第24話 結婚式の帰路
頬に当たる風が心地よいと思っていたのも、ついこないだまでの話しで、上着は手放させない季節に近づきつつあった。
あのいろいろあった四ヶ月前の夏が、今は懐かしく感じる。
同時に葵ちゃん、いや、今は葵と呼ぶべきか……付き合って四ヶ月経つが、意外にも障害なく順調に恋人同士の関係を保っていた。
季節は秋から冬への変わり目の十二月。
「いい結婚式でしたね」
今日は兄さんとお姉ちゃんの結婚式だった。そして、無事、感動の中、華やかに終了した。
僕は当然、招待されていたが、今回、凛ちゃんも招待されていた。今回、凛ちゃんを招待しようとしたのはお姉ちゃんだった。
実は皐月の葬式、お姉ちゃんと凛ちゃんは顔見知りになり、なにがあったがは知らんが、お互い連絡を取り合う仲になっていたようだ。
そんな関係だったことも、僕は今日の結婚式で知ったくらいだ。
「葵じゃなくて。私が出席するのは、場違いな気がします」
最初、凛ちゃんはそんな不安を口にしていたが、やはり凛ちゃんも女の子で、いざ結婚式が始まると目を輝かせて楽しんでいた。
僕は帰り道、凛ちゃんを自宅まで送っていた。結婚式に感動を覚えた凛ちゃんは、いつもより口数が多い。
「そうだね。まあ、お姉ちゃんのお父さんじゃなくて、うちのお父さんが泣いた時は、さすがにドン引きだったけどね」
「いいじゃないですか。優しいんですよ、叶夢さんのお父さんは」
「優しいねぇ」
ものは言いようだな。結婚式最後の花嫁のスピーチで、実父と一緒に泣く義理父って……それを、横目で失笑する兄さんと母さんの目が痛々しかった。
「さあ、着いたよ」
車内で話している内に、凛ちゃんが住んでいるマンションに辿り着いた。
ここに来るのは二回目だ。
確か前に来たのが、皐月の墓参りをした夏の八月だから、四ヶ月前にさかのぼる。
そうか。まだ、あれから四ヶ月しか経っていないんだな。
葵ちゃんとの出会いと付き合い。そして、兄さんとお姉ちゃんの結婚式。
いろいろあったから、一年以上前の出来事のようにすら思えてしまっていた。
「寄って行きませんか?」
「えっ?」
過去の記憶を懐かしく脳裏に巡らせていると、唐突に横から放たれた凛ちゃんの声に、僕は振り返る。
「今、なんて言ったの?」
聞き返すと凛ちゃんは顔を赤らめ、バツが悪い顔をする。
「送ってもらったお礼に、コーヒーくらい出しますよ。部屋、ちょっと散らかってますけど」
「えっ? 家に入れてくれるってこと?」
「だから、さっきからそう言ってますよね」
明らかに不機嫌な顔をあらわにする凛ちゃんに僕は躊躇する。
まずい。さっきから言ってたのか? 聞いてなかったけど、それは女の子に対して失礼なことをしてしまったな。
「いやぁ、嬉しいな。僕、凛ちゃんの入れたコーヒー好きなんだよね」
僕は慌てて、フォローした。
「私、叶夢さんにコーヒー入れた記憶ないんですけど」
「あれ、そうだったっけ?」
「叶夢さんは本当に適当ですね」
凛ちゃんは溜息を漏らし、呆れたような顔する反面、口元を綻ばせるような顔をする。
僕はそのまま、車を来客者用の駐車場の駐車させるのであった。




