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~を追放することを選んでもよい

 闇から無数の髑髏が覗かせる。

 歯をかちかち鳴らしながら、アーニーをみつめていた。真っ黒なはずの眼窩は赤く灯っていた。

 そして闇が巨大な蛇のようにうねり、アーニーを喰らうべく、襲いかかった。


 アーニーは手を突き出し横に振った。

 胸を押さえ、吐血した。

 襲いかかる闇を睨み付けて。


 歯を噛み鳴らしながら髑髏たちはアーニーを頭上から襲う。


 しかし――


 悪意を宿した闇は、アーニーのもとに届く前に霧散した。


 それは音もなく――

 派手な演出もなく――

 詠唱も呪文名さえもなかった。


「な、なんだと!」

 【使徒】が絶叫した。


「何をした! 何故【生命強奪(ライフシーズ)】が消えるのだ!」


「俺はその呪文の行使を許さない。水の【古代召喚】の一つ――【魔力停止(マナストツプ)】」

 アーニーは淡々と告げた。


「対象の呪文を一つ打ち消す、だったか」

 効果を教えてやる。


「【古代召喚】? 水系の対抗魔術(カウンター)だと! ふざけるな! 使えるわけがない!」


「俺がお前の話に何故、延々と付き合ってると思った? 用意はしてあった」

 吐き捨てるようにいった。


「切り札を、な」

 【使徒】を見下すように言った。


『驚いた振りする必要はもうないな? 試した呪文が少なくないか、【使徒】よ。予想通り初見殺しの瞬殺できたな。性格悪い奴の魔法構築(デツキ)は予想しやすい』

 祖霊は軽く挑発しながら、告げる。


『【行動完封(シヤツトアウト)】なんぞ、四枚も入れてないだろ。アーニーには言っている意味はわからないだろうが、あいつの顔みろよ。苦い顔してやがるだろ? この世界の住人は水魔力が使えないから対抗魔術もない。何が狙いかすぐにわかった』


「そうだ! この時代の人間は、水の魔力そのものを得ることなどできんはずだ!」

 だからこそ【使徒】の絶対優位があったのだ。


「できないぞ? 俺にあるのはMPだけだ」

 そしてアーニーのMPは減ってはいない。


「そうであろう! ならば【古代召喚】に対して同じ【古代召喚】での対処などできるはずがない!」


「できないな。――しかし何事にも例外はある」


「ならば何故使えるというのだ!」

 【使徒】は怒り狂って絶叫した。


「さんざんご高説を垂れてくれたんだ。俺もお返しといくか」

 アーニーはゆっくりと【使徒】に向かって歩き出す。


「お前達風の言い方をすれば――『使用者はこの魔法の水魔力を支払うのでは無く、現在のHP二十分の一を支払い、水の魔法一つを追放することを選んでもよい』、だな」

 意地の悪い笑みを浮かべ、教えてやった。


「な、なんだそれは……」

 【使徒】にとって、確かに聞き覚えのあるフレーズ。【古代召喚】のテキスト。


『【代替支払い呪文(ピツチスペル)】だよ! 知らないのか?』

 嘲るように祖霊が問う。

 【古代召喚】には通常の魔力消費とは違う、代替支払い手段が存在する呪文が存在する。投げ捨てる(ピツチ)呪文(スペル)ということで定着した俗称だ。


 それは【使徒】が使う呪文よりもはるかに古い、選択規則の呪文だった。


「【代替支払い呪文(ピツチスペル)】? そんなことが許されるものか! ここは単純化された世界だ! いかさまだ!」

 知識では知っている。しかしそれは祖霊世界とて、一部の人間でしか使えない、古い魔法のはずだった。


『いかさまし放題のお前らに言われたくないね! 仕様外の用法を考えてからが、俺たちの戦いだっただろうが』

 祖霊は嗤いながら言った。


『精霊元素が無く、MPしかない単純化された世界。だが、精霊魔力を使わない手段での呪文を行使できないとは言っていないぞ?』

「そんな古い呪文まで試してない……」

『そこがお前の限界だよ。俺たちは毎日睡眠時間削ってテキストとにらめっこだったんだぜ? 懐かしい戦いを思い出させてくれてありがとよ! そしてさようなら、だ』

 祖霊の勝利宣言。


「というわけだ。お前はもう何もできない。全力の【生命強奪】を使用するために全ての魔力を使い果たしただろ? 俺はそれを待っていた」


 最後の【生命強奪(ライフシーズ)】の一撃。

 それさえ潰せば、相手は無力だ。


 ポーラとニックの全力攻撃や工作術式の爆発で、瀕死の【使徒】がドレイン系魔法を使うであろうと思われたことも読みやすさを生んでいた。


「う……ぐぁ……」

 怒りのあまり声にもならないうめき声をあげはじめた【使徒】。


 もはや、為す術もない。


「お前の負けだ。――投了は許さん」


 アーニーが長剣を振り下ろし、【使徒】は唐竹割りに真っ二つとなった。


 そのまま爆炎をまき散らし、【使徒】の肉体は跡形もなく砕け散った。

昔遊んだゲームで、一番好きな効果を持つカードが今回の話のモデルです。

目で見える範囲のリソース外から飛んでくる呪文は驚異ですよね。



「続きが読みたい」


等、気になってくれた方は下の評価やブクマしてくださると、とても嬉しいです

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[一言] 敗因、下環境の資産がなかった
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