No.120 敵地へ
更に2日が経過し、いよいよ俺達の乗せたロゴンチャがグランルゴに到着しようとしていた。
外は再び薄いピンク色の霧に覆われており、現在の外の様子は伺い知る事は出来ない。
『間も無く、グランルゴ中央駅に到着致します。当駅でお降りの方は、準備の方お願い致します』
車内に準備を促すアナウンスが流れた。
「駿、茜、そろそろ準備しろってさ」
「あいよー。っつっても、私達、殆ど荷物とか無いけどね」
「いやー、やっとだよ! やっと今回の目的地に着いたワケだよ! 長かった…辛かった…」
「いや、俺達まだ何もしてないぞ」
かくゆう俺も、やっとグランルゴに着けて、ホッとしていたりする。
「ふふふ、私も流石に疲れちゃったから、やっと外出れると思うと嬉しい♪」
「ですなぁ」
そして、とうとうロゴンチャはグランルゴ中央駅に到着した。
「いやー、着いたぁ! …って、ここ寒っ! やっぱり、ここって結構山の上なワケ?」
「標高何千メートルとか?」
「あの高さだし、あり得るかもな…」
「でもあんまり息苦しくは無いな」
「確かに。じゃあ実はそんなに山の上ってワケでも無いのか?」
ホームであぁだこうだ話していると、一人の老紳士がやって来た。
「ここら一帯は、魔石の力で適度な酸素が覆っているからね」
「そうなんですか? …っていうか、どちら様?」
突然現れた解説キャラに戸惑いを隠せなかった。
「ほっほっほ、何を言っていらっしゃる。ここに来る目的は皆さん、同じでしょう」
「目的って…あぁカジノですか?」
老紳士の言葉で、ここが巨大カジノの町であることを思い出した。
「そうですとも、私の様な老いぼれから、あなた方の様な若く、血気盛んな者まで、平等にチャンスが与えられる町、それがグランルゴですぞ」
別に俺達はカジノをしに来たワケでは無いが、とりあえず本来の目的は黙っていた。
「まぁ老いぼれからのアドバイスですが、決して入れ込んではいけませんぞ? その先にあるのは破滅のみです。ではでは、これにて失礼。武運を祈ります」
そう言って老紳士がこちらに背を向けると、なんと老紳士の着ていたスーツの後は生地が無く、パンツと肌が丸見えだった。
「いや、あのじいさんが誰よりもカジノに入れ込んでんじゃん! っつーか、何あのスーツ! どんな剥ぎ取られ方したんだよもはや着ない方が良いじゃん!」
一抹の不安を覚えつつも、俺達は無事にグランルゴの中に入った。
これまでのミタやワガマタの町とは比べ物にならない程に、巨大な町だ。
まさに、こっちのラスベガスとでも言うのだろうか。
「いやー、こりゃすげぇな! 人も沢山いるし、建物もみんなデカイ…」
「みんな迷子にならないように、固まって歩かないとな」
「こん中から、轟狐の連中を探すのは骨が折れそうだよね…。蓮斗、なんか特徴とか無いの?」
「いや、アルフの話によれば、ここにいる轟狐は、完全に町に溶け込んでるから、服装等の外見だけで判断するのは難しいみたいだ」
「え、それどうやって探すの?」
「うーん、とりあえず歩き回って、情報収集してみようか」
特に当てがあるワケじゃ無かったが、立ち止まっても仕方ないので、散策する事にした。
カジノの町なだけあって、町中は目障りな程にきらびやかだった。
道行く人達は、いかにもな富裕層や、恐らく一発逆転に掛けた者、浮浪者の様な格好の者、様々だった。
「いや、しかし歩くにも流石に広すぎるなぁ」
「確かに…当てもなく歩くのはちょっと無謀かもね」
「どうする、レン君? いっそのことカジノの中に入ってみない?」
「え、いきなり?」
「前、ゲンガのグループが、裏でカジノの舵取りをしてるってユウさんが言ってたし…」
確かにユウさんから以前、そんな事を教えてもらった気がする。
勿論、カジノは避けて通れないんだろうけど、ユウさんの話がホントなら、この町のカジノは、言わば轟狐の拠点。
あまり迂闊に乗り込むのは危険ではないか?
そんな事をモヤモヤと考えていると、突然、謎のファンファーレが鳴り響いた。
「なんだなんだ? 何が始まるんだ?」
カジノらしき建物から、一人の大男が出てきた。
すると、たちまち町中から大歓声が沸き起こった。
「おお、なんかすげえ事になってんな!」
「今、建物から出てきた人って、そんなにすごいの?」
やがて、大男は拡声器の様なものを手にすると、大声を張り上げた。
「いやっほおおおおおおおう!! ご機嫌うるわしゅ、てめぇらああああ!! 俺がカジノの総支配人、『ゲンガ』だあああぁぁぁ!! 詰まらねぇ御託は要らねぇ!! 勝つも負けるも自由だが、ここに来たからには必ず楽しんでいきやがれよおおおおおお!!!」
「おおおおお、ゲンガ最高ぉぉぉぉ!!」
「素敵ぃぃ、ゲンガ様ぁぁぁぁぁぁ♡」
俺達は頭が真っ白になった。
「あ、あれがゲンガぁ!?」




