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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
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No.129 Under Ground

その後も俺達の行く手には、店員の格好をした轟狐の連中が立ち塞がった。

幸い、出くわすのはしたっぱの連中ばかりだったので、特に手こずる事なく、順調に進んでいった。

いや、本当に順調なのかは分からないが。


「でもさ、こんだけ蓮斗が暴れてんのに、思った程、轟狐の奴らと出くわさないな。それに、今まで出くわした奴らも、殆ど偶然出くわしたって感じだし…」


「暴れてるって言い方、なんか腹立つな。でも確かに、あんまり奴らと遭遇しないな。もしかして、俺達がカジノの中に潜入してるのって、連中に殆ど知れ渡ってないのかもしれない」


「うーん、なんでだろうな」


「さぁ…。何かあった時に、上に知らせる連絡網みたいのが特にないのか、敢えてそうしてるのかは分からない。まぁ考えるだけ無駄だな」


「レン君、あそこに行き止まりだよ!」


「マジか! 途中、他に通路らしい通路も無かったし…。っていうか、ここの建物の上層階、いやに部屋が少なくないか?」


「確かに…。1階の部屋と、さっきのガラクタ部屋位しか無かった様な…」


「一体何のために、作ったんだろうね、ここは…」


「ったく、歩くだけ歩かされて、全く振り出しか。仕方ない、下に戻ろう」


こうして俺達は、再び来た道を戻った。

ここに来るまでに、だいぶ轟狐を叩きのめした影響だろうか、殆ど轟狐の連中には出くわさなかった。


「ここが1階か。どうする蓮斗? あの部屋に入ってみるか、地下に降りるか…」


「地下に入ってみよう。それにどうせこの部屋は…」


そう言って、俺は部屋のドアを蹴破った。

すると、そこには何も無いだだっ広い部屋が広がるのみだった。


「…!? 部屋が空っぽ?」


「やっぱりね、私もおかしいと思った。あんなに暴れたのに部屋から、人っ子一人出てこないし、中から話し声どころか、物音ひとつしなかったから…」


「最初っから、1階から上はほぼ空だったってワケだ」


「んだよ、人をおちょくりやがって! つーか、上の階はホントに何のためにあんの?」


「それをここで俺達で話しても、答えは見つかんないだろうし、結局は下に降りるしか無いだろ」


「ちくしょー、いくらでも地下に降りたらぁ! そして、絶対アイツらに『ねぇねぇ、この建物の2階以降って何のためにあるんですかね? ぶっちゃけ、張りぼてっすよね?』って聞いてやらぁ!」


「いや、それ死ぬほどどうでも良いから」


「そいじゃあ、行きますか。スーナちゃん、準備は良い?」


「あ、はい、私は大丈夫です!」


俺達は意を決して地下へ続く階段を下りて行った。

先程の上へ続く階段とは違い、随分と長く、全然フロアへ着かなかった。


「スッゲー長ぇ階段だな…。ったく、エスカレータ位付けとけっつーんだよ」


「そんな技術、この世界には無いんだろ」


「いやいや、気合が足んないだけだろ! ロゴンチャ作る技術があんなら、エスカレータ位作れんだろ!」


「ロゴンチャだって、蓮斗のお父さんがこの世界にアイデアを持ち込んで出来たもんなんだし、そもそもエスカレータみたいな発想が無いんでしょ」


「そこはイマジネーション発揮しようぜ! どう考えたってこれ、毎回降りたり昇ったりすんの怠いだろ! つーか、これいつ着くの?」


「あ、先が見えてきました!」


スーナの言う通り、ようやく階段が終わった。

意外にも上階に比べると、地下の方が幾らか明るかった。


「今度はかなり沢山の部屋があるな」


そんな会話をしていると、不意に部屋から男が出てきた。


「はぁ…仕事怠いなぁ…。ん?」


男は俺達と目が合った。


「おい、誰だおま…」


男が言葉を発し終わる前に、俺は男の腹にパンチをお見舞いした。


「えぅっ!!」


鈍い音と共に、男はその場で崩れ去った。


「うわー、蓮斗躊躇ねぇな…」


「なんかもう反射的に腹パンしたみたいな?」


「人聞きの悪い言い方止めろ」


すると、男が出てきた部屋の隣から声が聞こえてきた。


「おい、なんだ今の音? なんかあったのか?」


「ううん、全然大丈夫だから、気にしないで(裏声)」


「そうか、なら良いけど」


そう言って、男は納得したかと思いきや、間髪入れずに部屋から出てきた。


「いや、お前そんなヘンテコな声じゃなかっただろ! つーか、今の誰の声だ!?」


やむを得ず、その男も腹パンで叩きのめした。


「いや、お前なんであそこで裏声!? 余計怪しまれるわ!」


「反射的につい、裏声に…」


「反射的に裏声って何? どんな癖だよ!」


「おい、なんださっきから! 何があった!」


「ほら、駿が大声出すから、気付かれたよ」


「違うね! ほぼほぼ蓮斗のせいだと自信を持って言えるよ俺は!」


「とりあえず、ここは強行突破で切り抜ける!」


「え、ちょっと走るの?」


確かに俺と駿は兎も角、茜とスーナを走らせるのは厳しいか…。

仕方ない、こうなったら…。


「茜、スーナ、少しの間我慢してろ」


そう言って、俺は茜とスーナを、それぞれ両脇に抱えた。


「え、ちょっと蓮斗?」


「レン君!?」


「よっし、行くぞ! 駿も付いて来いよ」


「え、ちょっと蓮人、お前どうするつもりだ?」


俺は魔石の力を使い、風を纏って通路を爆走した。


「おい、みんな、侵入者だ!! 直ちに捕らえ…っあああああああああああああああああ!!」


「オイコラ、蓮人ぉぉ!! 置いてくんじゃねぇぇぇぇ!!」


「邪魔だ、どけぇぇぇぇぇっぇぇ!!」


「ちょっと蓮人、止まってぇぇ!!」


体中からアドレナリンが出まくった俺は、構わず突っ走って行った。

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