中章4
皆様お待たせしました!くじ引き完結です!!
とは言ってもくじ引き攻略なんてやり方は限られてきますから、もうわかってる人も多いですよね。
まあ、あのやり方ですよ(ニヤリ)
今回もケイリは無双しますが、今回は数学要素薄めです。まあそもそもこの小説数学物を謳っておきながら全然数式とか出てきませんけどねw
このシーンにこんな数式入れたらいいんじゃないか、とコメントで入れる理由も含めて書いてくれたら入れるかもしれません。
それでは、お楽しみください!!
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「お待たせ。じゃ、行こうか」
「おっ、帰ってきたな」
ケイリは、意外と早く戻ってきた。折角カバンから本を取り出したが、30ページしか読めなかった……バッグに戻すの面倒だな……
「どこ行ってたんだよ」
「ちょっと型抜き屋に……」
「また資金調達してきたのかよ!?」
ケイリは本当に型抜き大好きだな。まあ、型抜きのおっちゃんはケイリのこと大っ嫌いだろうけど。むしろメデゥーサ、いや、無邪気に残酷を押し付けるあたり、フレイヤぐらいに思われてても不思議じゃない。畏怖の対象だろう。
特に欲しいものをどんな手を使ってでも手に入れるあたり、フレイヤに似た所は多い。
……まあ、流石に「フレイヤに似てる」なんてケイリに言ったら、バチクソブチ切れられそうだが……どうしてかは是非「フレイヤ 逸話」で調べてみよう!…………いや、やっぱ……あくまで自己責任でね?
「……それで、いくら儲けてきたんだ?」
「さくっと1070万位……」
「もう型抜き屋の店主涙目だよ!ってかそんな金よく型抜き屋にあったな!!」
全然「さくっと」じゃねえよ!なんだよこの金額は!一体何十軒潰したらこんな金が……
ってホントにあるじゃん、よく裾に入ったなそんな額。……わかったから、もうしまえそんな金。マジでその金目当てで殴られかねないぞ…………いや、まあ確かにケイリの身体能力はすげえけどさ、でも暴力沙汰は結構面倒に……
「ってかさっきからサイレントで会話すんな!札束取り出した時のお前のニヤリ顔描写できてないんだよ!」
「だったらもうちょっとアクト君もしゃべってくれていいじゃん!実際私は札見せただけで、サイレント会話始めたのはアクト君だからね!」
あっ、それもそうか……
「あとニヤリ顔なんてしてない!」
「いやしてただろがっつり!!越後屋みたいだっただろ!!!」
「えっ!?ほんと!?」
あっ気づいてなかったの……?
「じゃ、早速クジ屋に行こう!」
ケイリは型抜き屋を潰したことなんか気にも留めずに、暢気にそんなことを言っている。
ところで、裾は重くないのだろうか…………………………………………まあ、いつでもケイリが察してくれるわけじゃないよなぁ。
ケイリは果たしてクジ屋をどう調理するのだろうか?そもそもクジに勝てるのか?
あそこまで大量の資金が必要……?どういう事だろう?何をするつもりなんだ?
ここのクジ屋には『大当たりクジ多数!』と、なんとも頼もしいことが書かれた幟があった。
『大当たりクジ多数!』と書いてあるということは、きっと他のクジ屋よりも多くの当たりが入ってるのだろう。随分と良心的なクジ屋なんだな。景品も良いものが揃そろっているみたいだし……こうもいい景品が揃ってると引くのが楽しみになるな。
「こんにちは。店主さん」
「お、嬢ちゃん。祭、楽しんでる?横にいるのは彼氏さんかな?」
店主の人も、結構気さくな人のようだ。俺は別にケイリの彼氏ではないが……
「アクト君が……彼氏…………」
「って、おい、どうしたケイリ。顔赤くして。ひょっとして体調悪いのか?」
「だ……大丈夫。ちょっと会場の熱気に当てられちゃって……ね」
それにしては症状が出るのが遅いような……さっきまでは白っぽい透き通った肌だったが、今は紅に塗りつぶされているぞ……息も荒い。声もなんだかごにょごにょしてるし、ほんとに大丈夫なのか?
「まあ、あんま無理すんなよ。時間はまだたっぷりあるんだ。辛かったらすぐに休むんだぞ」
とりあえず、体を支えてやるぐらいはした方がいいのかな?
なかなか座る場所もないし、多分ケイリはくじを引くまでここを動こうとしないだろう。
「あ……ありがと。…………肩抱かれた…………アクト君に………………うぅ…………」
ケイリ、更に顔赤くなってないか?なんかごにょごにょ言ってるし。本当に大丈夫なのか?なんかうめき声も上げてないか?
