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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
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No.114 枕投げ

「ごめん茜、何言ってるか分からなかったから、もう一回言って欲しいんだけど」


「だから、第一回枕投げ大会の開催を宣言するって言ったの」


「あ、悪い、何回聞いても理解出来そうに無いわ。つーか、なんで枕投げ!?」


「何々、蓮斗も駿も常識が無いの? 宿に泊まったら、夜は枕投げって相場は決まってるんだって」


「いや、お前が誰よりも常識ねーから! その枕も一体どっから持ってきたんだよ?」


「宿のおばさんに『枕貸して』って聞いたら、快く貸してくれた。異世界と言えども、みんなやっぱり分かってるね」


「多分それ、枕投げに使うって知らないから貸してくれただけだから! 今から受け付け行って、『ちなみに枕投げに使うんですけど、良いですよね?』って聞いてみ? いっしゅんで没収されるから!」


しかし、結局茜の強い要望で、枕投げ大会が開催される事になった。

チームは俺と駿、スーナと茜に別れた。


「ねぇねぇ、レン君、アカネちゃんに詳細何も聞かされないまま、ここまできちゃったんだけど、枕投げって何…?」


「えーと、まぁざっくり言うと、お互いに枕を投げ合って戦うゲームだよ」


「え、何それ? ちょっと意味が分からないんだけど。それ、宿の中でやって良いの?」


「イヤ、ダメだね。ダメなんだけど、俺達は今からそれをやることにやってしまったんだよ」


「レン君…私、アカネちゃんが分からない…」


「大丈夫、俺も昔っからあいつの事は分からないから」


「ほら、そこいつまでそうしてんの? 早くチームに別れて!」


何故か怒られた俺とスーナは、すごすごと自分の陣地に向かった。


「おい蓮斗、こうなったら、全力で茜のバカを叩き潰すぞ!」


「え、駿までどうしちまったんだよ?」


「だってここまでずっと歩いてきて、体もくたくた。また明日からも長旅が続くっていうのに、この馬鹿げた枕投げ。一度、叩きのめして、分からせてやろうぜ?」


「お前、すました顔して結構最低な事言ってるけど。女子に全力出す気かよ」


「これは…教育的指導だ」


すると、茜は枕構えの体勢に入った。


「じゃあレディーゴーって言ったら、開戦ね」


なんだかよく分からない緊張感に包まれた。


「レディー…」


仕方なく、俺も枕構えの体勢に入った。

駿も目を血走らせながら、構えた。

なんだこのバカ達は。


「ゴー!!」


「ゴー」の言葉が、茜の口から解き放たれたとほぼ同時に、茜が放った4つもの枕が全て駿の顔面に命中した。


「おい、駿んんんんん!!」


ゴングの役目を終えた駿は、そのまま体勢を崩し、ベッドから転げ落ちた。


「口ほどにも無さすぎんだろ、お前!」


そう言っている間にも、どんだけ持ってきたんだと思う程の大量の枕が、茜から放たれてきた。


「っと!」


なんとかそれらを捌きつつ、その内の1つを掴むと、受け流しの要領で茜にぶん投げた。


「やっぱり、蓮斗は駿みたいにはいかないか」


「ったりまえだ、アホ!」


バトル漫画よろしく、会話を途中途中で挟みつつも、しばらく俺と茜で、枕の投げ合いが続いた。


「なぁ…所でこの枕投げ大会、どうなったら勝ちなんだよ?」


「んー、どちらかのチームが全滅するまで」


「いや、雑! っつーか、こっち既に一人、戦闘不能だし!」


「ほーら、無駄口叩いてる余裕があるの? どんどんいくよ!」


そう言ったかと思うと、茜の攻撃はより一層激しさを増した。

俺は一体何をしてるんだろう。

さっきの話の通りなら、俺がわざと負ければゲーム終了となるはずだが、多分、それじゃ茜が納得しないだろうし、何より俺のゲーマープライドが許さない。

さっきの駿じゃないが、とっとと茜を叩きのめして、このくだらない遊びを終わらせよう。


「ほら、どうしたどうした蓮斗! 防戦一方だよ?」


そう言いながら茜が、左手で抱えてる枕を右手で掴もうとした。

俺はその際の、一瞬の隙を逃さなかった。

まさに茜が、右手に枕を移すか写さないかのタイミングで、俺はそこ目掛けて枕を投げた。


「あっ!」


声と共に、持っていた枕を落とし、若干の動揺を見せた茜の顔面目掛けて、俺は渾身の1投を放った。


「わっぷ!?」


やや、すっとんきょうな声をあげ、そのままベッドから転げ落ちた。


「よし!」


思わずガッツポーズをし、一瞬気が緩んだその時、俺の顔にややゆったりとした勢いで、枕が命中した。


「おっ!?」


その枕は、スーナが投げたものだった。

完全にバランスを失った俺は、そのままベッドから転げ落ち、既に床で倒れていた駿を下敷きにした。


「うぅ!?」


下から駿の鈍い呻き声がした気がしたが、とりあえず聞こえないふりをした。

スーナの方を見ると、やや申し訳無さそうな顔をしながら、スーナがこちらを見ていた。


「あの…ごめんね、隙だらけだったから…」


こうして、第一回枕投げ大会は、スーナ・茜チームの勝利で幕を閉じた。

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