No.11 君とともに
気が付けば、早くも一か月が過ぎ、俺が元の世界…日本に帰る日が来てしまった。
しまったというのはおかしいか…。日本に帰れるんだから、もっと喜んでもいいはずだが。
うーん、でも気持ち的には「来てしまった」という表現が一番しっくりくる。
「じゃあスーナ、一か月世話になったな」
前回とは違い、いくらか明るく振舞っていた。
しかし、スーナの方は相変わらず寂しそうだ。
「スーナ、そんなに寂しそうにすんなって!また来るからさ!」
「うん…」
「ほら、今はミーとミミがいるんだ、大丈夫だ」
「それでも…」
「ん?」
「寂しいものは…寂しいんだもん…」
「いや…まぁそりゃ俺だって…」
その先も言葉も口から出かけたが、思わず口を紡いだ。
これ以上喋ると心が揺らいでしまうから。
「ううん、分かってる。レン君には戻らなきゃいけない場所があることも…。ごめんね、困らせて」
「いや別に、困ってなんか…」
「ふふふ、ホントにレン君は優しいね♪」
寂しそうではあるが、スーナは笑った。そんなスーナにミーとミミが顔を擦り付け、甘えていた。
「よーし、ミーとミミもいい子にしているんだぞ。ちゃんとスーナの言う事聞けよー」
「みー」
「みーみ-」
「よし、えらい!」
「じゃあ村長さんの所に行こう!」
そうして俺たちは村長さんの元へ向かった。
二度目ともなると慣れた者で、村長さんの家で軽く挨拶した後、例の神社の方にすぐ向かった。
最初はミーとミミは、家で留守番させるつもりだったが、スーナがどうしても見送りさせてあげたいと
いうので、一緒に連れてくることにした。
「じゃあ…世話になりました。多分、また来ることになるの…かな?」
「ははは、そうだね、君はまたここに来ることになるだろう!」
「なんか…予言者みたいで怖いっす」
「予言じゃない、事実だよ。まぁスーナがまた落ち込んだままだといけないから、また遊びに来てくれると嬉しい」
「はぁ…まぁ2度ある事は3度あるって言いますからね」
「それは…蓮人君の故郷の、何か有名な偉人の格言か何かかな?」
「"諺"って奴っす。今回の事を例にするなら、2回も来れたんだから、三回目も来れる…みたいな」
「ははは、面白いね、コトワザというのは。前にも言っただろ?君は何度も二つの世界を行き来しながら全てを知ることになるだろうと…」
「だから予言者みたいで怖いって…」
「ははは、事実を述べたまでだよ。まぁそれはともかく、一旦はお別れだ。元気でな」
「はい、ではまた会いましょう」
「ほれ、スーナも蓮人君に別れの挨拶をしなさい」
「…うん」
「はは、スーナは毎回そんなんだなー。大丈夫、また来るからさ!」
「…うん」
「…ちゃんと部屋の片付け、するんだよ。後…風邪とかひかないようにな」
「……うん…」
やばい、スーナが今にも泣きそうな顔をしている。
これ以上ここにいると俺までもらい泣きしそうになる。さっさと行こう。
「じゃあみんな、元気で!」
その言葉が言い終わるか否か程のタイミングで、意識が薄れ始めていった。
あー、そうだこの感覚だ。覚えてる。次目を覚ましたら、俺はまたあの神社かな?
目ぇ覚ましたら…父さんの墓参り…すぐに行かなきゃな…。
あれ…なんか村長さん…血相変えた顔…してんな…。
ん…?スーナ…?あいつなんで……俺に…しがみ…つい…て……。
ん…。
んあ……。
ここは……?
そうか…俺…また日本に戻って来たんだった…。
えっと…そうだ…。
俺、墓参り…行かなきゃ…。
携帯…携帯…あった…。
よし、ほとんど時間は進んでない。
余裕で間に合う…。
あれ…なんか体が重い…。
重いっていうか…なんか体に乗ってる?
なんだ今どういう状況なんだ…?
「みー」
「みーみー」
やべ、あいつらの声がする…。
幻聴まで聴こえてきた…。
前はこんなことなかったのに…。
ん…?
なんか人が近づいてきた…。
警備…員…か?
そりゃそうか、こんな所で寝てたら目立つわな。
「ちょっと君たち何やっているの?ここは神社なんだ。男女が仲良く寝る場所じゃないよ!」
君たち…?男女…?
このおっさんは何を言ってるんだ…?
俺以外に神社で寝る奴がどこに…。
「ん…。あれ、ここはどこ…?」
これは…スーナの声?えっ?なんでスーナの声?ここは日本じゃ…。
「アレ、レン君…?」
俺が声の方を振り向くと、そこにはキョトンとした顔をしたスーナ…と眠そうな顔をしたミーとミミがいた。
「あれ…スーナ…なんでここに…?」
「えっと…なんか…一緒に来ちゃったみたい」
「みー」
「みーみー」
あーなるほどねー。
一緒に来ちゃったのねー。
そっかそっか、来ちゃったかー。
……
うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?