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SSR確定10連の迷宮

 ウリカの赤い瞳。

 人間でもごく希にいるにはいるが、その場合の髪の色は白髪だ。

 

 吸血鬼という種族もいるが、もちろん日の光を浴びると灰になる。昼間に出歩くことは不可能だ。そんな化け物がいたら上位種ぐらいである。

 金髪に赤い瞳はアーニーも初めてみた。

 

 ――美しい。

 魅入られたかのように逸らすことができなかった。


「魔神の末裔、ね。かつて神に逆らい戦争して封印されたと聞くが」

「その魔神ですね。といっても私はごく普通の人間ですよ」

 確かに特殊な能力を持っていたら、ガーゴイル相手に死にかけはしないだろう。


「わかっている。しかし、そんな話を俺にしていいのか」

「これから話すことにつながります」

 ウリカは左右を確認し、フードをか被り直した。


「私の一族には、言い伝えがあるのですよ。タトルの大森林のとある一角――そこにある地下迷宮にはかつて魔神の神殿があったそうです」

「人間がいけるところなのか、そこは」

「今までは行けませんでした」

「過去形だな?」

「はい。その場所を含み、様々な迷宮を攻略するために、現在砦を作成し、そして開拓村、ならぬ町を作っています」

 タトルの大森林は現在、様々な国家、勢力が開拓にいそしんでいる。

 その中の一つなのだろう。


「確かに拠点があれば……」

「開墾する人手を集めるにも精一杯ですけどね」

「開拓の大変さはよくわかるよ」

 土地を耕し、森を切り開く。魔物も出れば、町のなかでも安心とは言いがたい場所も多い。


「はい。冬を迎えるにあたっての備蓄に追われ、一日一日食べるのが精一杯。開拓地はどこもそうでしょう。その砦も例外ではありません」

「よく知ってるな」

「私の――故郷ですね」

「なるほど。で、俺か? 俺の職のことは何か調べたか?」


 先鋒――パイオニア。

 開拓するにはこれ以上にない最適な職だ。


「? いえ。何も調べてませんが…… 軽装の魔法戦士系なんですよね?」

 本当に何も知らないようだった。


 アーニーの職はいわくつきだ。人に話したことはほとんどない。冒険者組合関係者以外で知っているのはポーラぐらいだろう。

 いわくつきだけに、あまり知られたくないのも本音だ。


「いや、すまない。こっちの話だ」

 この少女を疑っても仕方ない。こちらは昨日まで、無能なDランク冒険者だったのだから。


「開拓町は、まだ名も無い町なのです。しかし、周辺に数多の迷宮があり、自然にも恵まれています。発展する土壌は大きいです」

「そうだな。その迷宮のレベルは高そうだが、周辺から攻略していけば、実力も付けられる」

「はい。そうです!」

「町も十分に発展すれば拠点になるし、か……」

 

 アーニーは思う。

 名も無い町がどのような町かは不明だが、村ではないのでそれなりの人口だろうと。

 ひょっとしたら自分の技能で開拓を手伝えることもあるかもしれない。


 アーニーはここ十年を振り返る。

 ☆2でスキルも所得できず、絶望していた。

 自分の体質のせいで、魔法の威力は多少あるが、活かしていると言い難いのは確かだ。


 開拓者のはずなのに地下迷宮に閉じこもっていたのは、自分に絶望していたこともある。


 もし、実際自分の職まで役立つ場所ができるなら――


 そう思うと、ガーゴイル狩りで周回していたときより、遙かに色々できそうだ。


「アーニーさんでないといけない理由はちゃんとあるんです」

 物々しい口調に変わった。アーニーも身構える。


「俺でないといけない理由?」

 先ほど口にした以外、心当たりは一切ない。


「はい」

「ここで話せることか?」

 雰囲気の変わりように、かなり重要な話だと予想する。


「今は通りに人は少ないですから、大丈夫です」

 左右を見回し、確認する。人影はまばらだ。立ち話している二人に気にかけるものなどいないだろう。


「なら聞きたい。教えてくれ」

 ウリカは頷いた。


「――魔神の神殿。そこで引けるという伝説の10連ルートボックスがあります」

「伝説の10連ルートボックス?」

 その響きだけで心が躍る。


「はい。そして神代のアイテムが排出し――《《確定SSR》》が約束されていると」

「!」


 驚愕のあまり、硬直するアーニー。


 ダブルスーパーレアが約束されたルートボックス。


 まさに伝説のなかにしかない、神代のルートボックスだ。


 心から惹かれる、抗えない響き――


(確定SSR……確定……!)


 アーニーが心の中で反芻する。


「SSR確定10連の迷宮。ただし1回限り――私と一緒にどうですか!」

 なんと頭の悪そうな響きの迷宮。

 挑発するようなウリカの誘い。

 

 うっすらと見える赤い瞳が挑戦的で、輝いている。

 自分は魅入られたのだろうか。眼が離せない。


 ウリカは、アーニーが乗ると確認していた。


 アーニーもまた、ウリカにしてやられたと思った。

 悪い気分ではなかった。


「確かに俺じゃないと、って理由だ。その話乗った」


 ウリカは手を差し出した。

 アーニーはその手を取り、握りしめた。

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