エピローグ ムゲン
遂に最終話!!!
ここまで来るのに長かったし、最終話の投稿までも長かった。
締めって難しい、、、
期間空きましたすみません!!!
という訳で、最後。
書いてる途中に何度もためらいました。終わりがこれでいいのか、と
でも、もう出します。
それでは、お楽しみください。
xy
「……すっかり、待たせちまったな」
『やあ、アクト君。久しぶり』
俺は、2年前花火を見た時の位置そのままの場所で、にこやかに2往復だけ手を振ったケイリを視認する。
何も変わってないその立ち姿。
ピンクの桜もいつも通り、なぜか秋の景色によく映えているし、背の低さも相変わらず。
俺は心地いい安心感を覚えた。
『早くこっちきてよ。また答えまであと少しのとこで立ち止まって。何度間違えたら気が済むのさ。ただでさえレディを待たせておいて。……体もボロボロじゃん』
ケイリは失笑なのか、面白がっているのか、はたまた別の感情か。笑いながら文句をつける。
「あのなあ、お前と違って俺は全く以って数学が得意じゃないんだよ。お前だったら確かにあの3問をひと目見ただけで……いや、見る必要もなく解けるんだろうけど、普通の人間はそうはいかないんだ」
俺も、あのケイリらしい理不尽を思い出し、笑いながらも苦情を返す。
『でもあれら結構難易度を君用に下げたんだよ?1問目に関しては最早数学じゃなくて算数だったしね』
え……マジ?
『いや「え……マジ?」じゃないから!小学生でもできるよホントに!』
最近の小学生はすごいんだなぁ……
『いやだからそうじゃな・い・の!!君どんだけ苦手なのさ!!!!』
えっそんなに……?
『そ・ん・な・に! あと、私が心読めるからって言葉を発するのをサボるな!2年ぶりなのにそっけないじゃん!!』
「いや始めに読んだのはそっちでしょ。[え……~]は別に伝えようとは思ってなかったから内に潜めたわけだし……」
『あー、もう!うるさいうるさいうるさーい!』
「えー」
誤魔化し方もそのままだなぁ。
『それと、いくら私だって、問題見ないと答えには絶対辿りつけないからね!私を何だと思ってるの!!』
「言葉の綾だよ。そんな細かい事気にすんなって。徒でさえ少ない髪が無くなるぞ」
『違いますぅ!少ないんじゃないんですぅ!ちょっと短いだけなんですぅ!スポーティーなんですぅ!本当は長く伸ばしたいんですぅ!』
なんでそんな煽り口調……
いや多分気付いてないだろうけど本人は。
「おいおい、必死だな。そこまで言うなら伸ばせば良いじゃん」
それにお前スポーツしてないだろ。なにがスポーティーだ。
『だって手入れの時間がもったいないんだも~ん』
まあ、ケイリの事だからこんな事だろうと思ったよ。
……この今までのマシンガン掛け合い然り、ケイリの行動原理然り。
全く、何もかもが久しぶりだ。
俺はマシンガンが切れたあたりで、最後の7m程をようやく進み、ケイリの2歩手前まで歩みを進める。
……しかし、長髪のケイリかぁ……
対象は目のすぐ前にいるのに、ついつい上を向いて想像してしまう。
そして、ケイリの真ん前にやってきたあたりで、脳の想像、、、いや創造に、本人を照合させる。
俺はふと、心を漏らした。
「……でもまあ、伸ばしてみても似合うと思うけどな。俺は」
『……え?』
ケイリは露骨に頬を髪と染め、あからさまにキョドる。
『……そ、、、そう……かな?』
ケイリはその姿に思いをはせているのであろうか、目を軽く閉じて空を、、、いや、元から俺を見てるから首の角度は変わっていないが、恐らく上を眺めているのであろう。
頬はさらに紅を濃くし、秋の桜を華やかに彩っていた。
数瞬だけの刻が過ぎ、ゆっくりケイリは瞼を上げた。
すると、遠慮がちに笑って、
『……じゃ、、、じゃあ……の、、、伸ばして、、、みようか、な?』
少し躊躇いがちに、ケイリはそう言った。
恥じらうケイリを、学校生活では全然見かけなかったのだが……あの祭の日は、よく見かけたっけ。
「ああ。それが良いんじゃないか?長髪のケイリも中々に新鮮だろうし」
『そう?エッヘヘ~」
すっかりご機嫌なケイリ。
さっきのマシンガンツッコミ時とは大違いの、乙女だった。
上機嫌なケイリは、もう羞恥心は消えたようで、
『髪が長くなったらバイクに乗りたいなぁ。風になびいて髪がサラサラ~ってなってるのに私、すっごく憧がれてるんだよね』
わくわくが隠せない、いや隠そうともしてない様子である。
この切り替え様はさすがと言わざるをえまい。
「ちゃんとヘルメットつけろよ。危ないだろ?」
『私んちでやるからいいよ。私道なら合法だよ?』
いやそういう問題じゃないし……
『あっ、もしかして、スペースの問題考えてる?大丈夫だって。ほら、見たでしょ?私の大豪邸』
いや確かに見たけどさ?
