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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
6章 ゲンガ
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No.110 ヤクリへ

ついに始まった初めての四人旅。

ゲンガの一味がいると言われている、グランルゴを目指して歩き出した。


「蓮斗ぉ、その…グランルゴだっけ? そこまでどん位かかるの?」


「んー、確か村長さんの話だと、1週間っつってた」


「1週間!? え、もしかしてこのまま1週間も歩き続けんのか?」


「いや、隣町のヤクリっていう所からロゴンチャが出てるから、それ乗ってグランルゴまで移動する」


「なに、ろごんちゃって…」


「まぁこっちの世界でいう所の、電車みたいなもんだ」


「へー…。で、そのヤクリって町までは?」


「歩いて4日」


「結局だいぶ歩くじゃんかよ!」


「うるせーな、スーナはいつもヤクリまで歩いてたんだからな」


「スーナちゃんが? マジか…ってかなんで?」


「私、イクタ村に居た時は、服を作って、ヤクリで売ってたんです」


「スーナちゃん、服作ってんの!? スッゲーな…」


「いや、前に俺、この話お前にしてるから」


「仕方ないでしょ、駿すぐ忘れちゃうし」


「まぁ仕方ないか…」


「おーい、またいつもの感じになってんぞー! ここは学校じゃねーんだぞー!」


「大丈夫ですよ、シュンさん。何度でもまたお話するんで♪」


「スーナちゃん、一見すると優しいんだけど、要は俺が忘れっぽいって事を受け入れてるよね?」


「じゃあ忘れっぽくないのかよ?」


「いえ、忘れっぽいです…」


なんという中身の無い会話なのだろう。

3人集まると、どこでもすぐにこんな感じになってしまう。

こんなんでこの旅、大丈夫だろうか…。


「ここって私達の世界からすると、つまり異世界って事だよね?」


「んーと…まぁそういう事になんのかな?」


「モンスターとか出ないの?」


「いや出るわけ…」


スーナと二人でいる時は、特に考えもしなかったけど、泉狐族とかの存在を考えると…。


「あの…スーナ。この世界ってモンスターって出るの?」


「ふふふ、ここには出ないから大丈夫だよ♪」


「あ、いることはいるのかい!」


「ここからずーっと北の方にある山奥に住んでるみたいだよ。私も村長さんから話で聞いただけだし、見た事は無いけど…」


「良いね、良いね! なんかファンタジーっぽくて! 私、見てみたいかも!」


「いやいや、勘弁してくれよモンスターなんて!」


駿は、本気で嫌がる素振りを見せた。


「駿を囮にしてればモンスターに遭えるかな?」


「茜は、俺に一体何の恨みがあんだよ! 良いわけねーだろ、そんなゴミ作戦!」


「ところで、そのモンスターって、人に危害を加えたりするのか?」


「ううん、よっぽどの事が無い限り、あっちから危害を加える様な事は無いよ。逆に臆病者だから、人を見ると逃げちゃうんだって」


「そっか、じゃあ駿を囮にする作戦は逆効果だなぁ」


「いや、効果あってもやんなよ!」


そんな会話をしながら歩いて行き、気が付いたらすっかり日が暮れて来た。


「じゃあ今日はここら辺で泊まろうか」


初めて聞いたときの俺のように、駿と茜は、ポカンとした顔をしていた。


「えっと…あはは、俺、ちょっと疲れちゃってたのかな? 聞き違いっぽいや。スーナちゃん、悪いけどもう一度言ってくれる?」


「あ、ごめんなさい、私の声聞き取り辛かったですか? 今日はこの辺で泊まりますよ」


「いや、え? ここで野宿!? こんな道の真ん中で!? 出発初日で野宿とかある?」


案の定、駿はスーナの言葉が信じられず、わめきだした。


「スーナちゃん、本気でここで野宿なの? 流石に私もこの展開は予想できなかった…」


