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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
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No.172 死神

茜がぶち込んだ腹部をさすりながら、客席からむくりと起き上がって来た。


「いやぁ…結構効いたぁ。随分と重いパンチとは思えない威力だったよ。あばら骨、1本位やられちゃったかもな♪ 君、本当に女の子かい??」


「そういう発言、今は叩かれるから止めときなよ。それに大して効いてる様には見えないんだけど…」


「そんな事ないよぉ、僕にこんな痛みを味わせたのはひっさびさだもの♪ いいよぉこの痛み、生きてるって感じがしてさぁ♪」


「…蓮人、多分今の攻撃って二度は通用しないよね?」


「多分…」


「だよねぇ~…」


「とりあえず、俺があいつの注意を引き付けて隙を作るから、そこをすかさず突いてくれ」


「…分かった、結構責任重大だね」


「今の俺達にとって、茜が一番の攻撃の要だからな。頼んだ」


「ちょっとあんまりプレッシャー掛けないでよ」


俺は残り少ない魔力で闘技場全体にそよ風を発生させた。


「二人でお喋りしてないで…僕も仲間に入れてよぉ」


男は何やら攻撃を繰り出す構えをした。

すると先程放ったそよ風が僅かに揺らぐのを感じ取った。


「来るっ!!」


俺は寸前の所で、先程駿の右腕を切り落とした斬撃を躱した。


「…避けたぁ…!?」


余程自信のある攻撃だったのか、僅かに動揺しているのが分かった。

再び男は距離を取った状態から斬撃を放ったが、こちらも俺はギリギリで躱し続けた。


「…なんで当たらない……? さっきの防御といい、君、何者……?」


先程まで不気味な笑顔をずっとしていた男の表情から、余裕が消えていた。

しかし、茜が攻撃に転ずるに至る程の隙を作るには、まだまだ程通り状況だった。


「もっと積極的に行くか…!」


俺は男の懐目掛けて突っ込んで行った。


「ははは、いい度胸だねぇ!! いいよ、迎え撃つ!!」


男の目の前まで突っ込んで行くと、俺は敢えて直前で地面を蹴って、後方ジャンプで宙に浮いた状態になった。


「え、蓮人、そんな事したら…!!」


「ははは、体の動かし方でも間違えたいかい!? 宙じゃ身動き取れないよぉ!!?」


男は一瞬のチャンスを逃さず、すかさず俺に向かって斬撃を飛ばして来た。


「んなもん…」


俺はそよ風を切り裂く音を聴き、斬撃が向かってくる方向を察ちし、斬撃を躱しつつドンピシャで鎖鎌の様な物体を掴んだ。


「なっ…!?」


男は自らの武器を、相手に捕捉されるという予想外の出来事に、一瞬パニックになっていた。


「位置さえ分かりゃあ何でもないんだよ!!!」


俺はそのまま男の鎖鎌を思いっきりこちらに引っ張ると、それに引きずられて男まで吹っ飛んできた。

そして俺は鎖鎌の鎖をグイっと引っ張り、男はそのまま闘技場の壁に叩き付けられた。


「蓮人、なんでアイツの攻撃の位置が分かったの?」


「闘技場全体に微量の風を発生させておいた。こうする事によって相手が何か動きを取ったとしても、風の揺らぎで素早く動きを察知できる戦法だ」


「いや…簡単に言うけど、いつの間にそんな戦い方覚えたの?」


「イクタ村の村長さんにちょっと。正直野外だと風が拡散しちゃって使えないんだけど、室内だと風の逃げ場が限られるから、効果を発揮してくれる」


「へぇー」


やがてガラガラと音を立てながら、男はむくりと立ち上がった。


「いやぁ…参ったね。僕のこの武器を素手で掴んだ奴なんて君が初めてだよ♪」


「そりゃどうも…っていうかどんだけ打たれ強いんだよこいつ!」


「僕は攻撃も好きだけど、相手の攻撃を食らって痛みを味わう事も同じ位好きなんだよ。そうやって相手の攻撃を受け続けていく内にどんどん打たれ強くなっちゃってね♪」


「…マジでなんだこの変態…」


とは言え、この男の打たれ強さは尋常じゃない。このまま俺がチマチマと攻撃を続けても俺達の体力が尽きるのが先だ。そうなったら今治療中の駿は勿論、俺達全員殺されてしまう。

やっぱり茜の攻撃を何度も何度もぶつけていくしかない…!


「もう一回行く! 茜も頼む!」


「分かった!」


そうして俺が再び動き出そうとした時、突然背後の方で爆発が起こった。


「何が…!!?」


振り向くと砂埃に覆われているが、壁に大きな穴が空いているのが確認できた。ふと、駿とスーナの姿が見えない事に気付いた。


「おい、駿、スーナぁ!!」


すると砂埃りの中に蠢く影が見えた。やがて砂埃りから駿を担いだスーナが現れた。


「大丈夫か!?」


「うん…なんとか…。シュン君も無事だよ」


「そっか…良かった…! にしてもなんなんだこの爆発…俺とあの変態が何度叩き付けられても殆ど傷が付かなかった壁にこんな穴を空けるなんて……」


穴が空いた壁の断面を見ると焦げた様な跡が残っていた。


「…一体どこのどいつだい。この僕が命の次に大事にしている闘技場の壁に穴を空けやがった愚か者は…?」


すると壁の向こう側から何かが放り込まれ、それが闘技場の床を転がって行った。

いち早くそれを確認した茜が声にならない悲鳴を上げた。


「っ……えっっ……!!? そん…な……メー……ディック……?」


茜の声を聞いて俺も確認すると、それは変わり果てた姿となったメーとディック……の丸焦げた頭部だった。


「お…おい……ふざけんなよ………なんだよ…それ………話が違ぇじゃねぇかよ………」


駿は呆然した様子でメーとディックの亡骸を見つめていた。


「って事はこの爆発………まさか……」


後ろからコツコツと足音が近付いて来た。


「はぁ……はぁ……全くふざけた真似しやがってよぉ……無駄な体力使わせんなやぁ……!」


その声の主は、ついさっきまで俺達が対峙していた銀髪の男だった。

※明日から一週間程休載します。

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