…………アレ見たの君の遺影にお線香上げに行った時なんだけど……
確かに広かったけど……それをスゲー、って眺める余裕は全くなかったんだけど……
てかそうじゃなくて!
「私道なら合法とかそういう事じゃないからね?危ないってこと自覚してる?」
『1回死んだらまあ気にしなくなるよねぇ。2度目も3度目も一緒よ一緒。まあでも免許まだ取れないから乗れないなぁ』
「私道なら合法って言ってるのに免許気にするんだ……」
基準がようわからん。
……ん?ってかさ、
「今更過ぎるけど、よくよく考えたらなんで死んだケイリが見えてるの!?」
『いやほんと今更だね!!てっきり気にしない方向で行くのかと思ってた』
いやすんません。
会話が一回落ち着いちゃったからね。仕方ないね。
「俺が見てる幻覚って訳じゃないよね!?」
『まあ私は私だからね。君が幻覚を見ていようと本物を見ていようと、ここに私がいることには変わりないよ』
まあこう言った私含めて幻覚って可能性ももちろんあるけど、と付け足されたが……まああの問題が偶然とは思えない。
あそこまで正確なのは多分ケイリじゃないと作れないだろうし。
それにひとまず本当だと思わない限りは話が進まない。
今更幻覚だったところでどうしようもあるまい。
「……でも、君は確かにあの時轢かれて、砕けて、飾られて、焼かれて、ツボに詰め込まれて……」
『やめて!生々しく言うのやめて!砕けてって何!?あと飾られては今回の場合不適切でしょ!!』
ケイリのマシンガンツッコミが再び火を噴き始めた。
まあこの勢いは脳内では再現できないような気がする。
『てかなんで君来てくれなかったのに知ってるの?私の家系予言者なんて肩書背負ってるせいで仏教になんか知らんけどめっちゃ嫌われてるんだよ!?日本では火葬が当たり前になってるけど全然そうじゃない可能性もあったよねだって仏教の葬儀じゃないもんね!』
「何気にサラッと新情報を出すな!いつ使うんだその情報!!最終話だぞ!!!」
『ええい知るかー!!!最終話など犬に食わせておけー!!!!!!』
(メタいメタいあと食わせないで君たちの再会シーンなくなっちゃう!!:ひっさびさすぎる最後にでしゃばる編集部)
『それで、なんで知ってるの?アクト君が』
「まあ火葬ぐらい日本人は多分そんな可能性考慮しないでそう予想するだろうけどなぁ」
みんなもそうだよね?