茜も若干動揺していた。

意地悪ながら、その光景を見て、俺は多少ニヤニヤしていた。


「つーか、なんで蓮斗はそんな余裕綽々なんだよ! お前、絶対なんか知ってんだろ?」


「ふっふっふ、スーナ、この哀れな異世界初心者共に例のあれを見せてやりなさい」


「ふふふ、レン君変なの。ちょっと待ってね、今から準備するから」


そう言って、スーナは手を地面につけて暗号の様なものを呟いた。

すると、地鳴りと共に、例の2階建ての建物が地面から姿を現した。


「はい、では中に入ってください♪」


駿と茜は唖然とした顔で建物を見ていた。


「…え、これ何? どういう事?」


「入っても大丈夫なのこれ…」


完全に警戒している二人をなんとか建物の中に入れた。


「おいおい、ホントに家ん中に居るみたいだな!」


「みたいじゃなくて、実際に家ん中だって言ってんだろ?」


「いやー、まだ信じらんねぇな。なんか人の視覚を利用したビックリアートみたいな奴じゃないの?」


「それを今ここでやって、何の意味があんだよ。バカじゃないか?」


「バカ呼ばわり…」


お腹もだいぶ空いていたので、俺とスーナで晩御飯を簡単に作ることにした。


「よく考えたら、二人でお料理するの久しぶりだね♪」


「そうかもな。ここ最近はスーナが一人で朝御飯とか作ってたもんな」


そんな会話をしながら、手際良く料理を進めていると、茜の視線が気になった。


「茜、なんでこっちずっと見てんだ?」


「いやー…こっから二人が並んで料理をしてる姿を見てると、新婚夫婦にしか見えないなーって思って…」


「ふぁっ!?」


茜の不意打ちに思わず変な声が出てしまった。

スーナも顔を赤くして俯いてしまった。

しかし、良く見るとちょっと嬉しそうな顔をしている。

その顔を見た俺もまた、嬉しくなった。


「駿は彼女とか居ないの?」


「いやお前、居ないの分かってて聞いてるだろ? チクショー、居ねぇよ!」


「好きな子も?」


「好きな子は…居るよ!」


「へぇー、誰々? クラスの子?」


「違いますー、ビナちゃんって子ですー」


「びな…? え、誰それ、外国人?」


「違ぇよ! …あれ、違くないのか? なんだ…異世界人ってとこか?」


「異世界人…もしかして、この世界の子?」


「そうだよ…なんだ、文句あんのか?」


「あんた、ここにラブコメしに来てたの?」


「違うから! 最初は完全に巻き込まれだから! 但し、今回はラブコメしようとしてたけどね!」


「いや、完全にラブコメしようとしてんじゃん。蓮斗はその子知ってんの?」


「うん、まぁ」


「へぇー今度会ってみたいな」


そう言った茜は、何か含みのある笑みを浮かべていた。


「おい茜、お前ビナちゃんに会って何するつもりだ? なんか要らん事吹き込もうとしてるだろ?」


「別に何も言ってないでしょ?」


「いいや、その顔は何か企んでる顔だ! 付き合い長ぇから分かんだよ!」


「ほら、ご飯出来たから、とっとと食べろ」


「はーい」


歩き疲れて、空腹だった事もあり、あっという間に俺らはご飯を平らげた。

食器の片付けが終わると、明日以降の行程の確認をすることにした。

スーナは、地図を広げると俺達に説明し始めた。


「とりあえず、今のところは予定通りに来てるから、明日明後日歩けば、ヤクリに着くよ」


「これが後、2日間も続くのか…。もう既にしんどい…」


「情けないな、駿は一応運動部だろ?」


「いや、いきなり丸一日歩き続けたら疲れもすんだろうよ。寧ろ、三人はなんでそんなに元気なんだよ、意味わからんわ」


駿は若干拗ねてしまった。


「ねぇスーナちゃん、ヤクリってどんな町なの?」


「うーん…普通の町かなぁ。あ、でもヤクリに伝わるお話があるよ」


「お話?」


「ヤクリの英雄伝説だよ!」

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