No.162 卒爾
無事に轟狐の男を上まで届けるという任務を遂行した茜は、やがて力尽きる様に地面目掛けて落下してきた。
先程から大量の魔力を消費している駿に負担をかける訳にはいかなかったので、今度は俺が茜に向かって風を吹き付けた。
タイミングよく茜の落下スピードを相殺すると、ゆっくりと落下してきた茜を両手でなんとかキャッチした。
「ふぅ…任務お疲れさん」
「いやーやっぱし、落ちる時の浮遊感は怖いわ」
俺の手から降りると、茜は思いっきり体を伸ばした。どうやら特に怪我等はしていない様だ。
一方の駿は魔力を使い果たしたのか、地面に突っ伏していた。
「駿もお疲れさん。立てるか?」
「お…う…なんとか…」
そういって駿はどうにかこうにか体を起こした。
「はぁ…魔力を使い果たすと、こんなに身体に影響が出るんだなぁ…」
「それも急に使い切ったからな。体がついていかなかったんだろう」
そう言いながら、俺は轟狐の男を吹っ飛ばした、天井の大穴を見つめていた。
「さて…今度は俺達がどうやって上に行くかだよなぁ…」
「そうだよ、肝心の俺達が上に上がる方法がねぇじゃん!」
「いや、駿それ今更でしょ。でも確かにどうしようね。私達は兎も角、スーナちゃんやあの重症の二人がいる以上、さっきみたいな無茶は出来ないし」
茜の言う通り、人ひとりを上にあげるとは訳が違うし、難易度は段違いだ。いやまぁさっきの方法もだいぶ無茶は無茶だったが…。
「マジかぁ…じゃあここから出る手段は断たれちまったって事かよぉ~!!」
確かに状況は最悪だ。どうにかこの状況を打破する方法を考えないと…。
あれこれ考えていると、スーナは遠くの方をじっと見つめていて、やがて見つめていた方に歩いて行った。
「スーナ? どうした急に歩き出して」
「あ、あのぅ…」
スーナは少し困った様な顔をしながら指差す先に、信じられないものが存在していた。
「ここに…階段みたいのがあるんだけど…」
スーナが指差す先にあったのは、紛れもなく階段そのものだった。
「えぇぇぇぇ、そんな所に階段あったんかいぃぃぃ!!!」
駿がやや耳障りレベルの絶叫で驚いたが、無理もない。
俺の記憶が正しければ、最初ここに来た時に、その様な階段は無かったからである。
「よく見て…薄い壁に覆われていたのが、ここでの衝撃で崩れて出てきたっぽいよ」
茜の言う通り、階段の入り口付近には、壁の破片らしきものが散乱していた。
「そうだよね、地下にこんな馬鹿デカい闘技場があるって事は、それと地上を繋ぐ階段なり通路があるのが普通だよね」
「茜の言う通りだな。わざわざ壁で隠す意図はよく分からないけど」
「蓮人、どうする? もしかしたら罠って可能性もあるけど…」
一瞬、迷ったがすぐに答えを出した。
「いや、行こう! どうせここに居ても何も出来ないし、その内瓦礫の下になっちまう位なら、罠を蹴散らして行った方がマシだ」
「じゃ決まりね。ホラ、駿も行くよ! 勿論、そこでのびてる二人はあんたが担いでくんだからね」
「いやいや、お前ら鬼かよ!! せめて一人位お前らが…」
「分かったよ、仕方ないな」
俺はディックを片手で担ぎ、魔力が戻りきっていないスーナを背負う事になった。
結局、俺が一番大変なのではとも思ったが、口に出した所で何も解決しなさそうだったので、黙っていた。
そして俺達はどこに繋がっているのかも分からない階段を黙々と進んでいった。




