表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/132

決着

 アーニーとロドニーは対峙する。

 アーニーの背後には、燃えさかる城塞だ。逃げ場はない。


 門の前にいるロドニーからは距離が離れている。双方ともロングソードを両手に構えている。


 別にアーニーはロドニーに殺されて、タトルの城塞に死に戻っても構わないのだ。

 だが、決着をつけたいのは双方同じだ。


 ウリカやポーラへの仕打ち。街の略奪宣言。力をかさに着た横暴な言動。全てが許せなかった。


 ロドニーもまた、戦うつもりのアーニーを見て、一瞬不審に思ったが考え直す。

 決着をつけるつもりなのだ。望むところだった。


 ロドニーは思考を巡らせる。


(弓なしだが奴はレンジャー……もしくはその派生。短剣による致死狙いはなさそうだが。まずは様子見)

 彼はパッシブスキルで先攻行動、先手を取れる。


「【全気力充填】からの――【剣気・真空斬】」

 彼はSR+の【戦巧者(バトルマスター)】だ。二連続行動による速攻だ。並の軽装職ならこれだけで倒せる。


 アーニーはその剣気を弾き返す。


「パッシブ先攻持ちか。【四式・魔法の矢】を最大行使。行け!」


 行動回数が多くても先に行動される相手には不利だ。

 確実に倒すにはどうするか。様々な可能性を考慮する。


 一方のロドニーは信じられないものをみた。

 総勢五十近くの魔法の矢が、敵の周りを飛んでいる。


「マジかよ!」

 思わず舌打ちが漏れる。

 どうみてもレンジャーにしか見えない敵は、魔法戦士だったのか?


 二回行動以上しているようにも見える。ありえなかった。


 躊躇しているうちに魔法の矢が全て飛んでくる。

 一発一発命中するたびに激痛が走る。

 威力も重い。血を吐いた。魔法戦士の魔法威力ではない。


(痛ぇ! 軽装を来た本職だったか?)


 遠距離はまずい。今の一撃で総HPの三割は持っていかれた。


「くそ。弓もってねえのはそのせいかよ! 【縮地】」

 一気に距離を詰める。

 必中スキルで攻撃すれば、軽装職など敵ではない。


「これには耐えられまい! 【剣気・竜牙斬(ドラゴンファング)】 」


 牙系と呼ばれる剣気を利用した攻撃の最高峰。これを使えるものは【戦巧者】を含め極少数の、一部職のみだ。ドルフやニックさえも、まだ所得できないほどの高難易度技だった。

 

 モンスター最高峰の竜に例えられたその威力、推してしるべし。

 その牙は折れず、どんな鱗もかみ砕く鋭さを持つ、個体へ与えるスキルの、最高峰の一つ――


 アーニーはその攻撃を、ロングソードで受け止める。

 あまりの衝撃によろめき、血を吐く。体中に裂傷が走り、血が吹き飛ぶ。

 本来なら肉体が爆発四散してもおかしくない衝撃――


「まだ生きてやがるだと?」


 アーニーはこたえず、不敵な笑みを返した。


 アーニーもまた、相手の行動を読もうとしていた。


 【先制】持ちだ。たとえ四回行動できようが、先に殺されては意味がない。

 【戦巧者】は多くの必中スキルも持っている。

 パッシブでHPが増え、【竜牙剣】の保護があってもなお、ダメージレースでは遠く及ばない。


 しかし、アーニーもまたロドニーへの殺意は尽きていなかった。

 相手の全てを上回り、倒さねばならない。


「竜牙斬か。ならば面白いものを見せてやろう。俺の愛剣は、竜の牙で出来ていてな」

「は?」


 アーニーの行動開始――


「【四十一式・火炎付与】」

 アーニーの長剣が灼熱の炎を帯びる。【竜牙剣】は火炎攻撃増大だ。赤熱し、それを通り越して白熱する。白熱した刀身は禍々しい。


「【無拍子】」

 【無拍子】は必中スキルだ。攻撃タイミングを相手に悟らせないことによって、必ず相手に攻撃を攻撃を加える。たとえ相手が回避やカウンタースキルを使っていても、無効化する。


「【渾身】」

 【渾身】は、スキルや通常攻撃の威力を跳ね上げる。


「さ、三回行動だと!」

 ロドニーは瞠目した。

 個人でそんなことができる職やスキル、聞いたこともない。


「真の竜牙斬、見せてやろう。【竜牙斬・劫火式ドラゴンファング・タイプヒート】」

 【竜牙剣】に秘められたスキルを発動する。

 本来は特殊な戦士系統しか使えない【剣気】の最高峰技。だが火竜の牙で出来た【竜牙剣】は別だ。剣気を炎の魔力で代替したのだ。


 白熱化する刀身は金属さえも容易に溶かす。


 ロドニーは信じられないものをみた。【先攻】が発動しない。まだ彼の行動順は回ってこない。


「四回だとぅ?!  くそがぁ!」


 剣気の代わりに炎を糧として――


 一切を焼き尽くす刀身はロドニーの鎧を紙のように切り裂きく。彼は両断された。


「ば、化けもの……」

 絶命した。


 アーニーは答えない。死にゆくロドニーを冷淡に見つめていた。


 その場で死体は消える。

 

「アーニー。終わった?」

 ポーラが門をくぐって来ようとした。


「くるな。危険だ」

「? まだ?」

「くるだろうな。そこにいろ」


 アーニーは燃え盛る城塞を睨みつけた。

 ――残心を解かない。決して油断はしない。


「うおぉぉぉぉ!」

 全身燃え盛りながら、ロドニーが剣を構え、特攻してくる。肌は焼きただれ、髪は燃えている。高HPだからこそ可能な脱出だった。


「祝別装填。【二十二式・火球爆発】」

 【竜牙剣】に祝別されたダメージクリスタルを装填し、火球爆発を放つ。

 戸口から出た瞬間のロドニーに火の玉がロドニーに命中し、大爆発を起こす。直撃で胴体に穴が開き、爆風で炎のなかに押し返され、再び絶命した。


「ポーラ!」

「はい! 【石の壁】」

 正面に石の壁を設置する。


「どれぐらい持つ?」

「丸一日は持つよ。内部から攻撃を受けたらもう少し短くなると思うけど」

 城塞自体は木造だが、大抵の城塞は魔法で強化されている。石壁よりも破壊するのは困難だろう。


「相手も必死だからな。非常口すべてに石の壁を」

「わかった。しかし、敵ながらすごい根性ね」

「本当にな。強敵だった」


 たまに石の壁の向こうから激しい音がし、やがて途絶える。

 炎の城塞が燃え尽きるまで、死に続けるのだ。


 彼は燃え盛る城塞をただ、眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