ケイリは3分以内に元の体調を取り戻し、話を本題に戻す。ってかよく戻せるものだなぁ。体調を一定に保つことができる、っていうまた別の伝説が生まれたというのか……
「……えー、では気を取り直しまして。店主さん、いくらで引けますか?」
「クジは1回500円だよ。嬢ちゃん、それとそこのあんちゃんも。引いてかないかい?」
1回500円か。まあ、景品を考えるとその値段にしないと利益出ないのだろう。ちょっと高い気もするけど、まあ納得の値段設定か。
「あの、店主さん。あとクジ何枚ありますか?」
ケイリは何気なく店主に訊いた。まあ気になるのはわかる。
「そうだねェ……祭も最終日だからねぇ。あと、大体7300枚位って所だね。大当たりはまだ殆ど出てないから出やすくなっていると思うよ。1回引いてみるかい?」
「ところで店主さん。……つかぬ事をお伺いしますが、大当たり景品は必ず全て当たりますよね?」
「何言ってんだい。全て引けれさえすれば全て当たるに決まってるだろう。入ってなかったら詐欺ってことになるだろう?」
そう店主が答えた瞬間だった。俺は見た。いや、見えてしまった。
ケイリの瞳の内側に静かに、際限の無い闇が宿った所を。
俺は身震いした。何をするのか俺にはまださっぱりわからないが、ケイリは必ず行動を起こすだろう。そして、それはきっと店主を絶望という奈落の底へ叩き落とす。型抜き屋なんか、比じゃなくなるかもしれない。
「そうですか……7300枚ですか……多めに見積もって8000枚だとしても、400万円ですか。余裕ですね。全部引かせてください」
そう言うケイリは、何故か口元だけ笑っていた。目はピクリとも笑っていなかった。その顔は、まるで獲物を退屈そうに嬲る猫のようだった。
「はっはっは、嬢ちゃん、冗談は言っちゃいけないよ。そもそもそんな金が何処に……」
「金ならあります。400万ぐらい余裕です。ほら、400万、ここにありますよ?」
ケイリは振袖から、例の札束を取り出した。どこの成金だよこの光景……
「……………………」
あれ?全部引かせてくださいって言っただけなのに、クジ屋の店主さんが笑顔をどんどん引き攣らせていってる。心なしか、顔も青くなっていってる気がする。なんでなんだ?
「勿論、引かせてくれますよね。疚しい事なんて何も無いですからね。」
そう言うケイリの顔は、無邪気に笑っていた。だが、その笑みには、恐らく10代は、いや、この世の98%は微塵も含む事の無いであろう漆黒の闇を間違いなく含んでいた。
そして相変わらずクジ屋の店主は蒼褪めた顔をしている。普通に引かせれば済む話だと思うのだが………っと、そういえば、ケイリは「疚しい事」だなんて、なんだか物騒な事言っていたな。
「なあ、ケイリ。なんで『全部引かせろ』って言っただけで店主がこんな反応をするんだ?」
「あのね、さっき店主さんは『大当たりが殆ど出ていない』って言ってたでしょ。こんなにも沢山たくさん大当たり景品があるのにも関わらずね。この場合、考えられるパターンは2つしかないんだよ
まず1つ目が大当たりが奥底に埋まっている場合。まあ、本来クジっていうのは全部引いた場合、景品の総額よりも収入が多くなるはずだから、この場合はあんなに焦る必要が無い。利益は想定した分出るんだから、全部買ってもらうことは得でしかないからね。
すると、残されたのはもう1つのパターン。そう、このもう1つのパターンが、店主さんをここまで焦らせる原因。そして、店主さんがこの祭で儲けるためのからくりなんだよ」
儲けるためのからくり?なんなんだ?
