プロローグ
『……当機は現在、大変不安定な気象状況の中で飛行中でございます。暫くのあいだ、機体が大きく揺れることがございますので、シートベルトを着用して客室乗務員の指示を……』
機内放送はここで途切れた。ガクンと大きな揺れが起こり、機内全体が非常灯に切り替わり、視界が禍々しい赤へと染まっていく。
乗客達が口々に何かを叫んだ。意味もなく泣き叫ぶ人もいた。親に抱かれた子供らも泣きじゃくっていた。
でも、彼らを蔑む余裕など俺にもなかった。自分も、意味もなく何かを叫んだ。これからどうなってしまうのか点でワカラナイ。わからないから、だからこそ、絶望する――。
俺は、直前にSNSでの友人から言われた無責任な一文を思い出していた。
「飛行機事故なんて、宝くじみたいなものですよ(笑)そんなものに遭う確率よりも、日々の自転車事故の確率の方が高いんですからぁ!」
そんなことを言われたんだ。やっぱり嘘じゃないかぁぁぁ!!
現に、自転車で一度も事故ったことのない俺が、今、こうして飛行機事故に巻き込まれているんだ。人生初飛行機だけど事故りそうでこわーい、みたいなことをSNSで呟いて自分からフラグを建ててしまったから、こんなことにッ……。
――俺は、高校生だった。いや、正確には今も一応高校生ではある。だが、学校に行くよりも家にいるほうが多い、言わば半分「引きこもり」状態で毎日ゲーミングPCの前に座り、FPSのゲームを極め続けていた。
インターネット上の関係だったけれど、そのゲームのクラン仲間とは現実の人間以上に親しくなれた。時には意見が食い違い喧嘩もしたけれど、時には本当に喜びを分かち合ったり、熱くなったりもした。
そのゲームの世界ランキング上位として台頭してきた俺のことを、クランのみんなは誠意を込めて応援してくれた。みんなで高みを目指して、本気でプロゲーマーになるんだと思っていた――。
けれど、そんなものはここですべて、
終わりだ。
ふと、何気なく窓の外に視線をやった。魔物のように大きな暗黒の雲が周囲を覆っている。こんなものを、いつだかハリウッドの映画でみた気がする。
そう、機外の風景が、まるで映画の何か厖大な出来事が起こる前触れのシーンのような様相なのだ。こんなにも絶大で、虚空で、色さえも吸い込んでしまいそうな暗黒の雲がこの世の中に実在しているなんて思ったこともなかった。
その光景を最後に、俺は暗い渦中に放り出された。そして、二度と目を覚ますことはない――
――はずだった。
初登校……ではなく初投稿です。まるで新しい学校に転入したような不安な気持ちいっぱいで、ドキドキですがぼちぼち書いていきたいです。頭の中では結構長いストーリ-があります(書けるとは言ってない)。
頑張ります。