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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.13 じいちゃん

財布を取りに戻ったおばあちゃんに、ベッドでスーナを押し倒している(様に見える) 所を見られてしまい、緊急家族会議が行われた。


「さぁ蓮斗、説明してもらいましょうか。これは一体どういうこ事なの?」


ヤバい、ばあちゃんがマジで怒ってる。

夏美は汚物を見るような目でこちらを見てる。

じいちゃんは…あれ、じいちゃんなんか笑ってね?え、何がおかしいの?ぶっとばすよ?


「宿題もしないでこんな女の子を家に連れ込んで…おまけに猫まで…」


ここは全部正直に言った方が…いやダメだ、正直に言ったとこで信じてもらえるとは思えない。

今までちょいちょい異世界で生活してたんだけど、今回こっちに戻ってくる時にスーナ達も連れてきちゃったんだよね~なんて信じるバカがどこにいる?

そんなん俺だって信じない。


「まず、二人は一体どういうご関係なの?」


関係…ここは普通に友人って答えとくか。


「俺とスーナは友達だ」


「お友達…どこで知り合ったの?」


どこでなんて説明できるわけねーだろ。どうしよう…。


「れ…レン君とは私の住む村の近くで出会いました!」


「村…?ここいらに村なんてないけど…。スーナちゃんはなんて村に住んでるのかしら?」


「それは…言えません」


よし、ナイスだスーナ!下手に村の名前を出しても信じてくれないばかりか、怪しまれるだけだ。


「言えませんじゃ困るわね…。蓮人、あなたはスーナちゃんのいう村っていうのがなんなのかは知ってるはずよね?」


げ、こっちに矛先が向いた…。


「えっと、それは…その」


「何もごもご言ってるの!ハッキリ喋りなさい」


「えっと、すみません、訳あって私の村の事は言えないんです…。ただ…」


「ただ…?」


「私とレン君は、私の家で一緒に暮らしてましたので、安心してください!」


ちょっ、スーナァ!!お前何突然ぶちまけてんだぁ!?

なんつー語弊を生む様な言い方すんだよ!何も安心できねーだろ!!


「えっと…え、一緒に住んでたって何?どういう事…?」


「いや、ばあちゃん今のはその、あれだよ、スーナなりの冗談っつーか…」


「レン君、なんでそんな事言うの!?レン君と一緒に住んでた日々は冗談なんかじゃないよ!」


いや、なんでそこ、そんなに反論!?俺のフォロー台無しにする所か、益々怪しまれんじゃねーか!


「蓮人…今の話は…?」


「え、いや、今のは、え、あ、その…」


「もしかして、この間友達の家に泊まるって言って、家に帰ってこなかったのも、この子の家で泊まってたからかい!?」


いや、それ完全別件の奴!!駿の家で夜通しゲームしてただけの奴だから!!


「じゃあ先々月にも友達の家に泊まるって言ってたのも…」


それも別件だね!!その日も駿の家で夜通しゲームしてただけだから!!


「スーナちゃんも男の子をホイホイ家にあげちゃダメよ!両親はどういうお考えなの!?」


「私…両親…いません」


「両親がいないって…じゃああなた一人暮らしなの…?」


「はい…幼少期は村長さんの家で暮らしてましたけど、今はずっと一人暮らしです」


「そうだったの…。それは大変だったわね…」


「いえ…今はレン君がいるんでだいぶ心強いです」


「蓮人が?」


「さっきも言ったんですけど、私…両親…元より家族が誰もいませんでした。村の村長さんからは、いつまでも居て良いんだよって言ってくれましたけど、いつまでも迷惑かけられないし、ゆくゆくは自立しなきゃって思ったから、自分から村長さんの家を出て、空き家だった家で一人で住み始めました。ただ、やっぱり毎日寂しくて寂しくて…夜泣いてた時もありました。そんな時、レン君に出会いました。ホントに嬉しかったです。レン君はいつも私に寄り添ってくれました。いつも私を優しく見守ってくれました。感謝しても仕切れない位…いつも…」


