表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
135/300

No.135 嵐の如く

「それは…私達の要求を断ると判断して宜しいかな?」


周りの男達は槍のような武器を構えていた。

どうやら銃の類いは持っていない様だ。


「このまま、ここであんたらみたいにダラダラ暮らしていても、どの道世界が滅ぶだけだ。可能性のある方を選ぶよ」


「世界が滅ぶ? 何をワケを分からない事を…。それと君には、私達がここで何もせずダラダラ暮らしている様に見えましたか?」


「だったら何?」


「私達がどういう思いで今までここで生きてきたのか、何をさせられていたのかを知りもせずに、私達のこの状況を否定される筋合いは無いんだよ!」


この人達が、今までどんな目に遭ってきたのかは知らないけど…。


「俺達は俺達の目的を達成するだけだ」


そして小声で茜達に指示を伝えた。


「何をこそこそ喋っているのかね?」


「それは…」


俺達は頷き合った。


「この場を収める為の10秒間の打合せだよ」


その瞬間、俺は目の前の机を思いきり蹴り上げた。


「何!?」


一瞬、老人達の視界を塞ぐと背後に居た連中6人を、茜と俺でまず相手をした。

俺が机を蹴りあげた事で、動揺で体が硬直して動けずにいる隙に、じいちゃん直伝の武術で叩きのめした。

その隙に駿はスーナを連れて、家の外へ出た。


「貴様ら!」


鬼の形相でこちらの方を睨んでいた老人をよそに、老人の横についていた男共を魔石の力で吹き飛ばし、壁に叩き付けた。

しかし、部屋にいるので全員かと思いきや、外にも大勢居たらしく、次々と中に入ってきた。


「蓮斗、これはちょっとヤバくない?」


さすがの茜もにも焦りが見えた。


「仕方ない! 茜! 俺の足元でしゃがんでろ!」


「え? あ、うん!」


茜は俺の足元で身を屈め、俺は魔力の消耗を覚悟で、周囲360度に向けて、爆風を放った。


「ぐわぁぁ!!」


老人や武器を持った男達は、家の外壁もろとも吹き飛ばされた。

気が付くと、壁やら屋根やら全て吹き飛ばされ、外から丸見えの状態になってた。


「ヤッベ…ちょっと加減ミスったか? 茜は無事…」


俺は茜の方に目をやると、何と上着が全て吹き飛ばされ、下着姿の茜がこちらを睨んでいた。


「あ…あの…茜さん…?」


「ミスったっていうのは、私の脱げ具合の事…?」


「いや、別に茜の裸にはあまり興味な…」


天井が晴れ、気持ちいい位にビンタの音が鳴り響いた。


「全くこんなにしちゃって…。っていうか、外に逃げた二人は無事なんでしょうね? まさか、巻き込まれてたりしない?」


「いや、爆風を使う直前に窓から、遠くに逃げてる二人を確認してるから、そこは大丈夫だ」


と言い終わると同時に、若干の立ち眩みが生じた。

加減はしたつもりだったが、だいぶ体内の魔力を消費した様だ。


「とりあえず、外に逃げた二人を探そう」


俺達は二人が逃げたと思われる方へ向かった。

家の周りを囲っていた連中は「あ、こいつらやべーぞ」とでも思ったらしく、完全に俺達にビビっていた。

威嚇という意味も込めて、さっきの爆風は、案外妥当な攻撃だったのかもしれないと、密かに自画自賛した。


少し歩くと、駿とスーナがこちらに気付き、歩いてきた。

どうやら無事だった様だ。


「蓮斗ぉー!」


「おーい、二人共、無事だったみたいだな!」


「いや、『無事だったみたいだな』じゃねーわ!! 危うく俺の攻撃に巻き込まれる所だったわ!」


「え、だって遠くに逃げてたから『あ、使っても良いかな』って…」


「お前が吹き飛ばした家の瓦礫が、スゲー勢いでこっちに飛んできたわ!」


「ご、ゴメンな…」


「レン君と茜ちゃんは無事だった?」


「うん、俺達は何ともないから大丈夫」


「いや、あんた人の服吹き飛ばしておいて、大丈夫は無いでしょ!」


「そ、それもゴメン…」


「蓮斗、頼むからもう少し周りを見てくれよ…」


俺は二人からフルボッコに怒られてしまった。

一切の反論は出来なかった。


「うぅ…」


瓦礫の下からさっきの老人の呻き声が聞こえた。

どうやら無事な様だった。

俺は、老人に覆い被さっていた瓦礫を取っ払った。


「はは…ゲンガ達に喧嘩を売ろうっていうような連中だから、腕は立つのだろうと思っていたが、まさかここまでとは…。町の屈強な男達が全く歯が立たんとはな」


「別に喧嘩を売りに行くワケじゃ…。平和な結末だってあるかもしれないじゃん」


「はっはっは、面白い事を言う! ゲンガ達と平和的解決? それが出来たら我々はとっくにこんな場所から出ているよ。それが出来なかったから、私は王の座を奪われ、ここで鬱々としているのだよ」


老人はひとしきり笑うと、やがて溜め息をついた。


「……」


え、王様!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