「まあでも、なんてことはないぞ。フツーにケイリの親御さんに聞いただけだから」
『あっそう、聞いたんだ。……聞いた!?』
「うん、聞いた」
『うちの親に!?』
「君の親に」
線香上げに行ったときにね。
『なんて文言で聞いたのさ!?「そちらのお子様、どのように葬られていったのでしょうか?」みたいな感じ!?よく聞いたねアクト君!ワンチャン不謹慎だとか言われてぶん殴られてたかもよ?あとよく教えてくれたね私の親も!フツーにぶん殴っていい場面だよ結構心広かったんだねうちの親は!』
アレ?確かに……
今思うと、確かにそんな事よく聞いたな……
いやマジで半殺しにされててもおかしくなかったぞ……
『ねえあとさあとさ言って良い?良いよね!ついでに言えばさ私、自分の葬儀に自分で出席したんだよ?なんでかって?生まれて初めて参列する葬式がこれだからだよ初体験んだからだよ好奇心だよ!!わかる?私の遺体の前で泣きながら別れを告げる友達とか親戚とかをずっと眺めてるんだよもうどんな気持ちでいればいいか!死んでも成仏なんてしない!天国になんか行かない!これ世界の理だから!!しかも「泣かないで。ちゃんとここにいるよ」とか答えようとしても多分私の姿も声も見えないし聞こえないみたいで全然泣いたまま。ある親友に至っては脱水症状起こして終盤ぶっ倒れたんだよ?葬儀に出席する際は水分補給を忘れずに!!!』
確かに居た堪れないな……
自分の死体を眺めるのも嫌だし友の泣く姿も見たくはない。
てかいくら初体験とはいえそんな状況でよく最後までいたんだなぁ……好奇心凄すぎだろ……
『しかもまだ葬儀は良いよ!いや良くはないけど!問題は火葬式だよ火葬式!私の遺体が燃えるの!!燃え盛るの!!!私試しに中に入ってみたよどうなってるのか気になって!!!』
謎のやる気は何なんだ……
好奇心はどこでも発揮すればいいってものじゃない。
……これが天才の思考回路だ。参考にしない方がいいぞ。
『私を構成してたものがドンドン二酸化炭素とか水とかに変わっていくんだよ!人って呆気ないね!十数年の歴史も最後に残るのは骨だけ。自分の骸骨の何と醜いことよ!こんな姿見せられた私の気持ち!!もう居た堪れないとかその次元はとうに超えてるよあと意外と炉は熱かったよ2度目の死を迎えるかと思ったよくれぐれも入らないように!』
安心しろ、そんな無謀なこと考えるのはケイリしかいない。
……ほんとに危険だからやめようね?
てか、熱は感じられるんだ……
でも意外とで済んでるのはケイリがすごいのか、それともやっぱり熱は死ぬと感じにくくなるのか……
『いやーほんと災難だったよ。正にこの体験こそ「私、呪われてるかも」と愚痴をこぼすに適当だよ!』
「……災難だったね」
あと唐突な微妙に分かりにくいネタやめてください。確かに主人公の口癖だけど、5期では意外と言ってませんからそのフレーズ!
つい先日TVシリーズ最終回も終わったけど。
……悲しい。
『ほんとだよ』
その返事はどっちだ。
心読んだの?それとも今のに対する同情?
『……と、じゃなくて、私が君に見える理由だよね。』
おっと、そうそう。そうだった。
「それで、どうなんだ?」
『……えっとねー、、、ぶっちゃけわからん!』
「ええ~」
そんな無体な。
『だってわかんないんだもん。とりあえず死者が成仏せずにこの世界に残り続けるのは分かった。でも、今日まで姿が見られることは無かったわけ。何度か君を見に行ったけど、その時だって君は私に気付いてくれなかったんだよ?目の前を通ってもね』
あれ?目の前通られたことあったの?
『それに去年の祭アクト君来てくれなかったし。折角祭を回ってたのにさぁアクト君素っ気ないから』
いや素っ気ないって……いや、ごめん。
『どーせ今年も来ないんだろうなー、とか思いながら昨日もやっぱ来なかったし。もうほんと何もできないのに回るっていう不毛なことしてたんだよ延々。いい運動になったよ全く。それで今日も来ないのかなぁみたいに思ってたら、息切らしてる少年を見かけたんだもん待たせすぎだよ』
いやほんとごめん……
『もうこうなったらただで楽はさせてやらん、2年越しに嫌がらせしたろう、って思ってあの問題を用意したってことさ』
そうだったのか……
ほんとすみませんでした……
「でもさ、どうやって問題作ったの?姿は見えないのに物は持てたって事?ポルターガイスト?」
『まさか。私は触ってない。てか幽霊なんだから触れるわけないじゃん。あの問題は確かに私が作ったものだけどね、実は私が作ったんじゃないんだよ』
……へ?なに?哲学?
