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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
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No.144 メーとディック

「え、待ってこれ、めっちゃ警報なってますけど」


「ねぇ、なんか足音が聞こえて来るんだけど…。ここに向かってきてない?」


「まずい、どうしよう!! と、とりあえず部屋の中に隠れよう!」


俺達は急いで爆発のあった部屋の中に入った。

中は物凄い煙と焦げ臭い匂いが充満していた。

ここでは化学薬品でも扱っていたのだろうか、フラスコや顕微鏡の様な物が沢山置いてあった。

最も、爆発の影響で殆ど使い物にならなくなっていたが…。


「うぅ…煙がすげぇ…」


「駿、極力煙を吸わない様に!」


「分かってるよ…。しっかし、ここは何をする部屋なんだ全く…」


そもそも、この世界の化学水準がどの程度か分からないが、何かを研究する部屋だったのだろうか?

だとしたら、一体何の為の研究だ…?


「てめぇらか、こんなひでぇ事しやがって…」


声の主は、先程会話をしていた内の一人だった。

案の定、爆発に巻き込まれてしまったらしく、大怪我を負っている。


「いや、爆発はそっちがなんか落としたせいだろ?」


「落としたって事を知っているって事は、俺達の会話を盗聴してたって事か? どのみち、敵って事だろうが…!」


男は懐から、何やら薬品の様な物を取り出した。


「俺も…もうもたない…だが、せめててめぇを巻き沿いしてやる…」


そう言って、取り出した薬品を投げようとした瞬間、あの駿が素早く反応し、男を羽交い絞めにした。

俺は予想外の展開に若干動揺しながらも、すぐに察して男が持っていた薬品を奪うと、部屋の外目掛けて放った。

そして魔石から放った風で、出来るだけ薬品を遠くに吹き飛ばした。

すると、遠くの方から爆発音と共に、人の悲鳴が聞こえてきた。


「ぐあああぁぁぁ!! なんか急に爆発しやがったぞ!!」


「くそおぉぉぉ!! 早く負傷者の手当てを!! 賊どもめ、許さねぇぞ!!」


「いや、俺達も賊側なんだけどね。ってか、これメーとディックが開発してた薬品じゃね?」


「なんだと、あいつら裏切ったって事か!? 許さねぇ、賊共々ひっ捕らえろ!!」


なんだか、余計に騒々しい事態になってしまった様だった。

しかも意図せず、この男も何故か狙われる身にしてしまった。


「なんかアンタも狙われの身になっちゃったね。ドンマイ」


茜は心の欠片もこもっていない言葉を、男に投げかけた。


「ねぇ、ここから奴らを巻く逃げ道とか無いの?」


茜は男に続けた。


「バカが…誰が侵入者にそんな事を教えるか…」


まぁそりゃ当然だろうという返事が返ってきた。

すると茜は「うーん、困ったなぁー」と言う様な顔をしてみせた。


「えー、じゃあアンタも一緒に、仲間達に殺されちゃうかもよー? だって、今完全にアンタ裏切り者扱いされてるし、きっと死ぬより苦しい拷問を受けるかもよー?」


「き、貴様…」


「ホラホラ、まだアンタも死にたくは無いでしょー? だったら、ここは一つ協力しようよー。それだけで生き延びれるんだから、安いもんでしょー?」


茜から発せられる言葉は、文章だけで見ると何て事ないものだったかもしれないが、その時の茜の表情が何とも言えず、サイコパス染みていた為、軽く恐怖を覚えた。

勿論、演技だとは思うが、今後茜をあまり怒らせない様にしようと固く心の中で誓った。


「…この部屋の奥に、別室に通じる隠し通路…というか脱出通路がある…」


そう言って、部屋の奥にある不気味な銅像を指差した。

どうやら銅像をどかすと、脱出口が現れるらしい。


「サンキュー! じゃあ行こうみんな!」


「おい、ちょっと待っててくれ」


「? 何やってんの駿、追手が来ちゃうでしょ?」


茜の言葉に振り向きもせず、駿は男を担いだ。


「貴様、何を…?」


「お前、俺達に道教えたは良いけど、そのケガでどうやって逃げるつもりだったんだよ…。お前は確かに敵だけど、別に殺すつもりは無いし、ここで死なれてもちょっと夢見が悪ぃしな。仕方ねぇから連れてってやるよ!」


「…この俺に情けを?」


「良いから、黙って担がれてろ!」


「分かった…。だったら…」


そう言って、男は、部屋で倒れているもう一人の仲間の方を指差した。


「あいつも連れて行ってくれ。あんなんでも、轟狐の中で数少ない友人だ…」


「…分かった。じゃあ蓮人、そいつを頼む?」


「え、俺? …分かったよ」


俺は渋々倒れている方の男を担ぐと、部屋の奥へ進んだ。


「あんたら、本当にそいつらも連れてく気? 一応敵だよ?」


「バカ野郎、目の前で倒れてる奴をほっとけねぇだろーが!」


「はぁ…この期に及んで呆れるわ…。まぁ駿らしいんだけどね」


茜は呆れながらも、苦笑いをしながら銅像をどかしていた。


「スーナはこいつらを連れて行くの、嫌か?」


「ううん、シュンさん達が決めた事なら大丈夫だよ♪」


スーナはそう言って笑って見せた。

多分、心の中では複雑な思うだろうが、一切顔には出さなかった。


「あ、ホントに隠し通路があった。嘘じゃなかったんだ」


「いいから、先へ進め。仲間が直に追ってくる…。後、中に入ったら、必ず銅像を元の位置に戻せ…」


「戸締り確認をする母ちゃんかっつーの…。よし、じゃあ行くぞ」


こうして俺達は隠し通路へと進んで行った。

勿論、戸締りも怠らずに。

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