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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
143/300

No.143 えぇ…?

「えーっと…君達…誰?」


俺達の目の前に現れたのは、長身で色白、眼鏡をかけた、如何にも大人しそうな男だった。

こいつは轟狐なのか…?

にしては、覇気が無いし、俺達を見ても仲間にすぐに知らせる様子が無かった。


「………」


若干冷静さをかいていたせいか、何を言えばいいのか分からず、沈黙してしまった。

但し、余計な情報を喋ってしまうのを回避したと考えれば、結果オーライだろうか。


「うーん…やっぱり見ない顔だねぇ…。新入りぃ…? 全く、メンバーが入ったんなら僕に教えろってんだよなぁ…。ただでさえ、轟狐はでかくなっちゃってるんだから」


なんだか覇気の無い喋り方をしているが、案外位は上の方の人間なのか…?

それに、今ハッキリと轟狐って言った。やっぱりここはカジノの建物で間違いなさそうだ.


「じゃあ君達も仕事頑張ってねぇー。あ、そうそう、俺がここに居た事みんなに言っちゃ駄目だよ。俺のまた連れ戻しに来て、面倒だからー」


そう言って、男は再び闇の中に消えて行った。

一先ず、危機は回避できたので、俺達は安堵した。


「あ、危ねぇ…。流石にダメかと思ったわ…」


「いざという時は戦ってたけど…余計な騒ぎを起こさずに済んだし、とりあえず、行ってくれて良かった」


「なんかまた、随分と覇気の無い奴だったけど…あんなのも居るんだね」


「まぁガラさんみたいなのも居るんだしな」


「なんだ、ガラって…?」


「俺とスーナがワガマタで会った、元轟狐の人だよ。すっごい暗い部屋に居てさ」


「ふーん、轟狐にも色々な奴が居るんだろうなぁ…」


「でも…」


「茜?」


「さっきの男だけど、なーんかどっかで見た事ある様な…」


「どっかで? 俺達がここに来てから、今までにすれ違った奴らの中に居たって事か?」


「うーん…どうかな。まぁ私の気のせいかもしれないし、気にしないで」


「なんだようー、んな事言われると気になるじゃんかぁー」


「気にすんなっつってんでしょ。ホラ蓮人、とっととここを出て、先に進もう」


「そうだな、いつまでもここに居ても仕方ないし…」


俺達は周囲を警戒しつつ、部屋を出た。

部屋の外もなんだか薄暗く、視界があまり良くなかった。


「ここに住んでる奴は、暗いのが好きなのかよ? ここの建物、カジノのフロア以外、基本暗いぜ?」


元来、暗いのがあまり好きではない駿は、文句を垂れていた。

勿論、文句を言った所で、明るくなったりはしないし、逆に自分は落ち着く位である。


「お、先の方に扉があるぞ。そこ以外には扉らしきモンは無さそうだな…」


「あの扉開けんのか…。なんか如何にも罠でも仕掛けてありそうな扉じゃんか」


確かに罠である可能性は十分考えられる。

この前も不用意に部屋に足を踏み入れたばかりに、地下深くまで転げ落ちてしまっているし、慎重にいかなくては…。

扉のすぐそばまで来たが、一見すると怪しそうな気配はしなかった。


「どうする、蓮人、入るか?」


「いや、前の失敗がある。ここは…」


俺は魔石を手に取ると、地を這うイメージで風を発生させ、床と扉の間にある僅かな隙間に侵入させた。


「何やってんだそれ…」


「いや、前見たく落とし穴が仕掛けられてるかもしれないし、部屋の床に対して風を送りこんで、罠が反応するか調べる」


「いくらなんでも、そんなのに反応するか…?」


すると部屋の中から何やら話し声が聞こえてきた。


「いやー、しっかしこうもビジネスが上手くいくと、逆に退屈になってくんなぁ」


中に轟狐の連中が居たのか。

全く物音が聞こえてこなかったから分からなかった。すぐに部屋に入らなくて良かった。


「あれ、お前知らねぇの? 先日、ここに侵入者があったらしいぜ」


「マジかよおい、ここに侵入するたぁどんな神経の太ぇ野郎だよ」


「しかも、目撃情報によると4人で来たらしいぜ?」


「4人!? 堂々としてやがんなぁ!」


やっぱりと言うかなんというか、俺達がカジノに侵入した事は、殆どの轟狐達に知れ渡ってるみたいだ。


「んで、どうしたよその4人は?」


「それがまだ捕まってないらしい」


「え、逃がしたってのか!?」


「いや、今は建物の周囲を見張らせてるらしいが、外に逃げたという情報は無いみたいだ」


「じゃあまだ中に居るっつー事かぁ?」


「そうみたいだ」


成程…まぁ想定してなかったワケではないけど、だいぶ警戒態勢が敷かれてるみたいだ。

逆に言うと、建物の外の警戒に人員を割いてる分、中の方は若干手薄になってる可能性が高い。


「やっぱり、俺達がここに侵入した事、大事になってんな…」


「そんな事、今更でしょ?」


「まぁ…」


茜に言われ、駿は何も言えなくなってしまった。


「うぉ!!?」


突然部屋の中から、男の叫び声が聞こえた。

もしかして、俺達が部屋の前に居る事がバレたか?


「なんか足元から風みてぇのが!! え、なにコレ…あっ!」


「おい、バカそれ落とすな!!」


そして、何かが床に落ちて割れる音がしたと思ったら、次の瞬間部屋の中で爆発が起こった。


「おおい、みんな部屋から離れろ!!」


俺達は猛ダッシュで部屋から離れると、なんとか難を逃れた。


「え…何々、なんで爆発した? 何が起こった?」


すると中からボロボロになった男が出てきた。


「お…お前らか…床に怪しげな空気を送ってやがったのは…ひでぇ事しやがる…!」


いや、お前がなんか落としたせいで爆発したのでは?と思ったが、今はそれを言う雰囲気ではなかった。

すると、男は手元の怪しげなボタンを押した。


「今…建物中に緊急招集通知を発信した…。今からここに仲間達が集結してくる…せいぜい…後悔しやがれ…」


如何にも小物が言いそうな捨て台詞を掃き、男は倒れた。

まもなく、建物中に物騒なアラート音の様なものが響き渡り始めた。

何やら大勢の足音が迫ってくるのが分かった。


「…えぇ…?」

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