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サービス終了間近

 天界会議に集まった神々は、悲痛の表情に満ちていた。


「もうお金がないの……」


 泣きそうな顔で主神が呟いた。


「鯖を買い換えるハンシが足りない、と……」

「もう削るまで削っているのです。もともと、この世界を構築するにはさしたる費用がかかっていないのが救いですが」

「それでも、安い額ではないぞ」

「承知しております」

 主神は苦虫をかみ潰したような顔をし、美の女神の表情は憂いに満ちている。


「ランキングがついに400位を下回った。この前の鯖落ちでさらに加速した」

「もうダメでは……」

「我々にはすでに運営する力は無い。祖霊の世界でどう写っているかもわからぬ」


 世界の終わり。それは神々が世界に影響を及ぼす力の失墜を現す。


「祖霊の世界では運営移管か会社精算、というものが行われるらしい。つまり我々は……」

 魔神も重く受け止めているようだ。

 表情はいつになく暗かった。


「やはり城塞戦がいけなかったのか……」

「いきなり対人戦を放り込むとそうなると警告はした。とくに祖霊の国では人気がない要素と」

「しかし! 競争要素がないとルートボックスは回らぬのだ!」

 悲痛な主神の叫び。


「仕方ない。今や祖霊世界限定の話をすると、たくさんの英雄を単体で用意し、その英雄を育成するのが主流。好きなようにビルドされた冒険者を育成するこの世界のデザインの問題。それが古かっただけのこと。次の機会に生かせば良い」

「ではこの世界の住人はどうなる? 召喚戦争のときのように見捨てるしかないのか!」

「この世界はこの世界で強く生きていくと信じている。例え我々神がいないにしても」

「無責任ではないか……」


 主神はこの世界に愛着を持っていたようだ。

 悔しそうに呟いた。


「せめて移管を…… 無責任に終わらせてはならぬ」

「移管するにしても、この世界では最低十数年はかかる計算だぞ」

「わかっておる。手を貸してくれ。世界が、我らがいなくても生き延びることができるように」

「我も最大限の助力はしよう」

「頼む。魔神」

 主神は魔神の戒めを解いた。


「祖霊に対する告知義務があるんだったか」

「そうじゃ。祖霊世界でいう三ヶ月が告知期間だ。勝手に世界を終わらせることは、向こうの世界にも影響がでるからな」

「他の世界への退避時間というわけか……」

「接続障害中、そのまま世界が終わった例もある。まだましといえよう」

「祖霊世界では、一年で約250前後の世界が終わったと聞いたこともある」

「そこまで過当競争ということじゃ。当たった場合は大きいが、そこまで持っていくのが大変なんじゃ」

「我々はせめて、この世界の住人が生き残る道筋をつけるべきということなんだろうな」

 魔神も胸が締め付けられる思いだ。

 世界の住人は決して咎はないのだ。


「どんな影響がでるんでしょうか」

「まず死亡率が上がるな。祖霊の加護がないのだ。復活呪文なぞ意味はなさなくなる。アイテムの効果は出るだろうが」

「祖霊の加護、大きかったですからね」

「人々は無くしてから気付くだろうな。そしてルートボックスだ。供給が途絶え、効果が高いポーションほど希少価値が高くなるだろう。効果が薄いポーションは今でこそ捨てるぐらいあるが、一気に価値があがるだろうな」

「どうしてです?」

「産湯など、体力のない子供に気軽に使えたのだ。疫病に対する抵抗力も薄れ幼児ほど死ぬだろう。平均寿命が20歳は下がると思え」

「そこまでですか……」

「高レベル冒険者も無茶できなくなる。つまり、魔物が暴走したら単純に人が死ぬ。法と秩序よりも力が優先されるだろうな」

「そんな」

 美の女神が絶句した。彼女は文明レベルが高くないながらも秩序を保ったこの世界が好きだった。


「治安も一気に悪くなるだろう。帝国が世界支配に乗り出すかもしれん。多くの者が非業の死を遂げる。祖霊世界の道徳という概念など、一ヶ月もすれば消し飛ぶよ」

「なんとかならないのですか?」

「ならん。魔物や邪神の配下も蠢くのだ。真の意味で、凄惨な世界になる。何せ、住人が守られすぎていたからな……」

「魔神よ。お主ならどうする」

「世界の終わり、だろう? ならばやることは一つだ」

「早く教えろ」


 もったいぶる魔神に苛立ちを隠せない。


「ばらまきだよ。ばらまき。祖霊たちには、最期の祭りとして様々なアイテムを蒔き、世界の人々にはポーションは有限な資源だと気付くぐらいの猶予を与えるのだ」

「なるほど」

「その間に過剰に強くなった冒険者は秩序を保つ剣になるか、魔王の如くふるまうかはわからぬが…… ああ!」

「どうした!」

「魔王システムまずいかもしれぬ。うまく働けば世界を安寧にする力となるが…… 悪用されたら、一人の人間によって世界がまるごと私物化されてしまうのだ」

「どうするんじゃ」

「今のところ、魔王システムが動く気配はない…… 今のうちに魔王特攻の武器も用意するほかないか……」

「打てる手は全て打つぞ。最期のばらまきのために」

 主神に迷いはなかった。


 彼らは世界の終わりに備え、ばらまきを行うのだ。

いつもお読み頂きありがとうございます。


世界がそろそろサービス終了と相成りました。お客様に満足いただけるサービスを提供(r

ではなくて。


世界が終わっても、その世界の人々は生きているのです。

世界の終わりに備えている彼らを書きたいので、最終章はちゃんと書きます。


それまで応援していただけると嬉しいです!

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