表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
5章 みんなの日常生活
105/300

No.105 疑惑

新月の日まで、後1週間に迫っていたある日。

季節は7月。

季節的にも世間的にも夏を迎えており、汗が吹き出る日が続いている。

俺は暑いのが苦手なので、個人的には辛い季節である。


「アヅーい…」


思わずそんな声が漏れ出てしまう今日この頃である。


「相変わらず蓮斗は暑いの苦手なんだな。全く情けない事よ…アヅーい」


駿が自分の事を棚にあげておきながら、また訳の分からない事を言っていた。


「いや、さっきから言葉の語尾にアヅーい付けちゃってる奴に言われたくねーから」


「だって暑いんだもの! そして、なんでこのくそ暑い季節に部活なんざしなきゃなんねーんだよ!」


「うるさいよお前は。だったら部活休みゃいいじゃん」


「いや、『暑いんで休みまーす』なんて通用するワケねーだろ! 一生来んなって言われかねないから!」


「じゃあ全身冷えピタを貼りまくるとか…」


「そんなんで動けるワケねーだろ! 大体汗でどんどん剥がれていって、運動場に冷えピタ撒き散らす事になるわ!」


「接着剤でくっ付ければ剥がれないって」


「いや、いくら暑いからってさっきから受け答え適当過ぎるだろ! チクショー、覚えてろよ!」


そんな感じで俺達は、昼休みの時間をうだうだと過ごしていた。


「そういえば、来週ってあれだろ? 向こうの世界と繋がる新月の日って奴だろ?」


「うん、そうだな。あれ、駿はどうする? 一緒に行く?」


「いや、なんか旅行感覚で誘ってない? 言っとくけど、異世界に行くって結構な事だからな」


「うーんまぁそうなんだけどさ」


「うん…と…まぁ行こうかなとは思っているけど…」


俺は駿からの意外な返答に少し驚いた。

前回行った時は、終始愚痴を溢してたし(主にじいちゃんに対して)、この間も酷い目にあったから、てっきり来ないと言うと思っていた。


「前回、あんなに愚痴ってたのに…」


「いやまぁ辛い事だらけだったよ。だけど…」


「だけど?」


「荒廃した荒れ地の中にさ…ビナちゃんっつー一輪の華を俺は見つけたのさ。俺はその華を見れるのであれば、どんなに辛い事も頑張れる!」


「イクタ村を荒廃した荒れ地とか言うなよ。要するにビナLOVEってワケね」


「嫌な言い方すんな」


「まぁ来るからには頑張れよ。どうせじいちゃんにこき使われんだろうから」


「え、だって復興の作業も殆ど終わったろ? これ以上、俺あの村で何すんだよ?」


「何かしら」


「何かしらってなんだよ! 俺はあの村で今度は一体何をさせられんだよ!」


「だってお前、あの村行って何もせずにダラダラ過ごすつもり? それこそ迷惑でしかないだろ」


「迷惑とか言うんじゃないよ! 傷付くだろ!」


するとヤマっちがこちらにやって来た。


「何々、二人して何楽しそうに話してるの?」


「んー? 駿が可哀相だなぁって話」


「駿が可哀相なのは、いつもの事じゃん」


「おい、このやり取り、ついこの間もしてね? すごいデジャブなんだけど」


「…気にし過ぎだよ」


「おい、今完全にめんどくさくなってんじゃねーか! チクショー、覚えてろよ」


やがて、昼休みの時間が終わり、午後の授業が始まった。

こうしてると、世界の危機が迫ってるだなんて微塵にも感じないし、時々忘れそうになる事もある。

でも、今こうしている間にもその時は近付いているワケで。

だけどこちらにいる限り、どうする事も出来ないというジレンマに、不意に襲われる。


「蓮斗ー、授業聞いてるかー? 次のページ読んでくれって言ってるだろー?」


「俺、絶対に世界を救う!」


「……え?」


残念ながら、俺の周りの世界は一斉に静かになった。


授業が終わるといつも通り、部活している連中をよそに、家路を目指した。


「蓮斗ー!」


後ろを振り返ると、声の主は茜だった。


「あんたカバン教室に置きっぱなしだったでしょ?」


そう言う茜の右手には、正真正銘俺のバッグがバッチリ握られていた。


「あ、ヤベ、全然気付かなかった…」


「いくらなんでもカバンを忘れるなんて事あるー?」


「返す言葉も無いです…」


俺は申し訳なさそうに、茜からバッグを受け取った。

久々に茜と二人で並んで歩いていた。


「なんか、午後になってからずーっとボーッとしてない? なんかあったの?」


「別になんかあったわけじゃないけど…」


「分かった、スーナちゃんと何かあったんでしょ?」


「いや、だから特に何もないって。っていうか、なんでそんなに嬉しそうに聞くんだよ」


「別にー?」


俺とスーナが喧嘩してると、そんなに面白いのだろうか…。


「はぁ…しっかりしないと…」


「ねぇ…蓮人」


「ん?」


「まぁ…蓮人だけじゃなくて駿もなんだけど…」


「なんだよ、勿体ぶって…」


「あんたたち…何か隠してない?」


「え?」


「あの時…神社で集まって何してたの?」


その瞬間、凄まじい緊張感が辺りを駆け巡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