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神引き一枚抜きに思わず嫉妬?

 二人がノラエガの街をでて、一週間経過した。

 中継地の街、コッパーの街に到着した。


「これなんてどうでしょうか」

「報酬は、魔霊石5個――決まりだな」

 

 お互いが連携するために、冒険者組合の依頼をこなそうと話が出たのだ。

 今回選んだ仕事は魔物化した熊退治。ブルーベアの討伐だ。

 このブルーベア。普通の熊ですら手強いのに、魔物化したので魔法も使ってくるのだ。


 クエスト選択もルートボックス重視なのが二人らしかった。


 二人は宿屋で、打ち合わせを行う。

 アーニーが別部屋を希望したが、ウリカが野宿を共にしている以上、二人部屋が良いと主張したため相部屋になった。

 二人連れの冒険者は珍しくないので宿屋としては問題ない。


「ああ、天井があるっていいなあ」

 部屋についたアーニーは、天井を見上げながら言った。

 

「天井あるって本当に素晴らしいですよね。――低ければ低いほど安心します」

「ああ、高すぎるのはいやだな」

 しみじみという二人。二人とも外套は外している。


「ところで、ここに着くまでに話した疑問なんだが。――何故俺が旅立つと分かった? 本当に偶然か」

「違いますね。――私もSSRになったんですよ」

 ウリカは意味深な笑みを浮かべる。


「も?」

「アーニーさんの組合での出来事聞きましたよ。光り輝く演出で何も出なかった、と。だから、SSRになっていると踏んだのです。いきなりSSRになったら、活動しにくいですよね」

「これで合点がいったよ。確かにその通り」

 アーニーは合点がいった。いきなりSSRになったら、様々な面で制約を受ける。


「即効果が現れたもんじゃないからな。どれぐらいで引いたんだ?」

 後ろめたい表情をして、ウリカはそっと視線を逸らした。


「ウリカ?」

「……一枚で」

「え?」

「報酬がわからない表記だったので、お試しで一枚引いて、出ました……」

 

 ルートボックスSSR一枚抜き。

 あり得ないその奇跡。とは言い過ぎでたまに聞く。

 

 アーニーも思うところはあったが、自分も10連でいきなり引いている。その後の消費は自業自得なのはわかってる。


「おめ?」

「あ、あり?」

 そして二人で見つめ合い、二人とも笑い出した。


 ガチャの結果報告ができる関係というのは素晴らしい。


「SSRになってスキルが六種類選択できるようになったのは、本当にすごかったです。SSR専用スキルなんて、なにこれこれチート?みたいな」

「わかる。俺はスキルが二つだったからな」

「私は三つでした。使えないヒーラーから、どこまで成長できたか不明ですが……」

 ウリカは自分のギルドカードを取り出した。


「ん? みていいのか」

「アーニーさんは見せてくれたではないですか。信頼されているみたいで、あれ結構うれしいんですよ」

「普通見せないからな。――では失礼して]

 カードを覗き込む。



-----------------------------------------------------------------------


名前:ウリカ・ファルナ

種族:人間

職業:、魔力治癒士

魂位:☆☆☆☆☆(SSR/魂位6)

属性:-

加護:×

パラメータ

筋力:☆

体力:☆☆

知力:☆☆☆☆

器用:☆☆☆

敏捷:☆☆☆

精神:☆☆☆


-----------------------------------------------------------------------


「君は魔力治癒士なのか」

「はい。まだまだ未熟ですが」

「MP回復特化の術士。パーティでひっぱりだこな」

 最初に出会った場面を思い出す。拉致られるのもわかる。言語道断な話ではあるが。


「しかし通常の回復能力は劣りますから、あんな目にあいます。低レベルだとHP維持のほうが重要視されますしね」

「俺としては助かるが…… 相方が俺でいいのか、と聞きたくなる」

 魔力治癒士はそれぐらいパーティでは人気がある、超需要職なのだ。

 

 低レベル冒険者ほどHPが重視されるが、高効率PTが多くなる高レベル帯の冒険者ではMP管理が問われる。

 

「あなたと旅したいのです」

 ウリカの迷いのない瞳に、アーニーは気恥ずかしくなり目を逸らした。


「多分だが相性は悪くないはずだと思う。燃費悪いから頼りにしてるよ」

「はい。明日が楽しみです」

 本当に楽しそうに、ウリカは微笑んだ。




(――すごい)

 ウリカは内心舌を巻いていた。

 

 アーニーは予想以上に強かった。いや、出会うときも十分な強さだったが、SSRになった彼は別物になっていた。

 

(これなら、二人でいける。どこまでも)

 確信を持ってそういえた。


「しばらくはペアになりそうですね」

「SSR二人組ってそういないしな」

「まさか自分に制限問題がでるとは思いもしませんでした」

「俺もだ」


 二人が話しているのは、冒険者組合の制限だった。

 パーティを組む場合、制限がかかるのだ。


 冒険の難易度によって違うが、低レベルの場合は魂位の合計が12というのが目安である。魂位が4の者の場合は3名、3の場合は4名が人数制限である。

 これは高レア同士のものたちが集中することを防ぐためであり、低レアの冒険者の育成機会を増やすためでもある。魂位は上がるのだから。

 

