No.166 青白い炎の男
「おい、蓮人…あいつって…」
駿もあの男の顔を見て思い出したのか、慌てて俺に尋ねてきた。
「うん…あのおっさんを一瞬で消し去ったやばい奴だな…。くっそ、いきなり出くわすとは…」
「どうする蓮人? 状況的にも相手の実力的にも、とてもじゃないけど逃げ切れる相手じゃ無さそうだよ」
「戦う…っつっても、スーナ達を庇いながらの戦闘は流石にキツイな。俺も駿も魔力が殆ど尽きちまってるしな…」
…と言いつつも茜の言う通り、炎に取り囲まれたこの状況下であの男の攻撃を避けながら逃げ切るのは絶望的だった。
かと言って相手に見つかっている以上、不意打ちをかますのも不可能に近い。
何よりまず、相手の能力の全容が分かっていないのがキツい。
把握しているのは、①直接相手の体に触れて消し去る、②青い炎をコインに閉じ込めて、暴発させる。
①が接近戦用、②が遠距離戦用って所か。他に能力や技は…無い可能性の方が圧倒的に低いな…。
「駿、茜、スーナ、時間が無い。今から俺の言う事を聞いてくれ」
駿達は何も言わず、黙って頷いて俺の話に耳を傾けた。
「あらぁ? もしかして諦めちゃったのかぁ?」
例の銀髪をなびかせ、薄気味悪い笑みを浮かべながら近付いて来る。
「なんだか拍子抜けって感じだけど…まぁそれならそれで楽だし良いかぁ」
いよいよ銀髪の男は、顔がはっきりと見える位置まで近付いて来た。一見温厚そうに見えるが、氷の様に凍てついた様な瞳からは不気味な雰囲気を漂わせていた。
「それじゃ頼むっ!!」
俺はまず正面から銀髪の男に向かって突っ込んで行った。
「自棄でも起こしたかぁ? まぁいいや、まずはお前から…」
そうして銀髪の男はすかさず右手を俺の顔目掛けてかざしてきた。
その瞬間俺は、足の力を抜き、銀髪の男の視界から一瞬姿を消した。
「おぉ!?」
ほんの一瞬だが、銀髪の男が隙を見せた所をすかさず、足目掛けてけたぐりをお見舞いした。
「んだぁ…!?」
しかし見かけによらず、恐ろしく体幹が強く、銀髪の男は余裕で耐えて見せた。
「残念、チェックメイトだぁ…」
銀髪の男が再び俺の顔目掛けて、右手をかざそうとした次の瞬間、俺が攻撃を仕掛けていた間に背後に回り込んでいた駿が最後の力を振り絞って起こした爆風の推進力を利用して、思いっきり銀髪の男の背中にタックルして見せた。
「っ……!?」
さっきは余裕で耐えて見せたが、駿の攻撃に対しては流石に耐えきれなかったのか、その場で足を付いた。
「やってくれんじゃないかよぉ…」
今度は駿目掛けて右手をかざしてこようとした時、銀髪の男の真横で茜が待ってましたと言わんばかりに構えの体勢に入っていた。
「残念、もう一発♪」
「もう一匹…!?」
そのまま腰を深く落とし、魔石の爆風に乗せた超強力な正拳突きを銀髪の男にお見舞いした。
「っぐふぅっっ!!!」
そのまま茜の正拳突きと爆風の勢いに乗って、周りを囲っていた青白い炎を突き抜けて壁に叩き付けられた。
「よっし、ぶっつけだったけど上手くいった」
俺達が直前に立てた作戦はこうだった。
まず俺が正面から銀髪の男に向かって行き、相手の視界を塞ぐ。
こうする事で駿と茜が右側から回り込んで行く事を気付きにくくする。
後は、相手の注意を引き付けつつ、ギリギリのタイミングで攻撃を入れる。
こうして相手は完全に俺に注視する事になり、周りへの警戒が若干おろそかになる。
そして今度は駿が魔石の力で茜を上方に飛ばしつつ、背後に回る。
もしかしたら風の流れを感じ取って、気付かれるかとも思ったが、見事に駿のタックルの方が奴を上回った。
背後から攻撃をされた銀髪の男は当然後ろを振り返り、敵の確認に全力を挙げる。
風のイメージを拳に込めながら落下してくる茜が上方にいるとも知らずに…。
最後は完全に無防備になった奴の横腹にメインディッシュの攻撃をぶち込めば、作戦成功という訳だ。
「あ…茜の攻撃おっかねぇ……!!」
同級生女子の攻撃を目の当たりにして、駿は完全にひきつってしまっていた。
というつつ、俺も予想以上の一撃に少しビビってしまった。
「やった…のかな? 一応、手ごたえはあったっぽいけど…」
「なんとも言えないな…効いてるとは思うけど…」
「よし、じゃあトドメ差しに行くか!?」
「いや、今の連携は相手が初見である事、俺達に対して完全に油断し切っていたから成功した攻撃だ。多分、二度目は通用しないし、返り討ちにあう可能性が高い」
「そりゃそうかもしれねぇけど…ってアレ、あの野郎が吹き飛んだ拍子に消し飛んだ青い炎の壁が消えたままだ!」
「ホントだ…でもなんで…いや、何にせよそこから抜けれる! みんなアイツが起き上がる前に、急いで抜け出そう!」
こうして俺達は気絶しているメーとディックを抱えてどうにか青白い炎の壁を抜けて、脱出する事が出来きた。
そのまま歩みを止めず、ゲンガがいるであろう部屋を目指し、再び先に進んで行った。
後ろから狂気が迫って来る事も知らずに…。




