表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れな草 ~赤い布の真相~  作者: 結城 智
第3章 告白
24/37

第23話 追憶~皐月への告白~①

 皐月と僕が付き合ったのは、出会ってから七ヶ月が過ぎた頃。


 僕は皐月と長く接していくうちに、彼女をもっと知りたいと思うようになっていた。


 よく恋をすると人は、寝ても覚めても相手の顔を思い浮かべてしまうというが、あれは本当なんだな、と実感するくらいだった。


 ジャズフェスのデートから僕達は急速に仲が良くなり、お互い苗字ではなく、叶夢・皐月と下の名前で呼ぶくらいにはなり、周りからは付き合っていると思った。と、思われるくらいの仲に成長したけど、実際はそうじゃない。


 僕は皐月と一緒にいるのが楽しいから、それでいいとは思わなくなっていた。


 前はバイト先で、人にからかわれるのが嫌だからと萎縮していたが、今は反対に付き合ってもいないのに、皐月の仲の良さをさり気なくではあったが、見せつけるようにしていた。それは、絶対に皐月を誰にも取られたくないという、貪欲な感情だった。


 手を繋ぎたい、抱きしめたい、キスしたい。いろんな欲求が常に頭には過ぎったし、自慰行為を行う際は必ず皐月のことを想像するようになった。


 別に変な話しじゃない。結局、僕も普通に人を好きになったということだけの話しだ。


「ねぇ。来週の土曜日って空いてるかな?」

「来週の土曜日って、クリスマスじゃん」


 バイト先の休憩室。誰もいない部屋で二人きり。僕は皐月をデートに誘う。けど、皐月だって女の子だ。その日が特別な日だと知っている。


「誰かと一緒に過ごす、予定?」


 ごくりと唾を飲んで僕は平常心を装って聞く。皐月は頭を掻き、苦笑する。


「別にそんな人いないよ。でも、いいの?」


 心配そうな顔する皐月に、僕は首を傾げた。僕の頭にクエスチョンマークがついたのに、皐月は気付いたのだろう。すぐに言葉を繋げてくれた。


「叶夢、ずっと私の演技に付き合ってくれているけどさ。その日は特別なんだし。いいんだよ。無理しなくても」

「別に無理はしていないよ」

「そっか。うーん」


 どうしたんだろう。なんだか、皐月は困ったような顔をする。そして、ローラー椅子を蹴って移動し、部屋の扉付近を見つめる。


 誰もいないことを念のため、確認しているようだ。一体、なんのためかはわからないが。


「ねぇ。私が言ったって言わないでよ」


 急に決まりが悪いといったような複雑な顔をする皐月。状況が全然飲み込めないが、無意識に僕は頷いた。


「こないだね。瑠川ちゃんに聞かれたんだ。水野さんと付き合っているのかって?」

「……それで?」

「当然、付き合ってないって言った。大切な友達だって」


 なんでだろう。その通りなんだけど、大切な友達と言われると胸が痛い。


「そしたら、相談されたの。瑠川ちゃんね、叶夢のこと好きみたいだよ。最近、凄く男らしくなったたみたい。良かったね」


 他人事みたいな口調がちょっと引っかかる。なんだろう、それを相談されて皐月はどう思ったのだろうか。


「そうなんだ」

「だから事前情報。瑠川ちゃんに近い内、誘われるよ。やったじゃん。モテ期きたね」


 たんたんとした口調でそう言うと、皐月は席を立ち上がった。


「今まで付き合ってくれてありがとう。でも、もうおしまいにしよう。私、叶夢を散々利用してきたから、こんなこという資格ないけどさ。大切な友達が幸せになれる瞬間を邪魔したくはない。だから私、ここのバイト辞めようと考えている」

「なに、勝手なこと言ってんだよ」


 この時、完全に無意識だった。僕は普段出さないような攻撃的な口調を喋る。

皐月は少し驚いたように目を丸くさせている。そして、足を停め、僕の目を凝視していた。


「誰が、いつ瑠川ちゃんと付き合うって言ったんだ? 勝手に決めないでくれる?」

「なんで? 瑠川ちゃん可愛いじゃん。性格だっていいし」

「だから、勝手に決めないでくれるか。僕は皐月を誘ってるんだ」


 皐月と僕との間でこんなピリピリした空気は、初めてかも知れない。僕は内心、バカ野郎と自分に怒っていたが、完全に感情をコントロール出来なくなっていた。


 そんな時に、空気の読めない皐月は僕の感情を逆なですることを言う。


「なんで私なの? 私のこと好きなの?」


 その言葉を耳にした途端、僕の頭の中にある何かが切れる感覚がした。


「好きだよ」


 はっきりと、聞き違えるはずもないくらい。それくらい、はっきり僕は答えた。完全に想定外だったのだろう。皐月は開いた口が塞がらず、呆気に取られていた。


「もう、どうしようもないくらい好きだ。ごめん、本当はこうなりたくなったよ。皐月は僕を安全ピンとして、付き合ってくれたのに。僕も他の奴等と一緒だ。好意を持ってしまった」


 そう。皐月は男避けとして、全く興味を示さない僕を利用した。でも、安全ピンである僕まで好意を寄せてしまう。皐月にとってみれば、思いもしない誤算だったはずだ。


 実は告白しても断られる確率の方が遥かに高いのは知っていた。これは完全な計画違反(まあ、計画した覚えもないけど)になる。


 でも、このまま、偽った感情で付き合い続けることは僕自身しんどいし、皐月のことも裏切っていることになる。


 だから、終わらせるなら、早く終わらせたかった。結局、自分本位なんだなと反省する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