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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
5章 みんなの日常生活
103/300

No.103 ふたりのお出掛け

例の空間の裂け目発生事件から、更に1週間が過ぎた。

あれ以降、空間の裂け目は発生しておらず、再び平穏な学校生活を送っている。


まぁ家に帰ると二人の怪獣の相手をしなければならないので、それなりに疲れはするが、割とこの日常を楽しんでいる自分がいる。

この頃は、夏美も二人の遊び相手をしてくれているので、そこまで大変でもない。


じいちゃんはというと、この間痛めた体がまだ治りきっておらず、通院中だ。

とは言っても、別に寝た切りと言うワケではなく、普通に出掛けるし、普通に健じい達と飲みに行ったりもする。

すこぶる元気である。


そして、俺は今何をしているのかというと、スーナと二人で特に目的もなく、出掛けている。


「二人きりでお出掛けするのって、久々だね」


「確かにそうかもな。ここんとこあいつらに付きっきりだったもんなぁ」


これは、ばあちゃんとじいちゃんの計らいで、俺とスーナ、二人でのんびりしてきなさいというモノだった。

絶対、キロとテンがぐずるから無理だろうと思っていたが、驚く程素直に俺達を見送ってくれた。

一体、ばあちゃんはどんな手を使ったのだろうか…。

恐るべしである。


「レン君、どうしよっか…。何処か行きたい所ある?」


「うーん、今日いきなりだったからなぁ。パッとは出てこないな…」


時間を確認すると、現在9時を回った所だった。


「生田緑地でも行ってみる?」


「いくたりょくち…?」


「そっか、スーナは知らないのか。川崎市民憩いの場所っていうか…まぁ自然が豊かな場所かな」


「うん、私もそこ行ってみたい!」


「よし、じゃあ決まりだな」


ようやく目的地が決まり、俺達は生田緑地に向かう為、電車を乗り継いで、小田急線の向ヶ丘遊園駅に到着した。

南口の改札を出ると、某アニメのキャラクターのモニュメントが出迎えてくれた。


そこからはバスが出ていたが、歩ける距離だったので、歩いて向かうことにした。


「ここには昔、モノレールが走ってたんだってさ」


「モノレールって、この間、テレビで見た電車みたいな乗り物の事?」


「そうそう、それ」


「こんな狭い所を電車が走ってたんだね!」


「俺が生まれた時にはもう走ってなかったんだけどね。父さんが小さい頃に、よくじいちゃんとばあちゃんに連れてきてもらったって、懐かしそうに言ってたよ」


「そっかぁ…残念だね。私もレン君と乗りたかったなぁ」


「あと20年位早かったらなぁ」


そんな会話をしながら、俺達は生田緑地に向かった。

その日も、子供連れやら老夫婦やら若いカップルやら、沢山の来園客が訪れていた。

そして、ようやく生田緑地の入口に辿り着いた。


「なんかレン君の家の回りと全然違うね! 自然がいっぱい」


「そういえば、スーナは江ノ島に行った時以外じゃ、殆ど家から離れた事なかったっけ?」


「うん、だからすごい新鮮!」


「うちの周り、公園とか以外じゃあんまり自然無いもんな」


入口のすぐ左手にある小さな資料館に入った。

中には園内の様々な生き物や歴史の資料が置いてあり、スーナは興味津々で読んでいた。

最近では毎日の勉強もあって、ひらがなとカタカナ、そして簡単な漢字なら読める様になっていた。


しばらくして資料館を出ると、二つある内の左手の道を進む事にした。

少々遠回りにはなるが、蓮の花を堪能出来るため、こっちを選んでみた。


「すごく綺麗だね♪ イクタ村じゃ見たこと無い」


「そういえば、イクタ村もそうだけど、あんまりあっちじゃ花とかって見ないな」


「うーん、言われてみればそうかも…。でもちょっと前までは、もっと咲いてたんだけどね」


「そうなの? 急に咲かなくなったって事か…」


急に花が咲かなくなったという話は若干気になったものの、それっきりその話はしなかった。

蓮に囲まれた道を歩き、階段を上がると広場に到着した。


「わー、すごく広いね!」


スーナは広場の大きさに素直に感動していた。


「スーナなら、あっちに居た時、散々だだっ広い土地を歩いてたんだから、珍しくも無いんじゃ?」


「ううん、ここはあっちとは違った解放感があって好き♪」


「ふーん、そういうもんなの?」


「そういうもんなの♪」


俺にはよく分からなかったが、まぁそういう事らしい。


「わー、見て見て、あそこに綺麗な花が沢山咲いてる! あれって紫陽花だよね?」


「そ、鎌倉で見た奴と同じ花だよ」


「あそこ行ってみようよ!」


スーナは子供の様にはしゃぎ、俺の服を引っ張って急かした。


「分かった、分かった」


花の匂いに誘われる様に、俺達は紫陽花畑に向かって歩いて行った。

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