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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
5章 みんなの日常生活
106/300

No.106 嘘

「神社…?」


そうなんの差し障りのない返事をしつつ、俺は頭の中を物凄い勢いで整理していた。

この間って言うのは、前回スーナも含めてあっちの世界に行った時の事か、それとも空間の裂け目に巻き込まれた時の事か…。


いや、そんな事はどうでも良い。

問題は神社で集まっていた事を茜に見られていた事だ。

正直、駿にも知られている手前、今更必要以上に隠す事でもないんじゃないかと思う反面、話した事で、茜まで巻き込む事になるんじゃないかという不安もあった。


「そう、あんたたち真剣な顔して、神社でなんか集まってたでしょ?」


「そっか…見られてたか…」


「見てたんだよ~。で、あんな所で何してたの?」


「実は…言いにくいんだけど…」


辺りに緊張が走った…。


「神社でエロ本見つけたから、みんなでどうするか会議してたんだ」


「…エロ本?」


聞いて呆れるゴミみたいな言い訳だった。

何が悲しくて、エロ本見つけた位で、わざわざ「エロ本見つけたけどどうする会議」なんてしなければいけないんだろうか。

間違えなく祟られる。

自分もじいちゃんの事を言えたもんじゃない。


「…スーナちゃんも居たのに?」


しまった、スーナ居たのかよ!

ってことは、前回スーナと一緒に行った時に見られたのか。


「じょ…女性の意見も必要かと思って、呼んだ…」


「いや、最低かよ!」


あー、ダメだ、これ以上嘘を重ねても良い事ない。

却って、話が拗れる。

仕方ない…。


「ごめん、実は…」


「何?」


「今の話…嘘なんだ」


「いや、分かってたわ! 寧ろ、こんな嘘を一瞬でも突き通そうとした蓮斗が、ある意味すごいわ!」


至極当然の反応である。


「ただ…あの時、神社で何をしていたのかは…今は言えない」


何の答えにもなっていないかもしれないが、それが今、俺が言える精一杯の言葉だった。


「…うん、分かった、それ以上は何も聞かない」


「ごめん…」


「いや、良いよ、別に謝らなくっても。私こそ無理に聞いちゃってゴメンね」


それからしばらく無言で歩いていた。


「まぁ…人には一つや二つ、隠し事位あるもんね」


俺に気を使っているのだろうか。

それに対して、俺は何も答えられなかった。


「私だって、蓮斗に隠してる事あるし」


「俺に…?」


「まぁ私も言わないけどね♪」


「なんだそれ、恐いな…」


しかし、俺に茜を兎や角言う資格は無かった。

茜の言う通り、昔からの腐れ縁でも言いたくない事の一つや二つはあって当然だ。

だけど、どうしても喉に骨が引っ掛かった様な感覚がいつまでも消えない。


多分、言ってしまえばこの感覚は消えるだろう。

でも、それは同時に茜を巻き込む事も意味している。

今の俺には、どちらの選択が正しいのかは分からなかった。

まぁ正直、言って信じてくれるかどうかは、また別になるけど…。


「でも、約束して」


そう言うと茜は突然、こちらを向き、俺の肩を掴んだ。


「危ない事だけは…やめてね」


その時の、茜のいつになく真剣な眼差しは、即座に俺の脳裏に焼き付いた。


「危ない事…?」


俺達が神社でこそこそしている姿は、茜から見たら何か疚しい事でもしている様に、僅かでも見えたんだろうか。


「別に危ない事なんかしてないから、大丈夫だよ」


「ホントに? 神社で危ない草を育てたり、危ない粉を隠してたりしてない?」


「いや、してねぇよ! どんだけ危ない事してそうに見えたんだよ! んな事神社でしてたら、罰当たりもいいところだわ!」


「そ、なら良かった♪」


茜はいつもの笑顔を見せた。

何故かその笑顔に、俺は少しドキッとしてしまった。


「じゃあ蓮斗、また明日!」


そう言って、茜はとっとと行ってしまった。


危ない事か…。

もしかしたら、これも嘘なのかも知れないな…。

こうやって嘘を重ねながら、人って大人になっていくのだろか。


そんな事を考えながら、ぼんやりと家路を目指して、俺はまた歩き出した。


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