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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
118/300

No.118 痕

「おーおー、なんかホントに俺達の世界の電車と変わんねぇ―な! これ、動力何で動いてんだ?」


「確か、魔石の力を使って動かしてるんじゃなかったっけ?」


「へぇー、なんでも魔石でやっちまうんだなぁ~」


「あ、それ俺も同じ事思った」


俺らを乗せたロゴンチャは、順調に目的地を目指して走っていた。


「しっかし、俺達以外にあんまり乗客いねーのな」


確かに周りを見てみると、あまり乗客が乗っている様には見えない。

こっち方面にあまり用が無いのだろうか。


「えーと、ここから4日間こん中で過ごすんだよな?」


「うん、予定では…」


すると駿は遠くを見つめながら、呟いた。


「暇だなぁ~」


「いや、何度も言うけど、別に遊びに行くんじゃないんだから…」


とは言うものの、前回ロゴンチャに乗った時もそうだったが、車内で数日間の長旅は、中々に疲れる。


「どうする? 第二回枕投げ大会開催する?」


「無いね! それだけは絶対に無いね! 大体枕無いし、何投げるつもりだよ!」


当然ながら、俺と駿は、茜の案を速攻で却下した。

町の観光で程よい疲労が溜まっていたので、とりあえずは昼寝をすることにした。


「私、枕変わると寝れないんだよね~」


「茜って、そんか神経質なタイプだっけ?」


「なんか言った?」


「いえ、何も…」


ロゴンチャでは、俺とスーナ、茜と駿がそれぞれ同じ部屋割りになっていたので、各自部屋に戻った。

以前、ワガマタに行くのに乗ったロゴンチャよりずっと中は広かった。

俺達の世界みたいな、電車のサイズの規定みたいのが無いのかもしれない。


「スーナはここまで大丈夫? 疲れてない?」


「大丈夫だよ、ありがとう♪」


「しばらくすること無いな」


「ふふふ、退屈?」


スーナが微笑みながら、何気無く袖を捲ると、先程、ヤクリの町のバカ息子に強引に掴まれた腕が、若干青くなっていた。


「スーナ、それ…」


「何? あぁ、これ…さっきので少し後になっちゃったね」


スーナは苦笑いしながら、袖の中に細く、か弱い腕をしまった。


「こんなに成る程、強引に掴みやがったのかアイツ…」


「気にしなくても大丈夫だよ! それよか、レン君の方が思いっきり力入れて、あの人達の腕を掴んでいたよ」


スーナは、笑っていたが、よく見ると僅かにだが、体が震えていたのを見逃さなかった。

俺は何も言わずに、スーナの腕を出来るだけ、優しく撫でた。


「レン君…?」


スーナはキョトンとして、俺の顔を見つめていた。


「スーナは強いな。うん、強い」


すると、キョトンとしていたスーナは、急に泣き出して、俺にしがみついてきた。


「レン君…レン君…ホントは怖かった…! 前から怖かったの…!」


「そっか…すごい頑張ったんだな」


俺は、スーナの頭を同じ様に、心から優しく撫でた。

しかし一方で、スーナをこんな目に遭わせた、あのバカ息子に対して、心底腸が煮えくりかえっていた。

地位や権力を振りかざして、自分の欲望を実現させそうとする様な奴が、英雄の末裔だなんて、世も末だ。

俺のじいちゃんが一番嫌いなタイプの人間だ。

今回、じいちゃんが来てたら、絶対半殺しにしてただろうなぁ。

いや、いくらなんでもあんな公然の前で、堂々と暴力は振るわないか?

恫喝で済ます感じかな。


「レン君、何笑ってるの?」


「いや、あの場にじいちゃんが居たらどうなってたのかなぁって」


「ふふふ、レン君のおじいちゃん、ああいう連中嫌いだもんね。テレビのニュース見て、よく怒ってたし」


「あははは、確かにな! その内、ばあちゃんにうるさいって言われて、大人しくなるだよね」


スーナが笑顔になってくれたので、俺は少し安心した。

しかし、この先、またああいう連中に出くわすのだろうか。

そう思うと少し気が滅入るな。


「あ、そういえばこのロゴンチャには、窓があるんだな」


「うん、ロゴンチャによっては、窓があったり無かったりするし、広さや設備もマチマチなんだ!」


「もうちょっとは統一しようよ…。父さんはそこら辺の規定については、別に興味なかったのか。まぁなんにせよ、窓があるから、時々外の景色も眺められるな」


「うん、たまに外の景色見てれば、少しは気分転換になるかもね♪」


そんな事を言いながら、二人で外の景色を眺めていた。

一面草原の雄大な大地が、ベルトコンベアの様に流れているみたいだった。


「…この世界って、草原率高いよな」


いくら景色が見えると言っても、ひたすら草原だと、あまり有難みが無い。


「言われてみれば、確かにそうかもね! でも、もうちょっと先に行くと、山とかも見えてくるよ♪」


「山かぁ。早く見えてこないかなぁ」


「ふふふ、レン君、なんか子供みたいだね」


「子供みたい言うな、なんか恥ずかしいじゃん」


「冗談だよ♪ じゃあ私達も一眠りしよっか!」


「やることないし、そうするか」


こうして俺達は暫しの眠りについた。

そんなことはお構い無しに、ロゴンチャは目的地を目指して走って行く。

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