『へっへっへ、私だって2年も独りぼっちだったわけじゃないよ。なんやかんやあって、友だち兼先輩兼師匠ができたのだ!それが、あの神社の祠の女神様』
「アレ女神祭ってたの!?」
『いや別に祭ってていいでしょ!?……てか突っ込むとこそこ!!??』
いや確かにその通り。
でもなんかどっちかというと神獣とかかと思ってた。八岐大蛇とか、ケツァルコアトルみたいな。
そうでなくても男の神だと思ってたんだよなぁ。
あと神様とダチ、なんてのはもうケイリの伝説を構成する1要素でしかないんだよなぁ……数々の伝説の中に埋もれてしまう程度のことでしかないよ女神様すまん……
『てか元々豊穣の神だからね?この町の農家一帯を守る。豊穣の神は女神って相場が決まってるじゃん』
「いや確かに多いけど」
イザナミ様もそうだしね。
『あとね?その女神様、「おっぱい」の神様でもあるらしいよ。「おっぱい」の!むっちゃデカいよむっちゃ。しかも神様も中々にないすばでーだぜ?さらに見た目もめっちゃ若いんだぜ?どーよ』
なにがだ。
しかも強調してるのが完全に中学生男子のそれだよ。
キャラ崩壊どうなってるんだよ戻ってこーい。
『それで、その女神様と、折角だから一緒に祭を回ってたの』
瞬時に平然へと直ったな……
変動が激しすぎる!
『丁度君のことを話してた時だよ?君を見たのは。「女神様、アイツです」みたいな感じでさ』
ヒットマンと依頼人かな?まあその手の話に触れたことないんだけど……大体こんな感じじゃない?
『そしたら、「どうしたいの?」って聞かれたから、「アクト君とまた花火が見たい!」って言ったんだよ。そしたら、「じゃあ叶える」なんて粋なことを言ってくれたの。「どうするの?」って聞いたら「生み出す。どこで見たい?」と力強い一言。だから折角ならと、ここで見たいって伝えて、ついでにさっきも言った通りアクト君苦労させたろと思ってたから、問題解かせてたどり着かせたいって言って、問題ぱっと作って、紙に書いてもらって、風に流したの。そしてその問題の答えの地点に行って、また問題を作って、今度は電柱に貼ってもらう。そして最後は、折角だから女神様にご挨拶でもさせようと思って、さっきの問題の答えをピッタリ祠の前に指定しておいたのだ!ちゃんと参拝した?』
えっと、、、まあ、、、霊力的なのは感じたよ。うん。
いたって気はしたよ。力は感じたよ。もちろん。
……サーセン。挨拶らしいもの何もしてない……
『そして、最後の問題!5回ぐらい内容を聞きなおされたけど、何とか、しかも神聖な境内の地面に描いてくれました!!しっかりと感謝しながら問題解いたよね!!!』
あ……
サーセン……
解いてないや……
てか神様が問題描くのに一苦労って……お前どんな感じで出題したんだよ……どうなってんだ世の中……
『それで、最後の問題を作った後に、「やっぱアクト君とは直接は会えないよねえ……触れ合えないよねぇ……」みたいにぼやいたら、きっぱりと「無理」って言われちゃったから。「神の権限でさえも魂の前では無力。すまない」なんて謝られちゃって』
いや神様クールだし良い人すぎるだろ……
平民に頭を下げるなんてなんて、良い神様に守られてるんだなぁこの町は。
『でもさあ、世界はこういう時冷たいよねぇ……キッパリと不可能の壁を形成するんだよ。私たちを嘲りながらさ。でも、君の姿だけでもしっかりと焼き付けておきたかったから、少女らしく健気に待ってたんだよ?』
〈少女らしく〉も〈健気に〉も自分で使うものじゃない。
『そしたらあら不思議。アクト君はやってくるなり私に急に話しかけてくるじゃありませんか。しかも気障なセリフ吐きやがってよぉ』
いや気障なって……
いやごめん、確かにアドレナリンかなんかが出てて調子乗ったかもしれない。
『あの時すごい平然と返した風だったけど、めっちゃ驚きで泣きそうになってたんだよ?2年ぶりに君が私を見てくれたんだって思って。ホントさも当然であるかのように反応することを物語の構成上強いられてたわけだけどさ!もう泣くよ嬉しいもん2年間友達一人だけは寂しかったもんびえええーん』
「めっちゃ急に来たな!ああもう泣くな泣くな!咽び泣くな!この掛け合いも久しいな!!ああもう落ち葉で涙を拭おうとするなツッコミが追い付かない!!」
第一持てないんじゃなかったのか!!