ケイリはただ笑顔だけを浮かべて、俺を見ていた。どうやらからくりの答えとやらを自力で導いてほしいらしい。
えっと……全部引かれると都合が悪い……1、2回ぐらいなら大丈夫なのに……沢山やるとバレてしまう?……そもそも『大当たり』はいくつ出たのだろう……もし仮に『大当たり』が《殆ど》ではなく《ひとつも》出ていなかったら…………
「……って、まさか!」
「気付いたみたいだね」
ケイリは得意げにそう言った。
「そう、もう1つのパターンは、そもそも大当たりクジが一枚たりともない、ってパターンだね。
店主さんは『殆ど出てない』って言ってたけど、それは少しだけ違う。本当は大当たりクジが、いや、当たりクジ自体が、1枚たりとも無いんだろうね。そして、クジ屋の店主は、ついさっき『全て引けば全て当たる』と言ってしまった。それなのに、クジを全て引いても大当たり景品が余っているってなったら、可笑しいよね。このクジ屋が詐欺を働いていたって事だからね。
そうなると、刑法246条1項の、いわゆる詐欺罪が成立するはずだから、刑事沙汰になりたくないクジ屋の店主さんは今みたいな反応をするって訳」
「でも、『そんな事言ってない』って言われたらどうするんだ?店主がそんな事言ったっていう証拠が無いだろう?」
「証拠ならあるよ」
「何処にあるんだよ」
「へっへーん、こんな事もあろうかと、さっきの射的屋で録音機を取っておきました!それも、『超小型ボイスレコーダー ア〇バンス』だよ!」
何でそんな物が置いてあるんだよ!あの射的屋は!
しかもまあまあ高性能な録音機だし。『〇天市場』で5000円するやつだぞ。
「その録音機でクジ屋の店主さんとの会話を全て録音してるんだよね。だから、証拠は充分だと思うけど?」
「化け物め……お前のIQはどうなってるんだよ」
きっとIQ370以上はあるぞ。こいつは。
「まあ、私的には欲しい景品が多くそろってたから全部引かせてくれても全然よかったんだけどね」
「結局どっちに転がっても良かった、録音機は只ただの保険でしかなかった……と。お前は一体どんなパターンまで考慮していたんだよ……」
「さあね」
飄々と言ってくれる……
「……と言うわけで、店主さん、引かせてくれますよね?」
……あ、悪魔だ……セリフ1つで外堀を埋めて、逃げ場をなくしていく……もうなんか悪い事をしている筈の店主が哀れである。
……あれ?何故だろう?この悪人に対して同情の念が沸き上がってきた。なんかすごいかわいそうになってるけど…………でも、おっちゃんのせいだからなぁ。
「もう一度だけ言います。店主さん、ひ・か・せ・て・く・れ・ま・す・よ・ね・?」
「ひ、ひいいぃぃぃ!お、お助けをぉぉぉぉ!金はいくらでも払いますからぁぁぁ!」
「あら、そんな事はしなくて結構ですよ。大当たり景品を全部くれればそれで私は満足なので」
「は、はひぃぃ。いっ、いくらでも持っていって下さいぃぃ」
「ありがとうございます。もう二度とこんな事しないで下さいね」
「は、はいいいぃぃぃぃぃぃぃ。ありがとうございますぅぅぅぅ」
そして俺たちは、大当たり景品を大量に手にしてクジ屋を去った。
「……あいつ、さらっと俺らの話を盗み聞きしてたな。全く『証拠は-』とか言わなかったし……」
「まあまあ、盗み聞きしてくれたおかげで、争い事も起こらずに、そして金も払わずにスムーズに景品をゲットできたんだし、良いじゃん良いじゃん」
「まあ、ケイリが良いならそれでいいんだけどよ。……あ~、それにしても、腹減ってきたな」
「そうだね。もう日も落ちてきたしね。私も頭使ってお腹減っちゃった」
「どっかで飯買うか」
「そうだね。じゃあ、食べ物の屋台が沢山ある所に行こう」
ケイリと俺は、ケイリが取り出した祭地図を凸を突き合わせながら眺め、次に移動する場所を決める会議を行った。
なんだかケイリの御凸がドンドン熱くなっている気がする……まだ体調はやっぱり戻ってなかったのか。鼓動もなんだか早くなっていってないか?っていうかケイリの拍動が分かるってことは……俺の脈もケイリに知られるってことじゃないか。なんか恥ずかしいな……
俺達の祭は、敗北を知らないのだろうか?
はい、という訳で、少し前に流行った『祭クジ全部買う』ってやつです!
パクリではありません、オマージュです!wまあ、数学使わないので、それはどうかと思いましたが……
まあ、ケイリは地頭がいいということでw
……拍子抜けした人がいたなら……ゴメンナサイ……
ぶっちゃけクジ自体は刑事にとれるか分からないんですけど、そのための理由付けとしてわざわざ全部引いたら当たる、って言わせたんですが……ぶっちゃけ詐欺罪が適用されるかは微妙……まあ、この世界線では成立するってことで。成立しないのであればコメントで教えてください!w
それでは、次も首を銀河の直径にして待っていてくださいw
ではでは~