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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
151/300

No.151 鞠問

日付け越えてしまいました。

すみません。

目の前にいる青年はやや痩せ型で、どう考えてもゲンガのアジトに似つかわしく無い雰囲気を醸し出していた。人質か何かでここに閉じ込められているのだろうが。


「き…君達は…? 見た所ここの人間じゃなさそうだけど…」


青年はおどおどとしながら聞いて来た。さて、どこまで話していいものなのだろう。相手の正体がよく分からない限り、余計な事は喋れない。


「おう、俺達ここのアジト制圧して、ゲンガとかいう奴を説得しに来たんだけど、そいつどこに居るか知らねぇか」


駿は俺の憂慮はどこ吹く風といった感じで単刀直入に聞いてしまった。バカなのかこいつは。


「こ…ここを制圧して、説得する…? え…なんの為に…」


かなり臆病な性格なのだろうか、駿の言葉を聞いて明らかにビビりまくっていた。


「…随分と物騒な事を考えてるんだね…じゃあ僕も殺されるって事かい…?」


「んな事する訳ねぇだろ! 俺達は快楽殺人者じゃねーんだ! 罪を償わせるだけだ」


「罪滅ぼし…」


「そうだ文句あるか?」


「あー…駿、ちょっと黙っててくれる? 話進まないから。蓮人、この際だからこの人に全部ちゃんと話しちゃおう」


「茜まで…。俺達の計画ってそんな簡単に喋って良いもんじゃないだろ?」


「私だってホントはそう思うけど、もう駿が中途半端に喋っちゃってるし今更でしょ? それに変に話が伝わってややこしくするよりは目的をはっきり伝えた方が良いと思う。さっき駿も言ってたけど、私達の目的はあくまで無血開城だって」


「はぁ…全く駿のアホ…」


気は進まなかったが、俺はこの青年に俺達の目的、その理由を全て話した。


「はぁ…つまり我々の行動が世界全体…そしてあなた達の世界の崩壊を防ぐ為に旅していると…」


「そう。っていうか世界に散らばる神社を破壊する事が、崩壊に繋がる事ってこと、知ってるんだろ?」


「…うん、知ってるよ。って言っても、その事実を把握しているのは轟狐の中でも上部のごく一部だけだけどね…」


「ふーん…じゃあなんでお前が知ってんだ?」


「…あ、いや、上部が会話しているのを聞いてたから…」


どうやら、轟狐の連中の大部分は世界崩壊の危機に自ら足を踏み込もうとしている事を知らずに、破壊活動をしているらしい。

上手くここにつけいれば、事態が進展するかもしれない。


「で、お前は一体なんなんだ? 轟狐の人間じゃないのか?」


「そうだね…一応轟狐は轟狐だけど…下っ端も下っ端さ…何の権限も無いし、僕を殺しても何の意味も為さないよ…」


本当に轟狐なのかと思う位、気弱そうだし覇気も感じられない奴だ。なんでこんな奴が轟狐に所属しているんだろうか。それともゲンガ達に捕らえられたのか?いや、そんな事をするメリットが見えてこないな。

そんな事を頭をグルグル考えていたが、結局答えは出なかった。


「お前らは…? こいつと知り合いとかじゃないのか?」


俺が問いただすと、メーとディックは人相の悪い目つきで青年を睨んだ。


「知らねぇな…。そもそもこのアジトに居る連中だけで、1000人近く居るんだ。んな一々顔なんか覚えてられっか…」


「なんだ使えない…」


俺はため息をつきながら、二人の方を見た。


「おいてめぇ、俺らが万全の態勢だったら、爆薬で速攻瞬殺してるからな。覚えておけよ」


「お前らこそあんまり挑発的な言葉を吐くなよー。また駿と茜にアジトの中引き摺り回されたいかー?」


「おい止めろ…。死んだ方がマシだ…」





ドゴォォンっ!!!




先程ガルダを吹き飛ばした方角から、何かの爆発音が聞こえてきた。距離的にはそこまで遠くなさそうだ。


「きっとあのデカ物だ! どんだけ頑丈なんだか…」


「逃げましょう。ここにいてもあいつの攻撃で一発でやられる。隠れる事は意味を為さないと思う」


「茜の言う通りだ、あの威力じゃあこの部屋諸共焼き尽くされて終わりだ。一旦ここを出よう!」


俺は部屋の外を覗いた。先程の騒動で轟狐の連中は、そっちの方に気を取られているらしく、こちら側は人の気配が全く無かった。


「よし、今の内に…」


「待って」


急いで逃げようとする俺達を青年轟狐が止めた。


「君達が何処から来たのか知らないけど、そっちから他のフロアに逃げる事は出来ない。逃げるんだったら、こっちだ」


そう言って青年轟狐は床のある一か所を取り外すと、隠し階段が出現した。


「この階段は…?」


「普段僕が使う隠し通路さ。轟狐でも一部の人間しか知らないから、追手が来る事は無いだろう」


「待て待て、なんでそんな事教えてくれんだよ! …まさか罠じゃねぇだろうな?」


駿は疑り深そうに青年轟狐を見た。


「罠じゃないよ。寧ろ君達に部屋の外の通路で動かれると、ガルダの攻撃がこちらにまで振りかかってきかねないからね。あくまで僕の身を守る為の判断だ」


「信じて良いんだな…?」


「だ、大丈夫だって。そんなに怖い顔で睨まないでくれよ…」


青年轟狐は少し怯えた顔で駿の方を見た。少なくとも嘘偽りを言っている様には見えない。


「駿、行こう」


「え、でも蓮人…」


「大丈夫、罠だった時は俺がなんとかする!」


「なんとかって…そんな適当な…!」



ドガァァァァンっ!!!!



再び大きな破壊音が聞こえてきた。さっきより音がだいぶ近い。


「少なくとも今部屋を出るのは止めた方が良さそうね…。思い切ってこの階段を下ってみよう」


「茜まで…」


駿は観念した様に、階段の方に向かって歩いて行った。


「あ、勿論この二人も連れてってよ。ここに居られると僕に火の粉が降りかかりそうで怖いからね…」


「言われなくても、分かってるわ! よし、お前らも行くぞ」


駿はそう言って、また例の如くメーとディックの足を持って引き摺り出した。


「だから、足は持つなっつってんだろうが!! 普通に運べねぇのか! あだだだだだ!!!」


二人の叫びも虚しく、駿と駿に引き摺られた二人は階段の向こうに消えて行った。


「レン君、レン君も早く!」


スーナに促され、俺も階段の方に向かった。


「じゃあ君達も元気で。もうここには戻って来ないでね…」


そう言いながら青年轟狐は本の続きを読み始めた。

俺は軽く頭を下げると、スーナと一緒に階段を降りて行った。



※次の更新は2月21日(日)の夜頃となります。

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