『……じゃあ、さ、』
おっおう、、、なんだ、急にテンポが下がったな。
「どうした?」
『……胸、、、貸してよ』
「えっ……」
俺は少し、息を吐くのを忘れた。これはまたからかいなのか、それとも……
「……胸?」
『……ん?って、アレ?おかしいな。見られただけでも奇跡なのに、触れないってわかってるのに、強欲だね。ごめんね?変なこと、言ったよね』
ケイリは誤魔化すように笑う。
でも、その笑顔に差す翳りを、俺は見逃すことができなかった。
「じゃあ、お望み通り貸してやる」
『えっ!?』
俺はすぐさま、ちょっとだけ強引にケイリの頭を包み込む。
『……むぐう!!!』
ケイリは間抜けな声を漏らした。
ヒュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~、ド~~~~~~~~~~~~ン
それと同時に、花火が二人を照らした。
「おっ、始まったみたいだな」
『あっそうだね。……じゃない!ちょっちょっと苦しい。もう少し緩めて!』
「あっと、ごめん」
俺はケイリの背中に回した腕の力を弱める。
『てか花火も見えないし』
「あっそうだな……すまん」
『いやいい。こっちの方が絶景。……君の顔を、真下から望めるから』
「そうか」
ケイリは顔が真っ赤になっている。
俺は……どうなんだろう?
でも、少なくとも、今は俺にとっても、絶景だよ。
『……ん?アレ?……なんでアクト君、私に触れるの?』
「知らん」
『うぇ!?』
ケイリはまたも間抜けな声を漏らす。
「だから、知らない」
『知らないって』
「幽霊のことは何も知らないし、原理なんて当然わかる訳ない。……でも、ケイリは幽霊なんかじゃない。だって……こんなにも、温かいんだから」
『アクト君……』
ケイリの身体は、放熱を少しだけ増した。
ちょっと熱いぐらいだが、こっちの方が、断然心地いい。
「ねえ、ちょっといいかな?」
『何?』
「これ、解いてよ」
『これって?』
「コレ。画面、見えるかな?」
『見えたよ。私を包む逞しい腕が一本も離れちゃったけどね。……ええと、なになに?「128√e980」? ん?これって……………
……………………!!!』
「分かった?」
『……もう、、、私に解かせる意味ないでしょ』
ケイリは再び、黄金の雫を決壊させた。
「おいおい、脱水症状でぶっ倒れるなよ?」
『ブラックジョークもやめてよ。……これ、、、全然数学じゃないじゃん』
「根が文系だから、こんなのしか出せないんだよ」
『しかも既存の問題引っ張ってきただけでしょ。コレ前ネットで見たよ?』
「バレちゃったか」
咄嗟に浮かんだのがこれしかなかったもんでな。まあパッとかけて楽だったし。
『この答えは「I LOVE YOU」。上半分をうまく隠すと文字が出てくる』
2を絶妙な具合で書けたらホントそれに見えるから、今度是非やってみてほしい。
今回は活字だから、ちょっと歪だけどね。
『ねえ、これって……』
「まあ、もうとっくに分かられてかもしれないけどな。
……返事が、随分と遅くなってしまったな。答えを返すのに、2年も掛かっちゃったなんて。
まあ、とにかく、そう言う事。もしかして、2年のうちに他の男に目移りしちゃった?」
『まさか、そんなわけ無いじゃない。私は一生……って言っても私の人生はもう終わっちゃってるけど、、、ずっとアクト君一筋だよ!!……う……びえええーん』
「やれやれ、もっと品がある泣き方に……いや、こっちの方が俺らにふさわしいかもな」
俺はケイリを抱く力を強めた。今度は何も言われなかった。
君はもう、死んでなんかいないさ。君は今宵、復活したんだよ。
だって、死人が涙を、流せるのかい?
