No.168 水の華
「何言ってんだ!! お前らわざわざ殺される気か!?」
駿は激高していた。
「…別に俺達は自殺する訳じゃない…お前の言っていた『償い』とやらを果たすと言っているんだ」
「俺達の盾になって死ぬことが償い!? ふざけんな、そんなの認めねぇぞ俺は!! そんな事させる為に生かした訳じゃねぇ!!」
「黙れ餓鬼が…お前の言う償いが何を指すのかは知らんが……これが俺達なりの償いだ…とやかく言われる筋合いはねぇ…」
そうこうしている内に銀髪の男に追いつかれてしまった。相変わらず不気味な青白い炎を出鱈目にまき散らしている。
「…? てめぇらこんな所で何してやがる…なんで俺の前に立ち塞がりやがる…!!」
銀髪の男は、どうやらメーとディックが俺達と一緒に行動していた事に今気づいた様だった。
「正直あんたに恨みはねぇが…暫し足止めさせてもらう…」
「足止めったって、一体どうするの!? あんなチートアイテム作り出したあんた達が一番分かってんじゃないの!? 止めるなんて無理だって事に…!!」
「何か勘違いしてねぇか? 足止めするとは言ったが…無駄死にするだなんて一言も言ってねぇ……科学者ってのは、何か兵器や危険物を作り出した時は、同時にそれを抑止する存在も用意しているものだ…」
「抑止力って…あれに贖う手段があるって事…?」
「いいから行けっつってんだろうが!! 足を止めてんじゃねぇ!! お前達こそ俺達を無駄死にさせる気か!!?」
俺はメーとディックの真剣な眼差しを見た時、それに対して何か反論をする事が出来なかった。
「…分かった」
一言そう呟いて再び歩みを進める事が精一杯だった。
「お、オイ蓮人!」
やはり駿は納得できていない様子だった。どうやら生きてこその償いだという考えがある様だったが…。
「あれがあいつらなりの…俺達への回答なんだ…行くぞ…!」
「………うん」
様々な感情や言い分もあったろうが、それを一旦飲み込み、駿なりに踏ん切りをつけたかの様に苦しそうな返事が帰って来た。
「…それで良い」
メーが僅かににやりとした笑みを浮かべると、懐から魔石を取り出した。
「なぁ…話は済んだかぁ!? 空気を読んでここで待ってた訳だが…もう攻撃再開して良いよなぁ!!!?」
一旦収まっていた青白い炎が銀髪の男の咆哮と共に、再び巨大な火柱と化して辺りを包んだ。
「さぁて…ゲンガ様の魔石の欠片から抽出して作った試作品…初お披露目だな…」
「しくじるなよ…メー」
「ぶっつけ本番なんだ、多少のミスは勘弁しろよ…」
そう言うと、メーは何やらイメージを行うと手に持った魔石からみるみる内に巨大な水の玉が発生した。
「水!?」
そして巨大な水の玉から突如、無数の水の槍が発射された。
「水如きで俺の炎が止められるかよぉ!!」
銀髪の男が炎で水の槍を握りつぶそうとしたが、水の槍に触れた途端、
バシュウウウゥゥ!!!
青白い炎が一瞬で消滅してしまった。
「……!!? 炎が消し飛んだ」
「ただの水で消せねぇ事知ってんだよ…」
メーは再び集中して、イメージを浮かべると今度は水の玉が花の蕾の様な姿に変形していった。
「…花…!?」
銀髪の男が急いで消滅した炎を再生しようとするが、何故か消滅した部分の炎が再生しなかった。
「なんで炎が出せねぇ!!? てめぇら一旦何をしやがったぁぁぁ!!?」
その問いに答える事無く、メーはイメージに集中し、やがて水の蕾が綺麗な一輪の花を咲かせた。
「狂い咲け、水蓮花っ!!!」
メーの咆哮と共に大量の綺麗な水の花びらが舞い、やがて一気に銀髪の男を包み込んでしまった。
「がはっ!!?」
無数の水の花びらは銀髪の男の炎を全て消し去ってしまった所か、大量の切り傷をお見舞いした。
銀髪の男は、予想外の攻撃でその場に倒れてしまった。
「おい、アイツらすげぇぞ!! これなら心配ねぇ!!」
駿はまるで自分の事の様にはしゃいでいた。
「…悪いな…生憎こちとら重症人なんでね…傷が開く前にケリ付けさせてもらうぜ」




