間、突然背中に何か衝撃と痛みが走ったかと思うと、そのまま地面に叩きつけられた。


「なん…だ…!!?」


辺りを見渡すと、俺とスーナが叩きつけられた場所のすぐ後ろで茜と駿がマリアに踏みつけられていた。


「茜!! 駿!!」


「ごめん…蓮人、しくった…」


マリアに踏みつけられ、息苦しそうに茜が呟いた。

戦いに集中しているのだとばかり思っていたが、こちらの動きも完全に把握していたらしく、完全に手のひらの上で踊らされていた形になった。


「おいおい…君達がこそこそと企んでいたのに気付かなかったとでも…?? 僕はどんなに満腹になっていてもデザートは必ず頂く主義でね……絶対に君達を逃がしはしないよ…!」


「くそ……!!」


これは完全に逃げれそうに無い…流石に終わったか…そう思った時、駿が微かに動いたのが見えた。


「おや…? 君まだ生きていたのか…とっくにくたばったのかと思ったよ」


「…い…て…ぇ………そ…こを……………っ……しっ………か……?」


「……何だって……??」


「てめぇ……窮鼠猫を……嚙む…って言葉……知ってるか……?」


「……それは君の遺言か何か」


マリアが駿のよく分からない問いに答えきる直前に、駿が放った風の斬撃がマリアの右足を切断した。


「………!!!? えっ……!!?」


その瞬間、何が起きたのか状況を掴めなかったのか、マリアは目を真ん丸に見開き、そのままバランスを崩してその場に倒れこんだ。


「あがね…俺にづかまれ……!!!」


息も絶え絶えに茜に自分の胴を掴ませると、駿は俺がやったのと同じように全身全霊を込めて魔力を解き放ち、巨大な爆風を巻き起こした。


「蓮人ぉ、ズーナちゃん…お前らも…!!!」


「!!」


俺はスーナを抱えながら駿に掴まり、そのまま出口の方に突っ込んで行った。


「よくも…よくもこの僕の足をぉぉぉぉ!!! 許さんぞ、糞餓鬼共ぉぉぉぉぉぉ!!!!」


マリアの激高した叫び声を背中に受けながら、ようやく俺達は全員で闘技場を脱出する事に成功した。

メーとディックの犠牲を払いながらではあったが。

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