スーナはポロポロと涙を流しながら、隣にいた俺の手をぎゅっと握りしめた。


「スーナ…」


「分かった…もうこれ以上は何も聞かないわ」


「あの…ばあちゃん」


「蓮人がこの子をベッドで押して倒している所を見た時はどうしようかと思ったけど…」


「いや、押して倒してないから!せめてそこの誤解は解いて!」


「スーナちゃんの話を聞いて、蓮人がお父さんとの約束を守ってるのが分かったわ」


「…」


「まぁそれはそれとして、スーナちゃん、私達はあなたをその村に送り届けなくちゃいけないわ」


まぁそういう話になるだろうな。

俺だってこの状況を良しとしてる訳じゃない。

村長さんや村の人達も心配してるに違いない。

できることなら、スーナをあちらの世界に帰してあげたい。

だけど…。


「良いんじゃねーか、うちでしばらく預かっときゃ」


口火を切ったのは今までずっと黙っていたじいちゃんだった。


「どうせ、家帰ったって誰も居ねーんだろ?だったら、しばらくうちで置いといてやろーや。勿論、ずっととは言わねーよ」


「じ、じいちゃん!?」


「ちょっとあなた、犬や猫じゃないんだから、そんな簡単に!それに村の人達が心配してるんですよ!」


「その村長とやらには俺から話しつけといてやるから問題ねーよ」


「話をつけるって…あなた、その村のこと御存知なの?」


「まぁな」


…なんでじいちゃんが知ってるんだ?俺はそんな事教えた事は無いし…。


「おい蓮人、亮介の部屋が空いてっから、お前が亮介の部屋で寝ろ。そして嬢ちゃんは蓮斗の部屋で寝たら良い」


「いいけど…なんでわざわざ俺が父さんの部屋で寝るんだよ?」


「バカヤロー、あんな辛気臭ぇ部屋、嬢ちゃんに可哀そうだろ」


「辛気臭いとか言うなよ、自分の息子の部屋だろーが」


「まぁそういうこった。三和子、それでいいだろ?」


ばあちゃんは呆れかえった様な顔でじいちゃんの顔を見ている。


「いくつになっても困った人ね~。一度言い出したら聞かないんだから…」


そう言ってばあちゃんはスーナの前に歩み寄り、腰を下ろし、優しくスーナに語り掛けた。


「まぁ…何もない所だけど、自分の家だと思ってゆっくりしていきなさい」


「でも私なんかがいたら迷惑なんじゃ…」


「それは逆よ。スーナちゃんこそ迷惑だと思ってない?あのじいさんに勝手に全部決められちゃって…」


「い、いえ、そんなことないです!その…みなさん、暖かくて…それに…」


「どうしたの?」


スーナがこちらを一瞬見たかと思うと、すぐに目をそらし、おばあちゃんに何か喋った。

だが、声が小さくて何を喋ったのかは分からなかった。

すると、ばあちゃんはこちらを見て、微笑んだかと思うと俺の方に来て、


「蓮人、頑張んなさいよ」


と一言言って部屋を出て行った。

え、頑張るって何を?


「スーナちゃん、家の中を簡単に案内してあげるから、いらっしゃい」


「あ、はい、今行きます!」


「スーナさん、私も付いてってあげる」


そういうとスーナと夏美も部屋を出ていき、じいちゃんと二人きりになった。


「スーナ…つったか?あの嬢ちゃんはイクタ村の人間なんだろ?」


最初に口を開いたのはじいちゃんだった。


「なんで知ってんだよ…」


「そりゃあお前、嬢ちゃんの着てる服見りゃ一目瞭然だろーがよ」


「そうじゃねえよ、なんでイクタ村の事知ってんだって話だよ」


「そりゃあ行ったことあるから、知ってるわな」


「じいちゃんも…?」


「なんだ、そんなに驚くことか?お前が行けて俺が行けない理由があるとでも?」


「別にそんな事は…」


「まぁ45年も前の話だ、現状の村の事は何も分からねーけどな」


「じゃあ村長さんの家を建てたのって、まさかじいちゃん?」


現役バリバリの大工の棟梁であるじいちゃんは少し考え込んだかと思うと、突然笑い出した。


「なんだ、じゃあ今はロジの野郎が村長やってやがんのか!こりゃ傑作だ」


ロジ…確か村長さんの下の名前だった気がする。


「じいちゃん、村長さんと知り合いなのか!?」


「あぁ、俺があっちの世界に行ったときに初めて会った人間でよ。俺の中では未だに泣き虫ロジのイメージしかねーんだが…まさか村長になってるとはな。分からねーもんだ」


そっか、依然村長さんが俺に「おじいさんに宜しく」って行ってたのは、そう言う事だったのか…。

待てよ、それだと俺がじいちゃんの孫ってことを知ってたってことになるけど、一言もそんな事は…。

いや、一番最初に会ったときにバッチリフルネーム名乗ってるわ。あーそれだね。


「じゃあ俺があっちの世界に行った事とか、あの神社の事とかも始めから知ってたのかよ」


「まぁな」


「ったく、最初から言ってくれりゃ話が早かったんじゃねーの?スーナをこっちの世界に巻き込む事も無かったし…」


「はぁ…テメーは亮介に似て鈍感だなぁ」


「鈍感って…なんか最近色んな奴に言われんな。何が鈍感なんだよ」


「もうちっと嬢ちゃんの気持ちを汲んでやれや」


「気持ち…?」


「来てえから嬢ちゃんはこの世界にやって来たんじゃねーの?」


「スーナが?」


「一から全部俺に聞くんじゃねーよ。後は、自分で考えろ。じゃあ俺、風呂に入ってくっからよ。部屋の電気消しとけよ」


「…あいよ」


スーナが自らこの世界に…何のために…?

……


「あー分からん!どいつもこいつも人を試すような言い方しやがって!」


俺は乱暴に電気を消し、部屋を出て、そのまま父さんの部屋に直行した。

父さんが死んでから、書斎兼寝室の部屋はそのままとなっている。


「はっ…確かに辛気臭い部屋かもな。父さん、しばらくこの部屋借りんぞ」


さっきばあちゃんがこの部屋に入って、ベッドのメイキングをしてくれたのだろう。

フカフカの布団が敷かれている。俺は新しく敷かれた布団に倒れこむようにダイブした。


「俺…スーナの事…何もわかってやれてないのかな…」


さっきのじいちゃんの言葉が俺の頭の中を支配していった。

そんな支配から逃れる様に俺は目を瞑り、眠りについた。

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