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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.12 墓参り

「ここって…レン君の故郷…?」


そう言いながらスーナは辺りをキョロキョロと見渡している。


「なんでスーナがここに…?」


俺は全く状況を呑み込めないでいた。

ただ、非常にまずい事になっているという事だけは、はっきりわかっていた。


「もうしかしたら、私、レン君にしがみついちゃったから一緒に来ちゃったのかも…」


なんだその謎システム!と言いたい所だが、それ位しか思い当たる節が無い。

いや、それよりも早くこの場を離れなくては。

神社とは言え、今は丁度下校時間だから、友人に見られる可能性が無くも無い。

スーナのいた村とは違い、女の子一人を外に待たせておくのは危険だ。

とりあえず、家に速攻で戻って、俺の部屋に匿うしかないか。


「よし、スーナ、俺に付いて来い!」


「え、あ、はい!」


よし、少し足元は悪いが裏道を使ってくか。

ここを通ってけば、人目に付かずに家の勝手口に辿り着ける。


「スーナ、絶対に離れるなよ。足元も悪いから気を付けて歩いてくれ」


「うん、分かった」


「よし、ミーとミミをこっちに。さすがにこいつらを抱いたままだと、歩きにくいからな」


「え、でもそれ言ったらレン君だって」


「俺はガキの頃からしょっちゅうこの道を歩いてっから大丈夫なの。ほれ、行くぞ」


そう言って、俺たちは裏道を歩き出した。

まだ日が暮れていないとはいえ、家の塀や木々に囲まれた一本道なので、若干位。

相変わらず歩きにくい道だな…。


「スーナ、足元大丈夫か?」


「うん、なんとか」


返事をしたその時、スーナが足を滑らせ、体が前に傾いた。


「ひゃっ!?」


倒れる―


「あぶねっ!」


咄嗟に差し出した左腕で、何とかスーナの体を受け止めた。


「ふぅ…大丈夫か?」


「あ…うん、大丈夫。ありがとう」


「なら良かった。昨日雨降って地面が滑りやすくなってっから気をつけろよ」


「うん」


そういってまた歩き出した。が、やはりこの道はスーナにとって歩きにくいみたいだ。

手すりになるようなものも無いし、またさっきみたいに転んでケガされても困るしな。


「よし、スーナ、手ぇ出せ?」


「え、手?」


不思議そうな顔をしながらスーナは手を差し出すと、俺はその手をガッシリ掴んだ。


「えっと、レン君、急にどうしたの?」


「どうしたって…スーナが転ばない様に手を支えてるだけだよ。嫌なら離すけど…」


「う、ううん、そんな事ないよ!そのままで大丈夫だから!」


「…そっか、じゃあ行くぞ」


何故かスーナがすごい慌ててた様に見えたのは気のせいか?

まぁいいや、このまま家まで突っ切る。


ようやく家の勝手口まで辿り着いた。


「これがレン君のおうち…?なんだか、私や村長さんの家と似てるね」


「んー確かに似てるっちゃ似てるけど、じいちゃんとばあちゃんが昔住んでた家の方が、もっと似たな」


「そうなの?」


「あぁ。後で写真で見せてやるよ」


おばあちゃん達は先に行ってるって言ってたから、今は家にいないハズ。

このまま、勝手口から入って俺の部屋に直行だ。俺は静かに勝手口のドアを開けた。


「誰も…いないよな?よし、スーナ靴脱いで中上がれ」


「え、家に入るのに靴脱ぐの?」


「この国ではそれが常識なの。郷に入っては郷に従うってな。…ってスーナはそんな諺知らないか」


「うーん、でもこの国の決まりなら靴は脱がなきゃだね」


そういって、スーナは靴を脱いで、手に取った。


「ここから入って目の前の部屋を左に曲がると階段があって、それを上ると俺の部屋だ。よし、行こう」


俺とスーナはキッチンを横切り、左手にある廊下を歩いていった。


「まぁスーナの家よりは狭いだろうが、そこは我慢してくれ」


「そんな事ないよ!こじんまりしてていいと思う!」


「そりゃあどうも」


よし、後は階段を上れば…。


「あれぇ、にぃもう家に帰ってたの?」


な、夏美ぃぃぃぃぃぃぃ!!

なんで夏美がこんな所に!?

先にばあちゃん達と墓参りに行ってるはずじゃ…?

俺は咄嗟にスーナを壁に押しやり、夏美の視界に入らない様にした。

今考えるとどっからどう見ても不自然な光景だ。


「い、今帰った所!夏美は墓参りに行ってたんじゃ…?」


「おばあちゃんがお墓に備えるお花忘れちゃったから、急いで取りに戻ったの」


「そ、そっか、お疲れさん」


「えーと、にぃはなんで壁に這いつくばってんの?」


いや、絶対そうなるよね!分かってたもん!俺だって家帰って来て夏美が壁に這いつくばってたら、

ツッコむもん!


