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殷の青銅器は、 奴隷の嘆きと屍の山が作った。

前回、殷墟という遺跡が漢方をきっかけとして発見されたというお話をしました。


今回は、殷という王朝がどのように成立し、どのような王朝だったのかというお話をしたいと思います。


そこで、殷王朝成立の背景としてゆうというキーワードを理解してほしいと思います。


中国は、これまでの講義録で話してきたように、古くから農耕文化が成立してきました。


こうした農耕文化成立に伴い、黄河流域の農業生産力は時代と共に拡大していきます。


農業生産力拡大は、人口の増加をもたらしました。その結果、これまで村レベルであった集落がゆう)と呼ばれる都市国家に発展していきます。


より具体的にお話しをしますと、ゆうとは「城郭都市」と山川の教科書では説明しています。


つまり、城郭を有する小規模の都市国家がゆうであり、同一氏族の族長がゆうの頂点に君臨し、周辺の農村なども支配していたという特徴を理解しておきましょう。


さて、ゆうが成立しますと、紀元前16世紀中ごろには黄河流域に「商」という有力な邑が現れます。


そして、「商」を中心として邑の連合体が形成されるようになり、この商が後に「殷」と言われるようになりました。


この「殷」は、現在考古学的に確認されている中国の最初の王朝です。


ちなみに、その前に、幻の王朝である「夏」という王朝があったと伝わっています。


「夏」を倒して成立したのが「殷」であるとされていますが、この辺の話の真偽は考古学の進展を待つことにしましょう。


さて、「殷」時代で覚えるべきポイントは、これまでの話を踏まえて四つあります。それは、下記のことです。


ゆうの連合体として、前16世紀に成立した。

②甲骨文字が使われた。

③神権政治が行われた。

④精巧な青銅器が作られた。


①、②はこれまでお話ししてきていることです。③についてですが、「殷」の時代は非常に宗教的な性格が強く、(まつりごと)を行うにあたって占いが重要でした。


つまり、政治は神意によって行われ、その神意を占いによって確認したのです。


この当時の占いでは、甲骨の裏面にくぼみをほり、その周囲を火で焼いて表面に現れる割れ目を見ることで、吉凶を占ったみたいですね。


そもそも、「殷」の時代の頃は、まだまだ原始的な生活をしているひとも沢山いました。


そのため、広範囲の地域を支配するにあたって宗教こそが有力なツールであり、こうした占いが(まつりごと)の要となるのはある意味当然のことです。


従って、「殷」の時代は「神権政治」が行われていたことを覚えておきましょう。


最後に紹介したいのが④の青銅器です。これこそ、この時代をしる上でもっとも語りたいことであり、タイトルにも使いました。


この時代の青銅器を「精巧な青銅器」と表現しましたが、普通の青銅器と何がどうちがうのでしょうか?


結論からいうと、芸術としての完成度が高いのです。


実は、この時代、青銅器の直接の製作者は主として奴隷たちでした。


ちなみに、この時代の奴隷というのは、「小説家になろう」に数多く登場する異世界物語の奴隷とは違います。


祭祀があれば、奴隷は生贄として殺されたのです。


そんな時代でしたから、奴隷たちは殺されないために、自分が有能であることを証明すべく、命をかけて最高の青銅器を作りました。


※美しい青銅器をつくってその才能が認められれば、奴隷でも殺されないからです。


従って、殷の青銅器芸術は、命のかかった奴隷の気迫が感じ取れるすさまじい完成度なのです。


だからこそ、殷の青銅器芸術は時代を越えて美しく、「この時代の青銅器が歴史を通じて最高である」と評する人もいます。


しかし、それは、古代のロマンが産み出したものではなく、「命をかけた奴隷の屍や嘆きの上で成立した最高の芸術」なのです。


だからこそ、皆様は、殷といえばぜひ青銅器芸術を連想してほしいですね。歴史とは人類の過ちを学ぶ科目ですから。


※本日はここまで。

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