 それに人数制限で魂位がSSRの魂位6二人より、魂位6が一人にRの3二人や魂位2が六人のほうが成功率は高い。

 過去、冒険者がSSRだらけになったための反省処置と言われているが、真偽は定かではない。


 二人は魂位が6という破格の数字だ。二人だけで制限になってしまうのである。

 中堅になれば16になるが、それなりの難易度のクエストになる。

 依頼を受けるとき、受付の人間が目を白黒させていた。王都であれば、それぞれパーティ リーダーになって分かれて行動するよう指導が入るだろう案件だ。それだけ、SSRは少ない。





 人里を離れるほど強い魔物がいる。

 アーニーは依頼の情報をもとに森をどんどん進んでいく。

 ゴブリンに何度か遭遇したが、瞬殺だった。


「俺の職業(クラス)はある意味レンジャーの派生職みたいなものでね。森のほうが力が生きるのさ」

 大きな段差を軽快に登りながら、ことなげにいう。

 

 差し出された手をとり、ウリカは納得する。

「そうみたいですね。でも地下迷宮に住んでいたんでしょう?」

「住んではないぞ住んでは。――ルートボックスの石集めだ。仕方ない」

「ガーゴイルのレアドロップも魔霊石でしたね……」


 段差を乗り越えたところで、アーニーの動きが止まった。

「……いるな」

「魔物ですか?」

「ああ、ここを登って一休みをしている冒険者を襲う……って手合いだ」


「ウリカ! 抵抗力上昇!」

「はい!」

 アーニーの指示に従い、すぐさま魔法抵抗力を上げる呪文の詠唱に入る。


 飛んでくる氷の矢。敵が森のなかに住む者だと分かった。火を使わないからだ。

 凶悪な豚面の、人型の魔物――オークが四匹顕れた。短めの槍を持っている。


 アーニーはすぐさまオークの前方に飛び出る。

 地面を叩き付けて魔法を発動させる。

 

「【十五式・魔力熱陣】」

 閃光が広がり、オークたちが悲鳴を上げて、すぐさま睨み付ける。

 低威力の範囲魔法だった。


 低威力には低威力の使い道がある。

 これで、モンスターたちの敵意を集めることに成功した。こうなれば、ウリカの危険度は減る。

 

 四匹がアーニーに群がる。

 敵の攻撃をことごとく受け流し、反撃に転じる。

 

 一匹目は懐に入り、そのまま袈裟切りで仕留める。背後に回ってきたオークを流れるような動作で振り向きざま首を飛ばした。

 唖然としているオークに向かい、長剣を突き刺す。オークが槍を捨て、長剣を掴んだ。


「そんなに欲しいならくれてやるよ」 

 柄を蹴倒し、さらに突き込む。3匹目のオークも絶命した。


 最後の槍を構え突進してくる。短剣を引き抜き、流れるような動作で左脇をすり抜け、背後に立つ。

 逆手に構えた短刀を頸椎に向かって振り下ろし止めを刺した。


「見物は終わりか。でてこいよ」

 オークの死体から長剣を引き抜く。アーニーの声とともに、ひときわ大きなオークが現れた。


「予想通り――オークシャーマン」

 オークのなかでも特別な力を持つのがオークシャーマンだ。攻撃、支援、回復どれも使えるという。

 オークシャーマンはアーニーの後ろ、ウリカのほうをみて下卑た笑みを浮かべる。ウリカは恐怖を覚え、そっと身構える。


 ゴブリンと違い、オークやオーガ、ミノタウロス種は人間や亜人を使って繁殖する。

 その中でも魔力が高いエルフや女魔法使いから生まれた種は、高位種のキングやシャーマンが生まれやすい。

 数が増えると大きな勢力にもなりやすいため、積極的な討伐対象だが、亜人系モンスターにありがちなドロップのまずさ、そしてその忌むべき性癖から引き受ける冒険者は多くない。

 また女性冒険者は討伐を避けるように冒険者組合からも告知がでている。


 それでも被害が減らないのは、その数の多さ、遭遇率の高さからであろう。


 視線を遮るようにアーニーがウリカの前に立つ。

 表情は極めて無表情だ。


 オークシャーマンが魔法を唱えはじめた。

「遅い! 【四式・魔法の矢】

 アーニーが先に魔法の矢を飛ばす。

 オークシャーマンが慌てて障壁を張る。16本の魔法の矢によって障壁はあっさり消し飛んだ。


「まだまだいくぞ」

「ブヒ?!」

 さらに魔法の矢を使い続ける。さらに16本の魔法の矢を食らい、苦悶の声を上げる。

 続けざま、魔法の矢を2連続で放つ。さながら魔法の矢の雨だ。

 

「まだ生きてるか」

 冷たい声に、オークシャーマンがおびえた。(きびす)を返し、慌てて逃げ出す。


 その参加を影が覆う。

 頸椎に向かって、ロングソードを突き刺すアーニー。オークシャーマンは絶叫を残し、息絶えた。


「【火炎】」

 そのままその死体を燃やす。


「最初会ったときも思いましたが 【魔法の矢】をあんな乱れ打ちできるとか凄いです」

「俺はちょっと特殊でな。本職の魔術師ならあれぐらい撃てるんじゃないかな」

「無理ですよ!」

 呆れた顔を隠さずにウリカが言った。


「でも、私のために怒ってくれて、守るために戦ってくれた、みたいな。うれしいです」

「……いこう」

 照れるアーニーの後ろで、嬉しさを隠そうともしないウリカがいた。


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