「いやー、丁度今バランスを崩して壁に全身を打ち付けた所でさ!痛くて動けないんだわ!」


「え、ごめん要約すると、頭打っておかしくなったって事?」


「まぁそう捉えるのは無理ないとは思うんだけど、決して頭おかしくなったわけじゃないから!」


「にぃ…何か隠し事してない?」


「いやいや、何もないから!気のせいだから!」


「みー」


「え、何今の声って?」


ミィィィィ!!

なんてタイミングで鳴いてんだ!!


「いやー、俺の腹が鳴ったみたいだわ!!ずっと腹減っちゃってさ!!夜ご飯楽しみだわ!」


「いや、絶対今の猫の鳴き声だよね?」


「もしかして、にぃ、こっそり子猫を家に連れ込もうとしてるー?」


「いやいや、そうじゃねーって!ホラ、夏美も早くばあちゃんに花持ってかないと!!」


「あ、そういえばそうだった!じゃあ私行くから、にぃも後からちゃんと来てね!」


「おう、すぐ行く!」


パタパタ…ガチャンッ!


ふぅ…やっと行った…。とりあえず誤魔化せ…てはあまりなかったけど、まずは助かった。


「スーナ、急に悪かった、大丈夫か?」


「う…うん、大丈夫…」


「よし、じゃあ階段上がるよ」


俺とスーナは階段を上がり、なんとか俺の部屋に辿り着いた…。


「はぁ…なんとか着いた…。今までで一番疲れる下校だったわ…」


スーナは部屋の中をキョロキョロ見回している。

多分、目に映る物全てが珍しいんだろうな…。

…アレ、今度はこっちをじっと見出した…。


「何、スーナ、俺を事じっと見て…」


「レン君の着てる服…いつの間にか変わってるね」


「あーそういや学ラン姿では初めてか。ここでの俺の服はこれなんだわ」


「ふーん…なんだか変わった服だね」


「変わった服言うなよ。ってか…スーナはこっちの世界に来ても服装が変わんないんだな」


「むしろ変わる物なの?」


「俺、変わったもん」


「ふーん…変なの」


「変なのいうなよ」


「それにしてもレン君の部屋…見たことが無いものばっかりだね。えーっと…これは…?」


スーナはおもむろにテレビのリモコンのスイッチを入れた。


「わっ!!なんか急に箱の中に沢山の人が出てきた!!なんかよくわかんないけど笑ってる!」


俺はスーナからリモコンを強奪すると、テレビの電源を切った。


「こら、スーナ。人んちの物を勝手に触るんじゃない」


「すごいね!この国ではこの棒一本で沢山の人達を一瞬で箱の中に閉じ込める事が出来るんだね!」


「なんかその言い方やめろ。ってか人の話を聞け」


「あれ、レン君、さっきの女の子に早く来いって言われてなかった?」


「あ、やっべ!!じゃあスーナ、俺ちょっと用があって外出るから、絶対にこの部屋から出るなよ!」


「うん、分かった。ミーとミミと留守番してるね」


「あと、さっきみたいに部屋の物勝手にいじったりしないでくれよ」


「はいはい、大丈夫だって」


「ホントにわかってんだか…じゃあ行ってくるから。すぐ戻って来る」


「うん、いってらっしゃーい」


スーナを部屋に残して、俺は父さんが眠っている墓地に向かった。

スーナの奴、何もしでかさなけりゃいいけど…。


俺が着いた頃には、みんな既に墓参りが終わっていた。


「蓮人、随分遅かったわね。何かあったの?」


「いや、ばあちゃん、なんでもない。遅れてごめん!」


「なら良いけど…。ホラ、はやくお線香あげてきなさい。お父さんもきっと待ってるわよ」


俺はばあちゃんから火の着いた線香を受け取ると、父さんの墓の所へ向かった。

もう2年経つんだな…早いな……。そのうち、5年、10年って経ってくのかな…。


線香を手向け、目を瞑り、手を合わせていると後ろから声を掛けられた。


「もう済んだか?」


「あれ、じいちゃん、まだここにいたの?」


「なんだ、居ちゃ悪ぃーか?」


「別にー。もう線香あげ終わったんだろ?」


「別に線香あげ終わったら、ここに居ちゃいけねーなんて事あるめーよ」


「いや、まぁそうだけど…」


「亮介の奴と会話してただけさ」


「父さんと…?」


「一方的にだけどな」


「それって会話って言うの?」


「はは、確かに会話とは言わねーな。独り言の方が正確か」


「どんな事父さんに話してたんだよ?」


「そんな照れくせー事、孫に言えっかよ。おら、ばあさん達待たせっといけねーから行くぞ」


「あ、うん」


俺とじいちゃんは、ばあちゃん達の元へ向かった。

