No.153 Under Ground Stadium
こんな地下に何故この様な闘技場が存在するのか俺には全く分からなかった。
見た感じ造りとしては、ほぼ石造りとなっており、所々石が崩れている箇所もある事から、かなり古くからあるものだと推測できた。
「なんだよここ…なんでこんな地下深くにこんな施設があるんだよ…」
「ごめん駿、その台詞モノローグでもう言った」
「いや知るかよ! だったら声出して言えよ!」
「私達…さっきの轟狐に嵌められたのかな?」
「どうだろう…さっきの崩落自体は、あのデカいのが攻撃したせいっぽいけど…。いや、あのデカいのとあの轟狐が繋がってる可能性も排除できないか…」
すると上から何か降ってくる音が聞こえてきた。
「なんだ、また瓦礫か!?」
俺達は身構えて上を見上げると、それはよく見ると人である事が分かった。
「…! さっきの轟狐!?」
そのまま青年轟狐は、誰にも受け止められる事無く地面に激突した。
当然というべきか、地面に墜落した青年轟狐はピクリとも動かなかった。
「あれ…これ完全に死んだんじゃないの…?」
「う…ん…絶対死んだねぇ…」
あれ程駿は誰も殺さずに轟狐の連中に罪を償わせると言ったばかりだったので、俺は駿になんて声を掛けて良いか分からなかった。
しかし俺達は次の瞬間、信じられない光景を目の当たりにした。
「う…全くガルダの奴…僕の部屋まで壊すなんて…」
なんとこれ程の高さから落ちて、地面にもろに激突したのにも関わらず、「はーやれやれ」みたいな感じで立ち上がった。いや、マジで信じられないんだけど。
「ぎゃぁぁぁ、死んで速攻でゾンビ化したぁぁぁ!!」
「…いやいや、勝手に殺さないでよ。この通り生きてるので」
「じゃあキョンシーだぁぁぁぁぁ!!」
「いや、相変わらず死んでるよね。生きてるって言ってるでしょ」
「…って事は…アンデッドか…!?」
「君、どんだけ僕の生存を認めたくないの? 動揺し過ぎだから」
「だ、だ、だ、だ、だってこの高さから落ちて生きてる訳ねぇだろ!!?」
確かに駿の言う通り、この高さから落ちてほぼ無傷ってのは信じ難い。何か魔石の力を使ったのか…?
いや、落ちる時は何もしている様子はなかったし、ダイレクトに地面に激突した様にしか見えなかった。
それよりも俺が気になったのは、この人の今の言葉…。
「あー…こう見えて僕、かなり頑丈なんだ。この程度の高さから落ちた位じゃ死んだりしないよ」
「この程度…」
とりあえずこの人のいう『この程度』と、俺達の『この程度』の尺度には、天と地の差があるみたいだ。
「っつーかお前、あの通路速攻で崩れたじゃねーか! 俺達を騙してこの訳分からん場所に閉じ込めようとしたんじゃねぇだろうな!」
「そんな訳ないでしょ。あの通路は正真正銘外へと繋がるもの。本来なら君達は今頃外へ逃げれたハズだよ。僕も、ガルダの見境無しの攻撃から身を守る為にあの通路を使って避難する予定だったのに、見事に巻き込まれてこの様さ…」
「なんだ…お前もあのデカいのの巻き沿い食らったのか。ホントに見境無く破壊してんのな。ゲンガに殺されねぇのか?」
「はは…多分アジトが多少壊れようとも気にしないんじゃないかな…」
「いや普通気にするだろ! どんだけこのアジトに興味ねぇんだよ!!」
「そんなもんだよ、あの人は…」
「…?」
下っ端という割には、やけにゲンガの事を親しそうに話しているな。先程の驚異的な頑丈さといい、イマイチこの轟狐の事が掴めない。
「まずはここを出ようぜ! 出口は何処にある…」
ドガァァァァン!!!
「なんだなんだ、またなんか落っこちて来たのか!?」
土埃で良く見えないが、そのシルエットから相手の正体を察するのに時間はかからなかった。
「見つけたぜぇ…冥土の前の冒険は済んだかぁ…?」
奴だっ…!!
※次の更新は2月26日(金)の夜頃となります。




