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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
138/300

No.138 あまりに巨大

「移紙…使えないのここ?」


想定外の事態に頭が真っ白になってしまった。

移紙が使えないのでは、期間内にイクタ村に戻る事が出来ない。

いや、そもそもここを脱出する術すらない。


「駿…お前、確かじいちゃんの元で、イクタ村で復興の手伝いしてたよな? なら大丈夫だな。ここでも十分やっていけるよ」


「待て待て待て! 何諦めてここで永住する気になってんだ! もうちょっと頑張ろうぜ!」


「そ、そうだよレン君! 他に何か方法が無いか考えよう」


「そうだよねー、こんなすごい建物が地下にあるんだから、他にも何かありそうなもんだよね」


3人に宥められながら、俺は気力を取り戻し、周囲を隈なく調査した。

しかし、探せども探せども何も見つからず、唯々神社と呼ぶにはゴツゴツしい建物がそびえ建つだけだった。


「しかし参ったな…。何も手掛かりがねぇし、何も思い浮かばねぇ…。こりゃ詰んだかな」


さっきまで必死にここを脱出しようとしていた駿も、すっかり気力を失って諦めモードになっていた。


「いや、お前さっきまでの勢いはどこいったんだよ。俺よりもすごい勢いで諦めてんじゃん」


先程よりかは幾分気力を取り戻した俺は、手掛かりを求めて調査を進めていた。


「これじゃー世界救う所の話じゃねーじゃんか…」


「ちょっと駿、そんなメソメソしてる暇あったら、あんたも手伝いな」


「だってさぁ…」


ダメだ、駿は気持ち的に完全に戦闘不要になっていた。


「私、こんな所で一生を終える気はないんだからね。もうすぐ『ワグリアストーリー3』の発売日なんだから、絶対にここを出てプレイしてやんだから!」


「いや、ゲームの為かよ」


「文句あるー? 2から2年も待ったんだからね。プレイせずに死ねるかって話でしょ? ね、蓮人?」


「そっかぁ、そういやもうすぐ発売日だったなぁ。予約もしてたし…。俺も楽しみにしてたよ…」


すると沸々とゲンガに対する憎しみの感情が沸き上がってきた。

そして俺は何を思ったのか、スタスタと壁の方に向かって歩いて行った。


「…? レン君?」


スーナの声も耳に入らず、壁の前で立ち止まった。


「こんんの…ゲンガ共の…!!」


右手の拳に、全身の魔力と周囲に漂う僅かな魔力を込めた。


「クソぼけぇぇぇぇぇェェェェェ!!!!」


俺は全てのエネルギーを壁にぶつけ、ぶちかました。

俗に言う八つ当たりである。


「れ、蓮人!? お前何やってんの!?」


すると、みるみる壁に罅が入り出し、鈍くて重い音を立てながら崩れ出した。


「バカタレぇぇぇぇぇぇ!! みんな逃げるぞぉ!!」


駿が一目散に逃げようとすると、茜が何かに気付いた。


「待って、壁が崩れた所から何か見えるよ」


「えっ?」


「あ、ホントだ何か鉄みたいなものが…!」


確かによく見ると、剥がれ落ちた壁の奥から、何やら得体のしれない像の様なものが姿を現した。


「なーんだこれ…。なんの為にこんなもんが壁ン中に…?」


「元王様、これが何か分かる?」


「いや…私も初めて見るな…。しかし、見た所、この建物と材質が同じ様に見えるな…」


「確かに同じだ…。もしかして、これって建物の一部なのか…?」


そうこうしている内にも、どんどんと壁が崩れてきて、鋼鉄が剥き出しになってきた。

このままだと、俺ら全員下敷きになってしまう。


「と、とりあえず、一旦外に出よう! スーナ、早くこっちに!」


「いや、お前やりたい放題か!!」


「ほら、駿もグズグズしてないでさっさとここを出るよ!」


比較的外壁が崩れるスピードが早くは無かったので、何とか無事に脱出する事が出来た。

しかし、崩れ落ちた外壁で、地下への道が塞がってしまった。


「いやいや、間一髪だったな…」


駿はグッタリした様子でその場に座り込んだ。


「さっき見えた鋼鉄の壁…アレ何だったんだろうね…」


「元王様達も無事か…?」


「いやいやー、無事かじゃないわ!! 危うくお前に殺される所だったわ!!」


「わ、悪い悪い…。…ん?」


なんと地下で発生した外壁の罅が、なんと地上にまで続いていた。

しかもよく見ると、地上の地面からも鋼鉄が姿を見せていた。


「……」


俺は地下の巨大な建物、そしてそれと同じ材質と思われる謎の像や壁、真上に広がる巨大な穴を眺めていた。


「レン君…?」


「確かに…ずっと気にはなっていたんだよな…。なんであの建物だけ材質が違うとか、こんなにぽっかりと空いた空間が崩れずに存在しているのかとか、歩く時に感じるコンクリートみたいな固さ…」


「さっきから何言って…」


俺は疑問を確信に変えるべく、地面目がけて爆風を飛ばした。


「ちょちょちょ、蓮人!? 今度は何を…!!」


「…やっぱり!」


「え…レン君、これって…」


元国王も目の前に姿を現した事実にただただ驚くばかりだった。


「これは…」


俺が巻き起こした爆風によって、辺り一面の土が吹き飛ばされて、その下から出てきたのは、地下で見た鋼鉄そのものだった。


「え、何これ、どういう事? 地下で見たのと一緒じゃん!」


「ここら辺だけじゃない、多分この空間全てが鋼鉄で覆われてる」


「蓮人、もしかしてここって…」


「うん…。多分この空間そのものが巨大な神社だよ」

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