『ずっとずっと寂しかった。ずっとずっと怖かった。アクト君が、アクト君が私を忘れてしまうんじゃないかって。私の軌跡が、跡形もなく消えてしまうんじゃないかって』
「でも、その軌跡は消えなかったんだ。俺の中に生きたケイリは、色褪せずに残っていたんだ」
『本来は、触ることも、視認されることさえ許されなかった』
「でも、今のケイリは、なんでもできる。お前の望んだとおりにな」
ケイリは、やっといつものケイリらしい、明るい笑顔を浮かべた。
『ねえ、アクト君』
「どうした?」
『ほんとに私でいいの?』
「何を今更。お前じゃなきゃダメに決まってる」
『そっか。じゃあ……』
そう言うなりケイリは、うんと踵をあげて
お互いの唇を、そっと、繋ぎ合わせた。
そのまま、5秒間。
いや20秒?1秒未満だったかも?
……そんな曖昧な時が流れ、名残惜しくも、花弁を離す。
『へへ、ビックリした?』
ケイリの少年みたいな屈託ない笑顔。
悪戯が成功したみたいな、、、いや、実際ちょっと悪戯、みたいな感覚もあったのだろう。
だが、俺の心を満たしたのは、最上の幸福感だった。
『ちょっと、、、今度はアクト君が泣くの?』
「えっ?」
俺は頬に少しだけ意識を向けた。
一筋、濡れていた。
「、、、なんだ、花火全然打ち上がらないな」
『な=に誤魔化そうとしてんの。しかもさっきからドンドン打ちあがってるから。……まあ、私も全く聞こえてなかったけどさ』
一粒ずつ、正確に道筋をなぞる雫。
それが止まることは、なかった。
『やっぱアクト君も泣き顔似合ってないじゃん』
「……うっさい」
『拗ねちゃって~、可愛いヤツめ』
ケイリは俺の頭を撫でてきた。
『おや、アクト君意外と癖っ毛なんだね。寝ぐせ直すの大変でしょ』
「いや確かに大変だけど、、、ムードってものを少しは考えろよ」
『いやー、ごめんごめん。つい気になっちゃって』
「はー、全く」
自由奔放な奴め。
「ケイリ」
『うん』
「今、最高に幸せか?」
『今までの人生では、間違いなく。でも、これからの人生においては、全然足りてない』
「だよな。運命に幸せを許されなかったお前だ。ようやく今までのマイナス分が帳消しになったぐらいだろ?」
『あったりまえじゃん。売られた喧嘩は買う!運命だろうと、なんだろうとね』
「こっちが被害者で、あっちは謝罪する気はない」
『なら、どんなにやり返したっていいよね』
「不幸はいづれ、幸福に変わる」
『運命が何をしようと、私たちの魂のつながりは決して破れない』
「運命が俺達を引き裂くというのなら、何度だってその運命を引き裂こう!」
『例え無限回の不幸を運命が与えてくるなら、無限+1回の幸福を私達で築くんだ!』
「もう運命には振り回されない!絶対の幸福を!!」
『あの花火を象る、円周率のように永久に続く幸せを!!!』
「俺達で、」
『私達で、』
「『勝ち取ってやるんだ!!!!』」
ありがとう、ケイリとアクト
想えば、始まりは4月。読者が最も嫌う『キャラ設定の垂れ流し』を行った挙句、投稿ペースも伸ばし続けるという頭おかしい行動から始まった本作。
感想が来たのに放置して、いろいろ迷惑をおかけしました。
さらに夏に終章を終えるも、エピローグに更に2か月近くを要する始末。
その間に意味わからない作品創りましたしねw
そんなこんなでここまでやってきた皆様、お疲れさまでした!!
ほんと普通なら1部分目でブラウザバックですよねw
しかも終章の終わり方に比べて、今回のエンドは「打ち切りか?」と思われるほどの感じ
納得いけた終わりにできましたでしょうか?
そうでないならば、いつか文章力が上がったその時に、改稿でもしましょうか
ホントにお読みくださりありがとうございました。
次回作の案は実はもうできています。
毛色は違いますけどw
まあ気長に待っていてください。w
それでは、またすぐに。