ばあちゃんは、やっと来たと言わんばかりの顔で俺たちを迎えた。


「さて、これから親戚で集まって、みんなでご飯食べるんだけど、あんたたちも行くだろ?」


「えっと…俺はいいや。家に帰るよ」


「蓮人の好きなお刺身とか沢山あるのに?今日あんだけ楽しみにしてたじゃないの」


ぐっ…確かに刺身は捨てがたいけど…流石にスーナほったらかして、呑気に飯食ってる場合じゃないな…。


「あ、にぃ、もしかして明日の宿題やんなくちゃいけないんでしょ?だったらしょうがない!」


「あら、蓮人そうだったの?」


「え、あ、あぁ実はそうなんだよ!急に宿題出されちゃってさー。参ったよ」


「なら仕方ないわね~。じゃあお金渡すから、これで適当にご飯買って食べなさい」


「なんか急にごめんな、ばあちゃん」


「その代わり、ちゃんと野菜も買って食べなきゃダメよ」


「分かってるって」


「でも、夏美、よく蓮人の宿題の事知ってたわね。学年違うのに」


「そ、それは茜ちゃんから聞いた…んだ!にぃが宿題忘れないように伝えといてって!」


「そうだったの。茜ちゃんはホントに良い子ね♪」


俺がそろそろ帰ろうとすると、夏美が俺の元に駆け寄って来て、そっと耳元で囁いた。


(猫ちゃん拾ってきた事は秘密にしといてあげる。後、刺身もいくつか持って帰ってあげる)


(悪い、色々助かったわ!恩に着るよ)


(その代わり、今日帰ったら猫ちゃんモフモフさせてねー♪)


(いや、それはその…)


(約束だからね!じゃあまた後で!)


そう言うと、夏美はみんなの元へ歩いて行った。

はぁ…なんとか家には戻れるけど…バレんのは時間の問題だなこりゃ。

っと、ゆっくりしてる場合じゃない、早く家に帰んないと!


急いで家に戻った俺は、玄関の鍵を開け、中に入ると異変に気付いた。


「アレ…なんか寒いな…?」


どこからかひんやりとした空気が流れ込んでいた。

どうやら二階からこの空気が流れてるらしい。

二階…俺の部屋…やばい、嫌な予感しかない…。

急いで階段を上がり、部屋のドアを開けるとキンキンに冷えた空気がオレの体に直撃した。


「寒っ!!なんだどうなって…」


そこまで言いかけた時、俺の目に飛び込んできたのは、ベットの毛布にくるまり、ガタガタと震えている、

スーナ達の姿だった。


「れ…れれれれ…レン…君……。なん…か…急に…冬になっちゃった……の…。…しゃ…しゃむい……」


床にエアコンのリモコンが転がっていた。


「いやいやいや、こんなん寒いに決まってんじゃないか!」


とりあえず部屋を暖めるべく、急いでエアコンの設定を暖房に切り変えようとしたが、ふたが外れて、

電池がどこかに転がってしまったらしい。


「スーナ…だから言ったろ、勝手に部屋の物いじんなって…」


「だ…だって、ミミちゃんがその白い棒みたいな…えーっと…」


「リモコンな」


「そう、リモコン!それをミミちゃんが踏んじゃって…」


「あーそういうことか…。このリモコン、暖房と冷房を切り替えると設定温度が極端になるんだよな…」


「なんか…レン君の部屋怖い…」


「まぁここに来ちゃったからには慣れてください。ほら、この毛布も使っていいから、冷えた体温め……ダメだな、毛布自体がキンキンに冷えちゃってるな。やっぱ電池を探さなきゃダメか…」


ふと、俺は携帯の充電池に使ってた電池がベットに転がってた事を思いだした。

一旦はそれをリモコンにセットして、暖房でこの部屋を暖め直そう。


「確かこの辺にあったはず…。ごめん、スーナ、ちょっとどいて…ってアレ…?スーナ?」


何故かスーナは俺の腹に抱きついている。


「あの…スーナ、一体何やってんの?」


「あったかい…」


「うんそうだね、俺、家戻るのに走ってきたから、体暖まってるからねー」


「あったかい…」


「うんそうだね、そんな事しなくても、電池、探して部屋を暖めようとしてるんだー」


「あったかい…」


「うんそうだね、でもそうやって抱きつかれちゃうと俺、動けないんだよねー」


「あったかい…」


「…いや、いい加減離れてくんな…」


ドアの方を向くと、ばあちゃんが唖然とした顔で、立ち尽くしていた。


「蓮人…あなた、女の子を部屋に連れ込んで何やってるの…?」



あー、早くも見つかった…。

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