No.136 下へ参る
王様と名乗るその老人は、俺が吹き飛ばした時に痛めたであろう腰をさすりながらゆっくりと立ち上がった。
「あのー…王様って…?」
「ふふふ、言葉の通りさ。私はグランルゴの元国王・アルガンデだ。まぁ今は王位を追われたしがない老人だがね」
俺達4人はプチ会議を始めた。
「なぁおい蓮斗、あの爺さん自分をグランルゴの元国王とか言ってんだけど、ボケてんのかな?」
「いや…俺に爆風で吹き飛ばされた拍子に、頭ぶつけたのかもしんない」
「マジか! お前それ割と重罪なんじゃね? 傷害罪じゃね?」
「いや、それ言ったら蓮斗、家を数件吹き飛ばしてるし、建築物損壊の罪もあるんじゃない?」
「えー二人ともそこまで言うか? あぁでもしなかったら、俺と茜ちょっとやばかったよ?」
「そ…そもそも、グランルゴの国王は亡くなったって、前ユウさんが言ってたような…」
「そういや確かに言ってな…。え、じゃあこのおっさんって…?」
俺達はプチ会議を終え、元国王と名乗る老人の方を見つめた。
「ゾンビ…?」
「違うわ! 4人も集まって話し合った結果がゾンビって何!?」
「だってゾンビっぽい顔してるし…」
「元々こういう顔!」
「じゃあ何のゾンビなんだ…?」
「だから元国王!! ゾンビじゃないっつってんだろーが! 」
とうとう自称元国王は怒り出してしまった。
「だってグランルゴの国王って、確か死んだって…」
「表向きはな。実際はこの通りピンピンしているよ」
「いやー、腰を辛そうにさすりながら言われても…」
「これお前のせいだから! お前さんに会う前では至って健康だったんだよ」
これ以上、この元国王を怒らせると高血圧で倒れかねないので、この辺で止めとこう。
「見た感じあんた達、普通に暮らしてる様に見えるけど…」
「そうだな…。何か良からぬ事を企てようとする以外は、特に仕打ちは受けとらんよ」
「…? じゃあ何の為に轟狐は、あんた達をここに閉じ込めてんだ?」
「私達はここに閉じ込められた瞬間から、とある建物の破壊を命じられている」
「建物…?」
「この地に大昔から存在している建物でね。私のお爺さんから聞いた話では、この世界ともうひとつの世界を結ぶ為にあるらしい」
「おい蓮斗、それって…」
「うん…」
間違いなくそれは、轟狐が一掃しようとしてる神社の事だ。
まさか、グランルゴにもあったなんて。
「ん? ここに閉じ込められた瞬間から命じられてって言ってたけど、まだ破壊してないの?」
「破壊していない…というよりは、破壊出来ていないというのが正しいかな。まぁ実際に見た方が早い。君達、私についてきなさい」
「アルガンデ様、部外者をあそこに入れるのは…!」
「なぁに、構いやせんよ。どうせこの者達も私達も、ここからは逃げられないんだ。教えても構わんよ」
「へぇー、じゃあ俺達がここを脱出できた場合は、あんた達一大事ってワケだ」
「ふふふ、何かの脅しかな?」
「別にー?」
こうして、俺達は老人に案内されて歩き出した。
先程、駿と一緒に来た大穴の真下に来ると、草影に隠れた階段が出現した。
「こんな所にまた階段…」
「建物はこの階段を降りた先にある。じゃあ入ろう」
俺達はひたすら薄暗い階段を降りていった。
「大体よー、なんでこんな地下奥深くに建物なんてあんだよ。それも大昔からって…」
「よっぽど大切な建物なんだろうさ。もし、爺さんの言うことが本当だとしたら、神社で間違い無さそうだし、人を寄せ付け無さそうな場所にあんのは、割と納得だけどな」
「で、どうすんの? 神社を破壊するとどんな事が待ち受けているのか全部説明して、説得するつもり?」
「黙って見てる訳にはいかないし、一応話してはみるけど…未だにその建物を破壊出来ていないって事は、破壊出来てない理由があるって事だろ? 」
「まぁ…こんな地下奥深くに建てる位だから、厳重に厳重を重ねてんだろうな」
「さぁ着いたよ。これがその建物だ…」
「…これが神社??」
建物の意外な姿に、俺達はただ、呆気に取られる外無かった。




